例えば「(特定施設の巡回や立哨を担当する)施設警備員 」なる汎用人型移動端末。ネットを流れている情報を見る限り「AIによる自動化が最も進んでいるジャンル 」に見えないでもないのですが…
確かに(AI構築を含む)自動化技術は「既にマニュアル化が完了しているルーチンワーク の効率的運用の追求 」には向いているのです。そして、そういう分野がFactory Automationや倉庫管理といったブルーカラー 分野だけでなく顧客対応や症状診断といったホワイトカラー分野にまで及びつつあるのもまた事実。
ところが施設なるもの、状況に応じて利用者や利用状況が刻々と変わり、新技術導入などによって設備内容そのものもどんどん更新されていくのが当たり前。従って「施設警備員 」なる汎用人型移動端末もまた、実はルーチンワーク をこなしながら同時に上掲の様な変化に伴う「マニュアル的知識の刷新 」、すなわち問題発生を素早く察知したり予測したりして報告を上げ、現場対応(すなわちアルゴリズム 運用アルゴリズム の微調整)によって問題発生を未然に防ぐ役割を担っていたりする訳です。
常駐警備 - Wikipedia
そして最大の問題点。それは現段階の自動化技術には(そうした事案が現場では頻繁に発生するにも関わらず)「(設計時に組み込まれたアルゴリズム では完全想定外だった問題の発生を検知したり予測したりする)問題検知 」機能や「(設計時組み込まれたアルゴリズム の範囲を超えて運用アルゴリズム を適切な形に調整する)現場対応 」機能などが備わってはいないというあたり。*こればっかりは「機械学習 アルゴリズム の進歩によって解決可能」という問題ではない。とにかく「問題検知能力」によって「想定外の事態」を「想定内の事態」へと変貌させ「現場対応能力」によって問題発生の可能性を最小限に抑え込む機能は、現段階においては人間にしか備わっていないと考えるしかないのである 。
①警備会社のいう「自動化 」は、よくよく精読して見ると「(従来より推進してきた「機械警備」の延長線上における)既にマニュアル化が完了しているルーチンワーク の効率的運用の追求 」の範囲を一歩も出てない事が多い。その結果、警備ロボットなどの導入によって「マニュアル通り立哨や巡回をこなすだけの二級品 」が大幅リストラされる事態なら十分有り得るだろう。しかしその時はその時でかえって「問題検知や現場対応の能力を備えた一級品 」への依存度はかえって高まるであろう。*まぁこの展開自体は他のホワイトカラー産業においても大差ない。要するにこれからはあらゆる次元で「問題検知」と「現場対応」の能力こそ人類が「AI技術導入によるあらゆる方面における自動化が加速していく時代」を生き延びる為の必須技能になってくるという話。
②おそらく「将来警備員は不要になる 」なるビジョンをバラ撒いてるジャーナリストやコンサルティング 会社には、こういう全体像が全く見えてない。全くもって「問題検知 」能力も「現場対応 」能力も絶望的なまでに低過ぎる。要するにこうした無知の集積こそが「2045年 におけるシンギュラリティ(Technological Singularity=技術的特異点 )問題 」の本質なのかもしれない。
③その一方で「例外処理や暗黙知 の多さがAI技術導入を阻む 」なる予測には20世紀末の「SEクライシス問題 」と同じ匂いを感じずにはいられない。当時は「日本の経理事務は国際的に特殊であり、会社によって全く異なるので膨大なカスタマイズを必要とする 」といわれていたが、最終的には費用対効果の関係から「既製品に会社の側が合わせる現場対応 」が主流となり「(カスタマイズ要員としての)SEの圧倒的供給不足 」なんて展開は発生しなかった。要するに「問題検知 」と「現場対応 」が不可欠の激動の現場以外における「ルーチンワーク の自動化 」はこれからますます加速していく。おそらくその流れ自体が「伝統への配慮 」といった要因によって阻まれる展開自体は(長期的観点からすれば)ありえない。*とどのつまり「現場対応技術」の方はデータ蓄積によってまだまだ「ルーチンワーク 自動化」の余地が存在するという事でもある。
④一方、ここでいう「ルーチンワーク 」の定義そのものも急激な変化を遂げてきた。例えば音楽業界やデザイン業界とったクリエイティビティを要求される分野は「ルーチンワーク の自動化 」から完全に無縁かというとそうでもない。なにしろAI技術は「自動作曲 」といった分野でも大きな発展をみせていたりもする。
この流れはある意味「世界で初めて王侯貴族や聖職者といった権力者のパトロネージュから離れ、家庭教師といったサイドワークにも手を染めず譜面販売だけで暮らした音楽家 」ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven 、1770年〜1827年 )の登場から決定付けられていたとも考えられる。
そもそもこうした流れには芸術家を独立に導いたルネサンス 期ヴェネツィア の三大発明、すなわち①(著作者に独自の収入源をもたらす)携帯可能な小型出版物(シリーズ化してサイズの揃った文庫として提供)②(観光の目玉としての)豪勢なオペラ③(観光客に土産物として販売される)キャンバス絵画 などの延長線上に起こったという側面も存在した。とどのつまりこの時代より「芸術の商品化(王侯貴族や聖職者といった特定権力者のパトロネージュからの脱却) 」および、それによる「純粋に商品として見た観点からの目録編纂(データベース化)とその内容の計量的分析の蓄積 」が始まり、これが「Big Data(フォーマットが相応の形で整えられたデータの膨大な蓄積) 」の実存を前提条件とする「AI技術導入などによるルーチンワーク の自動化 」を呼び込む展開を産んだという次第。
ふと思った事。ここでいう「現場におけるアルゴリズム 指定(マニュアル化)とアルゴリズム 運用アルゴリズム による微調整(現場対応) 」なる概念、例えば音楽演奏の世界では「採譜 」と「(インプロビゼーション 込みの)アレンジ 」の関係と相似形にあるのではないでしょうか?
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さらに以下は動画だから解る「一発録り 」の凄み。こんなん有線で流れて着たら「君の名は」鑑賞者はただひたすら泣き崩れるしかないやん。
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そういえば「産業革命 進展による大量生産・大量消費体制の導入が消費の主体を王侯貴族や聖職者といったインテリ層からブルジョワ 階層や庶民階層に強制推移させた時代 」に最初に適応した音楽家は、その「超絶技巧 」でブルジョワ 階層婦人達に「世界史上初のファンクラブ 」を形成させ、キャラクターグッズを売りまくったフランツ・リスト だったのです。*「世界史上初のファンクラブ 」…同時期の日本には既に身分階層ごとに形成される「連」なる贔屓団体が存在し、その構成員は武家 や僧侶だけに限らなかったが「王侯貴族や聖職者がそうしたスノビズム に呆れついていかなくなった 」という辺りがフランツ・リスト ・ファンクラブの画期だったとも。一方日本はこの問題を「白足袋族VS黒足袋族」といった形で近代化以降も引き摺る展開を迎える。
そもそも私達は実は、何が「AI技術導入によるルーチンワーク の自動化 」の対象となり、何がそうならないかちゃんと確実に予測出来てる訳ではないのです。例えばデザイン業界の場合、これまでの歴史上は音楽業界ほど「Big Data化」が進んでこなかった訳ですが、果たしてこれからの時代どうなってくるやら…