歴史というのは、誰でも疑問なく全体像がスラスラと説明可能な箇所にあまり面白味はない。むしろ、誰もがそれに言及すると言い淀むので黙殺したがる様な厄介な例外にこそ、全体像を塗り替えかねない危険な起爆力が眠っていたりする。
羊毛をめぐる冒険 - 諸概念の迷宮(Things got frantic)
都市から国家に(欧州の経済的中心の歴史的推移) - 諸概念の迷宮(Things got frantic)
「北伊、中伊とは何であったのか?」 - 諸概念の迷宮(Things got frantic)
例えば大航海時代が到来し、欧州経済の中心地が地中海沿岸から大西洋沿岸に推移して以降の(ミラノを中心とする)イタリア北部や(フィレンツェを中心とする)イタリア中部。どうなってしまったかについて「手工業者庇護を優先するあまり関税障壁を強め、それで国際競争力を薄なって没落した」とする定説と、ゾンバルトらが主張した「贅沢品輸出元としてのイタリアのブランド性は時代を通じて損なわれなかった(時代を超越して一定以上の輸出規模が保たれてきた)」とする立場の2通りある。前者の制約のせいでイタリア諸都市は10万が人口規模の上限となった(ちなみに1800年前後の人口規模は江戸100万人超、北京90万人、ロンドン86万人、パリ 54 万人、ウィーン23万人超、アムステルダム20万人前後)。それでは後者は後世にどんな足跡を残してたのだろうか。
こうして世界の都市人口は急増した? - 諸概念の迷宮(Things got frantic)
イタリアのエコノミスト2人が最近行った調査で、驚くべき事実が判明した。現在のフィレンツェで最富裕層に属する家は、600年近く前も同都市の最富裕層だったのだ。
イタリア銀行(中銀)のエコノミスト、グリエルモ・バローネ、サウロ・モチェッティ両氏は、フィレンツェの1427年の記録と2011年の納税データを比較した。イタリアの名字は地域性が高く、見分けやすいことから、名字に基づいて同じ家の両年の状況を比較することができたという。それらの家では、先祖の職業、収入、資産が、同じ姓を持つ子孫の現在の職業、収入、資産を予想するのに役立つことがわかった。
エコノミストの提言を集めたウェブサイト「VoxEU」で両氏は「現在の納税額がトップクラスの家は、6世紀前に既に社会経済のはしごの最上段にあったことがわかった」と書いている。
調査ができたのは、ある財政危機のおかげだ。1427年、ミラノと戦争中だったフィレンツェ共和国は戦費で破産しかけていたため、執政官が市民約1万人を対象に税調査を実施。家長の姓名、職業、資産を調べたのだ。
そうした名字のうち約900種類はフィレンツェに現存しており、それらの名字を持つ納税者は約5万2000人いる。ある名字を持つフィレンツェ市民が全て1427年当時の同姓の人々の子孫だとは限らないが、その公算は大きい。それらの家の600年間の変遷を知るために、両氏は2011年のフィレンツェの納税データと照らし合わせた(名字を公表しないことがデータ閲覧の条件だった)。
調査では、階層が驚くほど変わっていないことがわかった。現在最も豊かな層に属するのは、1427年に靴職人の組合に加盟していた家で、当時の収入は上位3%に入っていた。絹織物業者組合のメンバーや弁護士の家はともに当時の収入が上位7%に入っており、末裔(まつえい)は現在も裕福だ。
別の調査によると、日本では士族の特権が廃止(廃刀令)されて140年たった今でも、侍の子孫はエリート層にとどまっている。カリフォルニア大学デービス校の経済学者グレゴリー・クラーク氏は著書で、資産と階層が数世紀にわたって受け継がれうることを示している。
それでも、フィレンツェの富裕層が階層を維持してきた期間の長さは注目に値する。1427年といえば、ルネサンスの巨匠レオナルド・ダビンチもミケランジェロも生まれていなかった時代だ。
最富裕層は他のどの層に比べても階層移動が幾分少ないことが調査結果からうかがえると両氏は話す。これは「上流層の末裔が経済のはしごから落ちることを防ぐガラスの床が存在する」証拠だとみられるという。
両氏によると、調査は収入上位1%を占める超エリートに特化したわけではない。1427年に収入分布の上位33%に入っていた人の子孫は現在も裕福なケースが多い。これは、城や領地を数世紀にわたり引き継いでいたメディチ家の当主らよりもずっと大きな集団だ。このことから、繁盛していた皮革業者から25代ほど後の現在の末裔は、かなり暮らしぶりがいいと予想され、それは先祖たちの靴やベルト、ましてや宮殿が受け継がれているためではないとみられる。調査の結果はむしろ富裕層、中流層、貧困層など全ての層の階層移動がさまざまな時代を通じて少ないことを示唆している。
イタリアに次いで真っ先に思い浮かぶのがベルギー。フランス絶対王政時代における重要な宮廷向け贅沢品の供給地。
贅沢品の禁輸で北朝鮮にダメージを与えられるスイスも色々ありそう。
まさしく歴史観のリセット・スイッチ…
- オランダにおけるブルジョワ都市貴族連合、英国におけるジェントルマン資本主義、フランスにおける二百家支配…とどのつまり階層の安定こそが国の安定。ただし新興富裕層を確実に取り込み続けねば階層障壁が表面化して革命を引き起こす。これまで華麗に逃げ切ってきたのが英国のジェントルマン資本主義。逃げ切れなかった典型例がフランス絶対王政。そして「今そこにある危機」がフランスの二百家支配?
- しかしながら誤爆を恐れず百万人〜一千万人規模の「粛清」を敢行し、最低でも半世紀から一世紀にかけて続く経済的不調の余波に苦しめられる覚悟さえ出来ていたら(対価として自らは全滅を余儀なくされるケースも少なくない)こうした宿命的歴史観に逆らってみるのもこれまた一興なのか?
福本伸行「賭博破壊録カイジ」の名言「公平である必要はないが、公平感はあたえなければならない」
ここから「実際の歴史上で繰り返されてきた階級闘争の真実」とでも呼ぶべき新たな歴史観が導出される事になる。
- アッシリア帝国やバビロニア帝国の反体制派諸族に対する対処…ヘブライ人が族滅を免れる為に「神殿宗教」段階から「啓典の民」に進化した。
神殿宗教の興亡と啓典の民の誕生 - 諸概念の迷宮(Things got frantic) - 帝政ローマの宗教不寛容政策…「啓典の民」が少数精鋭派たるヘブライ語話者(ユダヤ教徒)と圧倒的多数派たるギリシャ語話者(キリスト教徒)に二分。
神殿宗教の興亡と啓典の民の誕生 - 諸概念の迷宮(Things got frantic) - 東ローマ帝国の宗教不寛容政策…「啓典の民」から新たにイスラム教が分離。さらには東方正教会とローマ教皇庁の分裂を招いた。
帝政ローマ末期のイデオロギーの亡霊? - 諸概念の迷宮(Things got frantic) - ベルベル人王朝の領内キリスト教徒やユダヤ教徒に対する改宗強要…経済的はサハラ交易(西アフリカ諸国との岩塩と砂金の交換)に立脚し、マグリブ(チュニジア以西のアフリカ北岸)とアンダルス(イベリア半島内におけるイスラム勢力圏)で猛威を振るう。
*次第にその無為を悟り、宗教寛容策に転換し貿易立国により黄金期を迎える。大航海時代到来によるサハラ公益崩壊の巻き添えとなって滅ぶ。
アフリカ北岸最後の黄金期(14世紀) - 諸概念の迷宮(Things got frantic) - スペイン世界帝国の宗教不寛容政策…レコンキスタ完了と神聖ローマ帝国皇統ハプスブルグ家の進出によって顕現。マラーノ(改宗ユダヤ人)とモスリコ(改宗ムスリム)の国外大量追放/脱出を引き起こした。
「(自然法に基づく)普遍的支配」の世界 - 諸概念の迷宮(Things got frantic) - フランスからのユグノー追放…その強烈な重商主義政策推進によって知られた財務総監コルベールが亡くなった17世紀末に敢行された。「フランス絶対王政の死亡証明書」その1。
フランスのプロテスタンティズムと資本主義の精神 - 諸概念の迷宮(Things got frantic)
*ちなみに「フランス絶対王政の死亡証明書その2」はフランス重農主義者が主導したイーデン条約(1786年)による英仏間の関税障壁撤廃とされる。
フランス革命は重農主義派が起こした? - 諸概念の迷宮(Things got frantic) - フランス革命期にジャコバン派独裁政権が敢行したポル・ポト派的ホロコースト…絶対王政時代に樹立した「商業的発展は貧富格差を広げる絶対悪」なる信念の表明手段として敢行。フランス交易の要たるボルドーでの在地有力者粛清はギロチンで間に合った。フランス工業の要たるリヨンの完全破壊に際しては流石のギロチンも殺戮力不足を露呈。新兵器「霞弾」が代わって大活躍している。これは大砲から発射する散弾の一種で、砲列を敷いて一斉射撃すれば一瞬にして人間を数百人単位で原型も留めない肉塊に変貌させる事が可能だったという。「フランス絶対王政の死亡証明書」その3。
*フランスはこのとき受けた経済的ダメージからの回復に半世紀以上を要したが、その過程で「どの国にも産業革命を導入可能とするノウハウ」を獲得した。
シュテファン・ツワイク「ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像」 - ロシア革命時代のホロコースト…「貧富格差を広げる絶対悪」としてクラーク(富農)を粛清し尽くした結果、穀物輸出国から穀物輸入国に転落。
*現在なおロシアはその後遺症に苦しみ続けているとも。ちなみにその後ジンバブエが模倣して史上最高のハイパーインフレを引き起こした。 - ナチスドイツのユダヤ人に対するホロコースト…銃殺では殺戮力が不足し、青酸ガスまで駆使したとされる。ちなみにゲッベルスは「我々の世代でユダヤ人の国際経済に対する影響力を可能な限り削いでおく事が未来への贈り物」と断言。
「(自然法に基づく)普遍的支配」の世界 - 諸概念の迷宮(Things got frantic) - 大躍進時代/文化革命時代に中国共産党が遂行したホロコースト/後続を狙う北朝鮮の奮闘…毛沢東が膨大な聞き取り調査の結果「地主の家系は案外時代を超越して生き延びていく」事実を発見した結果、紅衛兵の間では「地主遺伝子を中国人から族滅せよ」が合言葉に。まさしくゲッベルスの「我々の世代におけるホロコーストが未来への贈り物となる」思想を忠実に継承した形だが、やがて我に返った中国共産党は彼らの方を粛清する道を選んだ(田舎への下放)。すると今度は北朝鮮が忠実なる後継者に変貌。それで今日なお親日派遺伝子や親韓派遺伝子の保持者を三族(当事者の家族に加えて父母や祖父母の家族)まとめて見せしめとして機関砲で処刑し続けている。
韓国ドラマを見ただけ?北朝鮮の処刑理由が怖すぎ - NAVER まとめ
ちょっと待った…自分で悪ノリしといてアレだけど、何この微妙に「伝統の継承」すら感じさせる歴史観?