オイラが大麻は合法化すべきだと書くとなぜかアニメアイコンの方々から批判されるから、これだけは言っておく。うまくキメると2次元の映像が立体に見えるんだが、アニメの美少女も例外ではない。マジで目の前に生きて存在して話しかけてくる感じになるぞ。
— 町山智浩・告知用 (@TomoMachi) 2016年11月16日
町山智浩氏が「お前ら知らんだろうが、うまく大麻をキメると2次元が立体に見えて、アニメの美少女が生きて存在して自分に話しかけてくるように見えるんだぞ」という大麻解禁論に対して、アニメクラスタが一斉に「すでに今そう見えてるけど?」って返してるの、ツイッター史に残るくらい双方面白いな。 https://t.co/YGy3FWdDUp
— cdb (@C4Dbeginner) 2016年11月17日
町山智浩さんが大麻を上手くキメれば2次元の映像が立体に見えるといい、アニメアイコンの人たちが「自力で見えないのは甘え」というの、ケミカル至上主義のジャック・ハンマーVS脳内麻薬を制御できる刃牙の兄弟対決を見てる感動ある
— 多根清史 (@bigburn) 2016年11月16日
うん、確かに上手くいけば「アニメの美少女が生きて存在して自分に話しかけてくるように見える」可能性があるのは知ってる。問題はBad Tripに落ち込んだ時なんだよね。で、Twitterに生息する日本のアニメ・ファンはこういう話題に相応の対応能力を備えてる…一体なぜ?
まず歴史上ずっと堂々巡りしてきた「先験知」と「実験知」の区別について。ここではとりあえず前者を「知識としてしか知らない事」という意味に限定します。
- 正直言って、私自身には麻薬についての「実験知」など原則として存在しない。あえて探すなら昔、肺炎で入院して「薬漬け」にされた数週間の経験くらい。この時どんな薬を投与されたか知る由もないが、瀕死の状態から「世界の静謐さに包まれる」独特の体験をした。これは私自身が「先験知」としてしか知らない「モルヒネ(morphine)の鎮静効果」と良く似ている。
- それなら私自身は如何なる麻薬知識を「先験知」として蓄えてきたのか。思い返すと実は案外「国際SNS上の関心空間でジャンキー系オルタナ右翼が互いにひけらかし合いながら洗練させてきた実験知の伝聞」に負う部分が大きい。しかもそこで得られた知識は村上龍や吉田秋生といった1970年にデビューしたヒッピー体験もある(あるいはヒッピーが間近にいた)作家達の記す「麻薬体験」と合致する部分が多い。
ここから導き出されるのは「大麻(マリファナ)は手軽に(多くの国で合法的に)入手可能だが、それがもたらしてくれる麻薬体験は、あくまでSecond Bestに過ぎない」なる国際的コンセンサス。そもそも、これが分かってない限り国際SNS上の関心空間でジャンキー系の「元」4chan民(オルタナ右翼?)と相互Follow関係になるなんて不可能だったりするのです。
*所詮は匿名の世界だから「元」か「今でも現役」か知る術などない。
吉田秋生「河より長くゆるやかに(1983年〜1985年)」「大麻畑でつかまえて」より
能代「肺に深く吸い込んで、しばらく溜め込む様にして、それからおもむろに吐き出す…気をつけろよ。こういうもんは、やっぱりナーバスな日本人には向ねぇんだよ。意識の拡大剤なんだからな。ハイな奴はいいけど、落ち込んでる奴はよけいに落ち込んじゃうんだからな…まぁお前らの場合、そういう心配はいらねぇか」
仲間達「わかった(悲しいほど能天気)…あれ、お前はやらねぇの?」
能代「もしもの事があると困るからな、一人はまともなのがついてないと」
*彼らが開催してるのは所謂「マルチメディア・パーティ(Multimedia Party)」の真似事。本物は「サイケデリックなスライドショーを背景とするロックコンサートの会場で、ドラッグをキメながらセックスする」という豪快なものだが、所詮は日本なので「男子高校生が集まってポルノビデオを鑑賞しながら(たまたま野生してるのを発見した)大麻をキメる」みたいな感じに規模縮小している。
いきなりジャンキー連中に「素人はカタギの世界に帰れ」とか追い返されたくなければ、迂闊に「ドラッグ最高!!」とか褒め称えない事。「ドラッグに興味はあるんだが、Bad Tripに陥るのは怖いんだ。Good Tripだけ経験するにはどうしたらいいの、先輩方?」みたいな謙虚な顕著かつ純朴そうなアプローチを選べない様な人間は、そもそも仲間に入れてもらえないんですね。
- 「意識拡張剤としての大麻(マリファナ)」はあくまで入門編。さらに先には「(弛緩系の)ヘロイン(heroin)の世界」や「(覚醒系の)コカインの世界」が広がっている。これまで無邪気に「最高!!」とか誉め讃える人間も、やっぱり「犯罪者は犯罪者の世界に帰れ」とか追い返されてしまうのだが「実は幾度か試した事ならある。自分には合わなかった」みたいな告白なら大歓迎で、そういう「先験知」自体は貴重な証言として、国際SNS上の関心空間で共有されている。
- そして「弛緩系麻薬体験」に関して言うと、実は「日常系ほのぼの漫画・アニメの鑑賞体験」がその良質の部分を掬い上げた(すなわちBad Tripに陥る可能性の除去に成功した)The Bestと認識されていたりする。実際、世界各国の軍部もその効能に注目し、中東の最前線などで凄惨な戦闘の生存者のPSTD(Post Traumatic Stress Disorder、心的外傷後ストレス障害)発症抑制などに活用されてるらしい(本当かネタか知らないが、実際「自分は今そういう治療の真っ最中」なる投稿を幾つも見掛けた。少なくとも実際の野戦病院から投稿されてる事実は動かない)。実際、そのままだと壮絶過ぎる経験と負傷のせいでモルヒネ中毒なんかに陥りかねない患者に明るいエンターテイメント作品を鑑賞させ「自分はこういう平和な世界を守る為に戦ってるのだ」なるモチベーション回復まで狙う療法なら歴史的に処方されてきたから、あながち嘘とも言い切れない。
*ここで「優秀なdesigner drug」として名前が挙がるのは「らきすた」「ゆるゆり」「きんもざ」「ごちうさ」辺り。逆に「Bad Tripへ誘導する不良品」としてかえって注目を集めたのが「琴浦さん」「がっこうぐらし!」辺り。 - 一方「覚醒系麻薬体験」は(国内における商業的利用価値の少なさもあって)比較的日本の苦手分野。というか「スカーフェイス(Scarface、1983年)」や「ファイト・クラブ(Fight Club、1999年)」や「スキャナー・ダークリー(A Scanner Darkly、2006年)」を鑑賞した事がある人なら「あ、これ日本じゃ絶対禁忌(Absolute taboo)とされてる奴だ」と納得がいく筈。なにしろヤクザ映画ですら「自分がシャブ中になっちゃう様な愚かな売人は、例外なく同情の余地皆無の悲惨な最後を遂げる」ルールが徹底している。アメリカですら非合法の世界で、匿名の世界ですらこれについて「実験知の持ち主」として名乗り出るのは勇気がいる。
*映画業界の内情に詳しくないのであくまで憶測だが、実はアイアンマンにしてシャーロック・ホームズのRobert Downey, Jr.や、ウィンター・ソルジャーことSebastian Stanの国際的人気と無関係ではないという説も。要するに鍵は「深淵からの生還者」なるイメージ?
*自称「オルタナ右翼」も結構「ファイト・クラブ」好きだったりする。
*この層は「セサミ・ストリート」や「ゆゆ式」における「早回しギャグの高揚感」を好む。実際、登場人物に「白い粉の筋を鼻から吸わせる」コラージュも多数回覧されているが、割とすぐ消されちゃうので引用は困難。
*あと、おかゆまさき「撲殺天使ドクロちゃん(2003年〜2007年、アニメ化2005年、2007年)」や榊一郎「棺姫のチャイカ(2010年〜2015年、アニメ化2014年)の様な残酷系。
*この層すら寄り付かない名島啓二「波打際のむろみさん(2009年〜2014年、アニメ化2013年)」とは一体何だったのか…ジャンキーへの敬意にかけてた?
- あくまで憶測だが、国際SNS上の関心空間に2012年以降「Meme至上主義者」とか「HFD(High Frequency Darwinism)信者」が急増したのは後者の影響かもしれない。
しかし実は「本当に日本にとって他人事か?」という話も。
伊佐坂先生の息子「ほうら憂鬱が吹っ飛んだぞ」
伊佐坂先生「おかぁさんや、誰かヒロポンの蓋を開けて飲んだ者がいるぞ(笑い声が聞こえてくる)」
伊佐坂先生の妻「まぁ」「ヒロポン」というストーリーなのだが、実は「サザエさん(1946年~1974年)」本編ではなく、お隣の伊佐坂先生の一家を主人公とした「似たもの一家(週刊朝日連載:1949年)」なる漫画。この漫画における隣家は磯野家ではなくトンダ家なのだが、そこの若奥さんと子供たちはサザエさんのキャラクターをそのまま使い回している。で、ここで肝心なのは「伊佐坂先生は小説家」というという設定。
ヒロポンというのは所謂覚醒剤の商品名で戦時中は流通していたんですね。日本が国策的に利用していたそうです。これは国民をシャブ中にしようとしていたわけではなく、疲労回復とか頭脳が明晰になるやらで軍事工場の工員の効率化の為に配給していたとのことです。でみんなおかしくなっちゃわないかというと、錠剤で適量呑んでいれば中毒症状がでるのは時間がかかり、副作用のことはあまり皆心配していなかったと。
*メタンフェタミンは1893年(明治26年)日本の薬学者・長井長義によりエフェドリンから合成されて生まれ,1919年(大正8年)、緒方章がその結晶化に成功した。特攻隊がシャブ打たされてから突っ込んで言ったなんて話も聞きますけれど、これは特攻隊だけでなく、皆、覚醒剤を打って、もしくは錠剤で摂取していたんです。小学校の時、軍人の写真を見ていると目が行っちゃってる人が多く怖かったのですが無関係じゃなさそうです。また、軍が覚醒剤を利用したのは日本だけでなく、アメリカもドイツも行っていたようです。
*第二次世界大戦当時は連合国軍側と枢軸国軍側の双方で、航空機や潜水艦の搭乗員を中心に、士気向上や疲労回復の目的で用いられた。で、普通に薬局で買えるようになると、やはり大量に摂取する人が出てくるんですね。注射で摂取する方が中毒性は高く、戦後、元軍人が闇市に大量に流すなどして一気に中毒者が増えたようです。何百万人が中毒になり、戦後まもなく法律で取り締まるようになり表の舞台から覚せい剤は姿を消したわけです。しかし、中毒患者は闇に流通する覚醒剤を死に物狂いで探し求めていたわけで、値段も高く先の70年代映画みたいな話になったようです。
*日本における「覚醒剤取締法(Awakening Drug Control Law)」の制定は昭和26年(1951年)6月30日。これは覚醒剤類を国際的に規制した国際条約である1971年の向精神薬に関する条約に先行する快挙だった。無頼派作家の織田作之助はヒロポンを打ち、ビタミンBを打ち、最後に求心を飲んでいたと同じく無頼派作家の坂口安吾はエッセイの中で紹介している。ビタミンBと求心を飲むと中毒にならないとのこと。面白かったのは坂口安吾は仁丹よりも求心の方がべら棒に高いので、人々はこちらの方が効果が高いと信じていると、人々の心理を読んでいる。
根深いなぁと思うのが、ここに見られる「疲労を忘れて働き続ける人々」の姿が平安時代の朝廷で延々と政治闘争を続けた公卿、すなわち「枕草子の世界」と重なるという事。「すさまじきこと(興醒めな事)を自分の人生から一切排除する」とはそういう事で、それが凄まじい事になるのは別に日本に限った話じゃありません。
実は「コカイン所持で角川春樹逮捕(1993年8月29日)」がしばしば「日本史上のパラダイムシフト」にカウントされるのも「薬物に関する日本人全般の態度変遷」を象徴するからという話があるからだったりして。
*この話は「バブル崩壊を現実として受容せずイケイケを通そうとした人達」という話とも絡んでくる。
そして、歴史のこの時点ではもうASKAは「手遅れ」だったとも。とどのつまりつまり宮崎駿監督作品「On Your Mark(1995年)」に表現されていたのは…
それはそれとして、私だけでなく、Tumblr上で2011年にあった対4chan戦争後に大量の4chan民をFollowerとして獲得したアカウントなら皆、国籍問わず「このニワカ改宗者どもをどうやって引き止めるか」について頭を捻った挙句の果てに、概ね多かれ少なかれこうした感じの「実験知」に到達した筈なのですね。逆をいえば、そうした「相対化」がきちんと出来てれば「あたしらにとっちゃアニメ漫画GameがDrugなのさ」ときっぱり断言する事で十分コミュニケーションが成立。かくして冒頭の引用に戻る?
*「分かり合うとは、全てを共有するという意味ではない」。これ今週号の「東京グール」の台詞ですが、流石は国際SNS上の関心空間に頻繁に出入りしている作家だと感心しました。いままさにアメリカ人が求めてるスローガンだよ、それ!!
それでは時計の針を一旦2011年まで戻します。
あくまで憶測ですが「Tumblr対4chan戦争(2011年)」後のアメリカでは匿名掲示板に引き篭もってる愚が認識される様になり、4chan民があちこちに拡散していく流れがあったのかもしれません。
- Tumblrに流入したグループは、そこに生息する多種多様なグループと接するうちに逞しく育ち、2016年大統領選に際しても「ああ俺はトランプに投票したさ。お前らがヒラリーにおっかなびっくり投票したみたいにな。その結果どうなるか分からないんで、一緒になって固唾を飲んで見守ってるところさ」みたいな(ヒラリー候補を熱心に応援しなかった中道左派の手の内を読んだ上での)大見得(Position Talk)が切れる中道右派に成長した。
- 8chanやRedditやTwitterに流出したグループは、どうやら集まったメンバーが悪かったらしく、自分達の差別的態度を相対化させるどころか絶対化する傾向が見て取れる。「米国旗を頭巾として纏ったムスリム女性の投稿について、とある若い白人女性が「米国旗が汚れる」とTweatした件」については、上掲のTumblr中道右派すら「アメリカ割る気かぁ、この馬鹿女?」と毒吐いている。
そもそも匿名の世界では「アカウントの複数持ち」なんてザラなので統計的把握は不可能。しかしそれはそれとして、トランプ大統領勝利以降顕著となりつつある「(対立陣営と対話する意図を全く持ってない)極左と極右を切り捨てて中道派がまとまろうとする」トレンドの最中にあって「オルタナ右翼(Alt-Right)」を輩出した母体がこの辺りである事実もまた動きません。
(荻上チキ)実際、ヘイトの空気みたいなものが拡大しているようなところも町山さん、感じたりはしているんでしょうかね?
(町山智浩)まあ、だからまずオルト右翼といわれている人たちは実際の行動をする人たちじゃないですから。
(荻上チキ)行動はしないと。
(町山智浩)ヘイト行動とかで落書きしたりとか、黒人を殴ったりするような行為をする人たちではないです。オルト右翼っていう人たちは。基本的にはもともと4chっていう2ちゃんねるのような掲示板サイトで差別的なジョークを言ってもりあがっていたりしていた人たちが、今回トランプが去年の7月に予備選に出てきた時に、一斉に旧・共和党の人たちを攻撃し始めたのが最初なんですよ。
(荻上チキ)はいはい。
(町山智浩)具体的には、7月29日のワシントンポスト紙が「こいつらはオルト右翼という、まったくかつてない新しい反共和党勢力だ」ということで記事にして、そこから一気に出てきたんです。
(荻上チキ)うん、なるほど。
(町山智浩)で、どういったことか?っていうと、具体的にはジェブ・ブッシュさんっていうブッシュさんの弟がいるんですけども。彼は予備選に出ていたんですが、彼の奥さんはメキシコ人なんですね。だから、「こいつはメキシコ人にアメリカ人をレイプさせようとしているんだ」というようなことを書いたコラージュ(画像)を作りまして、そのコラージュをネット上で、Twitterでバラまくんですよ。ものすごい勢いで拡散させるんです。
(荻上チキ)はい。
(町山智浩)それを共和党を支持している人やブッシュを支持している人たちにぶつけていくんですよ。ツイートで、ガンガン。あと、マイク・ハッカビーという議員がいまして。この人はキリスト教保守の人なんですね。自分自身も牧師で。で、その人に対して「Cuckabee」っていうんですけど。「そんなことをやっているうちに白人社会は有色人種に寝取られてしまうんだ」って言って、マイク・ハッカビーを徹底的にバカにするんですね。特に、オルト右翼(Alt Right)の人たちがいままでの保守と決定的に違うのは、反宗教なんですよ。
(荻上チキ)反宗教?
(町山智浩)はい。キリスト教を信じて一生懸命やっている保守的なアメリカ人の人たちを頭からバカにしています。はっきりと、「進化論を信じないで聖書とかを拝んでいるバカ」っていう言葉まで出てきています。
(荻上チキ)へー!
(町山智浩)あと、ゲイの人たちに対して反対しているわけですね。保守的な人たちは、宗教的立場とか伝統的な立場から。それも、バカにしています。
(荻上チキ)おおっ。
(町山智浩)だから、ゲイとかもOKです。オルト右翼の人たちは。ただ、彼らには集団としての組織化は全くされていないです。ネット上に存在するだけです。
(荻上チキ)なるほど。じゃあ、具体的な党とか、なにか組織が現実にあって、そこが集合場所だ、みたいなことではないわけですね?
(町山智浩)そんなもんは存在しないです。だから(オルタナ右翼の大物の)リチャード・スペンサーに会った時も、彼は1人きりでした。
(荻上チキ)リチャード・スペンサーというのはオルタナ右翼の名付け親?
(町山智浩)オルト右翼の名付け親で提唱者なんですけども、彼自身が「ここにいるよ」ってネットで拡散させているにもかかわらず、クリーブランドで共和党大会やった時に近くの広場にいたんですね。彼は1人きりでした。
(荻上チキ)1人きり?
(町山智浩)そういったものなんですよ。実際に行動として集まって動かないんですよ。彼らは。ネット上にしか存在しないんですよ。で、僕は(大統領選挙当日に)ニューヨークでプラウドボーイズっていう人たちに会って。その人たちはバーで集まっていたんですけど、普段はでも、ネットでテレビをやっているんですね。彼らは。
(荻上チキ)はいはい。
(町山智浩)ネットテレビやネットラジオでそういう差別的なトークショーとかジョークをやって拡散している人たちなんですよ。だから滅多にオフで集まらない人たちなんですよ。で、彼らは住んでいるところもバラバラなんで集まれないっていうところもあるんですよね。全米に拡散しているんですよ。
(荻上チキ)うーん。なるほど。このリチャード・スペンサーさんはどんな方でしたか? 実際にお会いしてみて。
(町山智浩)ものすごくキチッとした服装で、髪の毛も整えていて。見た目は20代に見える爽やかな感じの人でした。
(荻上チキ)ほう、なるほど。
(町山智浩)で、オルト右翼はいわゆるみんなが考えているような右翼的なネオナチであるとか、スキンヘッドのような暴力的なところは全くないです。彼らは。年齢もすごく若いです。フレンドリーでした。僕、会って一緒にいろんなものを楽しみましたが。それで、彼らは日本が大好きです。
(南部広美)日本が大好き?
(町山智浩)日本、超大好きですよ。もちろんアニメが好きっていうのもあるんですけども。出処が4chっていうアニメの情報とか絵柄を交換するサイトから生まれてきた運動なので。ただ、彼らはいま、日本という国が大好きなんですよ。
(荻上チキ)ほう。それはどうして?
(町山智浩)保守的で排他的だから。
(荻上・南部)(笑)
(南部広美)ええっ?
(荻上チキ)全然うれしくないな(笑)。
(町山智浩)だから、リチャード・スペンサーなんかこの間、日本に行っていたんですよ。で、僕、Twitterでやり取りしていたんですけども。その時に、日本で原宿の前でビデオを撮って、それを拡散していたりしてたんですね。彼ね。その中でも、「日本っていうのは移民とかがあまりいなくて、非常に排他的で素晴らしい!」って言ってますよ。原宿の駅前で、彼は。
(荻上チキ)ああー。なんか、(フランスの極右政党 国民戦線党首の)ルペンさんとかもね、たしか「日本が模倣すべき対象だ」みたいなことを言っていますけども。オルタナ右翼の方もそうなんですね。
(町山智浩)そうなんですよ。最初はアニメっていうきっかけがあったんでしょうけど、いまは日本的な、たとえば三島由紀夫的なものとか、そういったものを非常に尊敬していますよ。
(荻上チキ)へー。うーん……
(町山智浩)ただ、彼らは半分ジョークなんです。これも重要なんですが、彼らは半分ジョークです。
(町山智浩)ものすごく真剣ではないです。
(荻上チキ)じゃあ、ネタでやっているところもあると自分でも思っている?
(町山智浩)ネタなんですよ。半分、ネタなんですよ。だから、共和党に対する嫌がらせ攻撃っていうのも、アニメとかのコラージュにするわけですね。トランプとか、いろんなものを……まあ、旧・共和党議員とかをね。あれってジョークじゃないですか。半分。
(荻上チキ)まあ、そうですね。面白おかしくいじるみたいな。
(町山智浩)面白おかしくからかうっていう形でやっているんで、ものすごい真剣なのか? 熱狂的で狂信的なのか?っていうとそうじゃなくて、やっぱりニヒリストなんですよ。なにをやっても真剣に信じることなんてないんだ。だから一生懸命ポリコレとか言っているのも、そんなものも全部上から見る感じなんですよ。
(荻上チキ)なるほど。
(町山智浩)反ポリコレに近いですね。だから、正義とかそういったものを信じないと。
(荻上チキ)ポリティカル・コレクトネス。政治的正しさっていうことですよね。女性を大事にしましょうとか。
(町山智浩)そう。そういったものに対して「白人至上主義が正しい、正義だ」って言ってるのかというと、そうでもなくて。むしろ、逆にニヒリスティックで。「正義なんてものはないんだ。民主主義なんてものはないんだ」っていう感じなんですよ。ニヒリスティックなんで。だからもっと言っちゃうと、「中世の暗黒時代に戻ればいいんだ」みたいなことまで言っているんですよ。
(荻上チキ)ほう。ちょっとアナーキー。っていうか、ネット文化の荒らし文化みたいなものもルーツとしてあるみたいなことなんでしょうかね?
(町山智浩)そうですね。何にも価値をあんまり求めてないですね。それほど、強烈には。
*ほぼ間違いなく「Tumblrにたむろする(元?)4chan民」と基本的特徴が一致?
まぁ割と、まずはクリント・イーストウッド監督作品「グラン・トリノ(Gran Torino、2008年)」を見ろという話だったりもする様ですね。
*実際、反ポリコレの立場からトランプ候補を最初から推し続けた。
*実は「どんなに成功したって俺達、アファーマティブ・アクション(affirmative action)の御蔭としか言われないんだぜ」と苛立ってその返上を要求してるBlack Establishment層とPoor White層は利害の一致が存在したりもします。その一方で「如何なる既得権益も手放したくないPoor Black層」とは対立関係が存在し、Activistっぽいアカウントが奴隷船の画像を投稿して「白人が皆殺しにされるまで俺達の復讐は終わらない!!」とか気炎を上げた際には、白人とBlack Establishment層が即座に共闘して反論したばかりか「ほう、Slaveの語源を知ってるかい、若いの? まさか奴隷売買の対象にされたのは黒人だけだと思い込んでるのかの?」とやさしく諭すスラブ系アカウントや「Jewishも白人扱いとは嬉しい誤算ですな」と嘲笑するユダヤ系アカウント(イスラエル国旗を焼く画像をUPして「Zionistよ死ね!!」とコメントしたりもする)が現れ、さらに「ユダヤ人や「ヒズパニック(Hispanic)も白人のうちに含まれますか?」「アイルランド人や南イタリア人も白人でOKですか?」「インド人やアラビア人はどうですか?」といった茶々が投稿削除まで続く事に。
*まぁあくまで「The Dark Age(2011年〜2012年)」頃の「日常風景」。2013年以降は、一部の無政府主義者やウルトラ・フェミニストを除いてみんなもっと穏やかにそれぞれの趣味に没頭する様に…
*かくして米国の無政府主義者達が「これぞまさしくナチス復活!! 今こそ奴らを一人残らず皆殺しにろ!!」と咆哮し、それに日本の無政府主義者団体もそれを応援する展開に。
ケミカル(Chemical)な立場から全体像を俯瞰すると、国際的に「弛緩系」より「覚醒系」の勢いが強まっている様にも見えるのが悩み所。それだと大麻合法化くらいでは到底追いつきません(棒読み)。ただむしろ(現実がそういうモードであるが故に、逆に?)最近の国際SNS上はむしろ「弛緩系」が力を強めてます。そもそも「まだトランプ政権の進行方向が見えないので、中道左派も中道右派も様子を見ながら待機中」という状況でもあるせいで。
ただ、あくまで「母体」は「母体」に過ぎません。実際の政治上の動きは「誰が代表者として鍵を握るのか?」に掛かってきます。
各国の政治的代表者がそれぞれしっかり自国民を掌握してる限り「ネット上における匿名アカウントの右往左往など、所詮は鶏肋」の一言で済む話なのですが…まぁこれは「鶏が先か卵が先か」レベルの水掛け論となりましょう。