諸概念の迷宮(Things got frantic)

歴史とは何か。それは「専有(occupation)=自由(liberty)」と「消費(demand)=生産(Supply)」と「実証主義(positivism)=権威主義(Authoritarianism)」「敵友主義=適応主義(Snobbism)」を巡る虚々実々の駆け引きの積み重ねではなかったか。その部分だけ抽出して並べると、一体どんな歴史観が浮かび上がってくるのか。はてさて全体像はどうなるやら。

【ソードアート・オンライン】【人工知能】【MMORPG】【年表】「TV系サイバーパンク」は次段階に進化出来たのか?

  今回は以下に関する話。

重度のMMORPG中毒でもあった河原礫は、仮想空間の概念の専有権を主張する「中年危機に陥った元ヒッピー層」から引き剥がすべく「ソードアート・オンライン(2002年〜)」の構想に着手する。

ソードアート・オンライン」には「トップダウンAI」「ボトムアップAI」という他であまり聞かない用語が使われますが、その起源を探ります。
歓迎

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Welcome to you're "DOOM!"

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発表当時「ポストサイバー小説」と銘打たれた「スノウ・クラッシュ(Snow Clush、1992年、邦訳1998年)」は「セカンド・ライフ(Second Life)」の元ネタとなった事で知られる。

本書に登場する「スノウ・クラッシュ」とは、電脳空間に現れた新種のコンピュータウィルスで、使用すると電脳空間内だけでなく現実世界での肉体にもダメージを与える危険なドラッグでもあります。

ある日ヒロは電脳空間で不気味な男に声を掛けられたことから、特急便屋の少女Y・Tと共にスノウ・クラッシュを巡る事件に巻き込まれていきます。

作者本人によるとこの小説は元々グラフィックノベルとして書かれる予定だったそうで、確かにグラフィックで見てみたかったなと思わせる映像的でカッコいい場面が多く登場します。高速ピザ配達の描写や、電脳空間内で刀で対決する場面、バイクで疾走する場面なんかはシーンが頭に浮かぶようです。

この小説で重要な役割を担う電脳空間は、メインストリートの全長が地球の円周よりはるかに長い65,536kmもあり、「ニューヨークシティの倍」くらいの人口がアクセスしているとされています。そこに主人公らはゴーグルとイヤフォンを装着してアクセスするわけですが、この空間は作中では「メタヴァース」と呼ばれています。

そう、2000年代初頭に登場したオンライン空間「セカンドライフ」で話題になった「メタヴァース」という言葉はこの小説で初めて登場しました。セカンドライフの創設者であるフィリップ・ローズデールはこの小説に影響を受けてセカンドライフの構想を練ったと言われています。セカンドライフはオンラインゲームと違い、何らかの目的を持ってアクセスするのではなく、ユーザー同士で交流したり生活する場としてのVR空間である事が特徴的でした。また、合わせてメタヴァースの中でのプレイヤーは「アヴァター」と呼ばれる外見も全く異なるバーチャルな自分を作り、操作します。このいわゆる「アバター」の概念が最初に登場したのものこの『スノウ・クラッシュ』です。

作中のメタヴァ―ス内には様々な情報を取捨選択し主人公に提示する「ライブラリアン」というAI(人工知能)が登場します。モニター上で文字を打ち込んでただネットを検索するのではなく、VR空間内でAIと先生と生徒のようにディスカッションしながら知識を得ていく描写はスリリングで、VRの可能性を感じさせます。

一方、作中においてVR技術を初めて「間もなく実現される現実的技術」として扱ったのはおそらくマイケル・クライトンの「ディスクロージャー(Disclosure、1994年)」。前作「ライジング・サン(Rising Sun、1992年)」と併せて「TV系サイバーパンク」の守備範囲のほとんどを網羅する構造になっています。

ライジング・サン - Wikipedia

日本企業によるアメリカ企業の買収、市場への進出が問題視されていた1990年代前半のカリフォルニア州を舞台にした日米経済摩擦サスペンス。

  • L.A.のど真ん中に巨大なビルを建造した日本企業 "Nakamoto" の45階で映画スターや大物政治家を集め大々的に開かれた落成パーティ、しかし1階上フロアでパーティ参加者の白人女性の変死体が見つかる。

  • 一部始終を録画していた監視カメラの記録ディスクを巡り、しだいに明らかになる陰謀。そして、企業買収を巡り、交差する政治とカネ。

  • ゴルフ接待や系列、やくざ、など日本ビジネスの暗部に迫り、日本人とアメリカ人のモノの考え方の違いや文化の壁を描く。

カリフォルニアという土地で、我が物顔で闊歩する日本人ビジネスマンと、日本を理解しようとする刑事のやりとりが見物。

映画化に際して「日本通ぶるショーン・コネリー」とか「ヤクザの女体盛りパーティ」とかそういう部分しか話題にならなかった怪作。

「ディスクロージャー(Disclosure、1994年)」

米国で製作されたサスペンス映画。マイケル・クライトンの同名小説が原作。

  • シアトルのハイテク企業の重役トム・サンダースは、今までの業績から昇進はほぼ確実と思われていたが、そのポストに就いたのは彼ではなく、本社から新たにやってきた女性メレディス・ジョンソンだった。実は彼女とトムは10年前に激しく愛し合った仲で、彼はこの事実に衝撃を受けるのだった。

  • その夜、メレディスのオフィスに呼び出されたトムは、次第に彼女に誘惑されていくが、彼はこの誘いを拒否し、その場を去る。しかし、次の朝、事態は急変してしまう。なんと彼がメレディスに対して、セクハラを行ったという訴えが挙がり、しかもその訴えを起こしたのは、他でもないメレディス自身だった。会社での高いポストと、女性という立場を利用した彼女の攻撃によって、トムは仕事も家庭を失いそうになる。

  • だが失意の彼の元に、差出人不明の電子メールが届く。それには彼の無実を証明する的確なアドバイスが示されていた。これに勇気づけられた彼は、誇りを取り戻すために再び立ちあがる決意をする。

マイケル・クライトンらしく「実現可能なテクノロジー」としてVR技術を扱った嚆矢。

作中におけるVR技術は「あの会社の情報セキュリティ・システムは完璧に見えて盲点がある。まだ実験段階の玩具に過ぎないVRインターフェイスにも管理者権限が付与されてる事を忘れてるんだ」みたいなバックドア的扱い。

ディスクロージャー(1994年)」はマイケル・ダグラスデミ・ムーア主演。話の筋は女性上司によるセクハラ問題であるが、彼らが勤める会社がVRを開発している。マイケル・ダグラスがVR視聴機器を顔につけ、仮想空間に浮かぶファイルやメールを読んだり、手を動かして削除したりしている。同じフォルダにアクセスしている他人も映し出される。クラウドサービスや、そのクラウドで共有されたファイルをチームで編集する「Google Docs」のようなサービスの原型が描かれる。この時代のVR映画はたいてい「仮想世界」を描くのに対し、VRをビジネスツールのように利用する「ディスクロージャー」はいまを先取りしている。

「JM: Johnny Mnemonic(1995年)」はキアヌ・リーブス主演。北野武はヤクザの親分役で出演。キアヌ・リーブスは、自分の脳にデータをストレージして運ぶ「データ運び屋」。この映画でもVR視聴機器を顔につけて、ファイルにアクセスするシーンがある。まだまだデータはネット配信するのではなく、CD、DVDなど記憶媒体を使い「運ぶ」時代の作品。

マトリックス(1999年)」ではJMのときと同じくキアヌ・リーブスが、うなじにデータ(というかプログラム)を注入される。「Lawmower Man」もそうだが、この時代の「仮想空間」は人間の意識世界を「仮想」に実現するという意味合いで使われている。妄想をデジタル箱庭で作るみたいな感じ。そして、その仮想が人間を支配するという物語。仮想をマトリックスと呼び「system」と呼ぶ。第2作「リローデッド」第3作「レボリューション」は仮想とリアルの問いかけというより、戦闘シーンが延々続くアクション映画になっているので、VR関連としては見る必要はない。

 

「The Thirteenth Floor(13F、 1999年)」は、デジタルで仮想”空間”が何層にも存在し、そのなかで「誰が俺を作った」「この世界は幻か」「世界の果てはあるのか」といった話が入り交じる映画。仮想空間は”symilation”と呼んでいる。この世界は誰かが作っている「ビッグ・ブラザー」的なコンセプトに触れると、いつもジム・キャリー主演「トゥルーマン・ショー(1998年)」を思い出す。いまのVRとはちょっと違うが、映画自体はオススメ。

全体を彩る陰鬱な調子…1990年代アメリカでは、ヒッピー運動の延長線上に登場したTV系サイバーパンク運動ばかりか、同様の起源を有する米国ファンタジー運動の世界にもまで衰退の影が迫っていました。一言で要約するなら「中年危機」。ヒッピー運動当時の若者達が遂に中年期を迎え、様々な現実的問題に直面させられていたのです。

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アーシュラ・K・ル=グウィン著「ゲド戦記:帰還(Tehanu, The Last Book of Earthsea、1990年)」

元巫女テナー「私達自身が自由そのものなのね」
元大賢人ゲド「そう思う」
元巫女テナー「力を失う前の貴方は自由そのものに見えた。でも何を代償に得た自由だったの? 何が貴方を自由にしたの? 私はといえば、太古の精霊達に仕える女達の思い通り、まるで粘土細工みたいに練り上げられただけだった。ううん太古の精霊達じゃない。女達が仕えていたのは男達だったのかも。儀式も、その内容も、執り行う場所もみんな男達が決めていたんだもの。その後で私は自由となり、ほんのちょっとの間貴方といて、それからオジオンの所に行ったけど、それは私の自由そのものじゃなくて、選択肢が増えたから選んだだけ。そして今度は農場と、その主と、二人の間にもうけた子供達の三者に役立つ様にまた自分を年度の様に練り上げる道を選んだ。考えてみたら私はずっとそうやって器であり続けてきた。いつ、どこで。どんな器たらんとしてきたかは覚えてる。でも材料は? 対価は? 命の躍動するまま生きてきたつもりだったけど、一番肝心の自分が判らない」


テナーの独白「(英雄王の討伐によって海賊稼業が続けられなくなり、テナーの農園の継承権を主張しに舞い戻ってきた息子のヒバナを目の当たりにして)ヒウチイシ(テナーの夫の名)の答も二十年いっしょだった。イエスかノーかをけっしていわないで、ものをきくこちらの権利を拒んでしまうのだ。こちらが知らないのをいいことに、逃げ場をいつものこして。なんて貧しいの。なんて情けないちまちました自由なの」「ヒバナは朝ご飯の時もじっと坐って待ってるだけ。ヒウチイシはいつも母親にかしずかれ、妻にかしずかれ、娘にかしずかれてきた。父親ほどの男でもないくせに。その事を判らせてやらないといけないのだろうか」

ゲド戦記は前半三部作(1968年~1977年)が所謂「家父長主義的アメリカ」がヒッピー運動などによって動揺を余儀なくされた時代に執筆された「人間を拘束する伝統的影響力が必然的に生み出す強大な反動とどう対峙していくかという物語」だったのに対し、後半三部作(1990年~2001年)は両者が対消滅を起こし忘却の彼方に去った後に、残された人々が「(当時自分達が執拗に求めた)自由とは何だったのか」見失ってしまう物語となっている。まさしく安部公房が「砂の女(1962年)」の冒頭で掲げた「罰がなければ、逃げる楽しみもない」の世界…

フランシス・コッポラ監督の映画「ロスト・イン・トランスレーションLost in Translation、2003年)」も同様の「中年危機」を主題とする作品。父親の撮影した「ゴッドファーザーPart III(1990年)」についても、1930年代ハリウッドを代表するフランク・キャプラ監督についてもそういう話がありましたが「南イタリア人が人を元気にする映画を撮影するのは当人が金持ちになるまで」ってもしかして本当の話? しかも「サイバーパンク」で「小津安二郎」…

ロスト・イン・トランスレーション - Wikipedia

ロスト・イン・トランスレーション』がどんな話かというと、若い女性(既婚・そこそこセレブ)が日本に来て異文化に触れながらも退屈で毎日ホテルでダラダラしてる話、としか覚えてませんでした。

でも見返してみたら、けっこうおじ様パートもよかったですね。中年の危機?のギスギスした妻との描写(あの偏執的なFAX!)と、日本のTV業界のくだらなさ。あ、ここでマシュー出てきました。確かに懐かしかったです。

あと、私が記憶していたよりけっこう二人で外出してました!もっと引きこもってたイメージだったのに。

しゃぶしゃぶのお店でランチして、感想が「客に料理させるなんて!」だったり、あーやっぱり異文化なんだなぁ、と思ったり。

この時代にオリエンタリズムっていうわけでもないと思うけど、街(主に新宿と渋谷?)の描写がムーディーに仕上げられてるのが見所なのかな。

私は今『ニューロマンサー』を読んでるので、「なんか映像がサイバーパンクっぽいぞ…!」とか思ってワクワクしてました。『ブレードランナー』っぽいとも言えますね。

うーん、こういう連想が合ってるのかどうか気になります。そういう効果は狙ってるのか?

夫はなぜか「こりゃ小津安二郎の世界だねー」って言ってました。うちの夫婦、映画の好みがだいぶ違うんです。私が『東京物語』しか観てないからか、何言ってるのかちょっと分かりませんですよ…。

 そして「トップダウンAI」とか「ボトムアップAI」といった用語がJ.P.ホーガン「仮想空間計画(Realtime Interrupt、1995年3月、邦訳1999年)」の中で使われる事に。これもまた「ヒッピー世代の中年危機」を意識した内容で後世に大きな足跡を残す事はありませんでした。 

アメリカの大企業サイバネティクス・ロジック・コーポレーションでAI(人工知能)の研究をしていたジョー・コリガンは、AIの進化にVRを活用しようと考えていました。その計画はオズ計画と名付けられましたが、計画の実験段階で何らかの事故に巻き込まれたコリガンは精神に重い障害を負ってしまいます。オズ計画は中止され、事故の影響で過去の記憶を失ってしまった彼は研究を離れ、静養しながらこれまでとはまったく違った生活を送っていました。

そして事故から12年もの歳月が流れたある日、コリガンはバーで出会った女性リリィから意外な話を聞かされます。何とオズ計画は現在も進行しており、コリガンはVRによる仮想空間に未だ閉じ込められていて、周囲にいる人たちはAIなのだと言うのです。

そこからコリガンがVR空間を脱出するための奮闘が始まる訳ですが、作中ではその様子と並行して、彼がオズ計画でVR開発を推進していた時の様子が交互に描かれていきます。

作者のJ・P・ホーガンはイギリス生まれのSF作家で、その作品中で本格的な科学技術理論を構築する事を得意としています。

本作ではVRの技術開発の現場の描写に比重が置かれているため、中盤までは物語があまり進まずストーリー的には少し退屈かも知れません。ですが緻密に描かれるVR開発の現場は大きな荒唐無稽さは感じさせず、なるほどこういう手順を踏めばVR空間は実現可能かもと思わせる科学面の描写にはストーリー面の面白さとはまた別の興味深さがあります。

この辺の技術的説明はここには書きませんが、関心のある人はぜひ読んでみてください。専門的な突っ込み所は多いと思いますが、それでも、VR世界を構築するための膨大なデータ量をどうすれば処理できるか等、数多くの発想が披露されており読み手の想像力を刺激してくれます。

2012年11月、東京大学駒場祭にて川原氏が講演会でAW・SAO両作について語る企画があり、そこで多大な影響を受けた作品として挙げられた名前がこれ。ホーガンと言えば「星を継ぐもの」とかは未だに容易に入手が可能だというのに、ずっと後に出た筈の今作は版元が重版していないのか店頭で見つけるのが非常に困難でした。結局ネットで取り寄せた。

重版されていない理由はなんとなくわかる気がします。まず邦題が駄目過ぎる。この話の本筋は仮想空間それ自体じゃなくて、仮想と現実で時間の流れが違う事による人生の間に挿入されたもう1つの人生感。ゆえに原題が「REALTIME INTERRUPT」になってるのに、どうしてこんなつまらん邦題になったのか。もう1つは内容に捻りがなかったこと。原作が95年、邦訳が99年というと一般層でもネットがそれほど珍しくなくなって来た時期です。そのタイミングで仮想空間という言葉だけではロマン足りえず、しかしながら敢えてこの題材を選ぶなら何かがあるだろうと期待してしまうのだけれど、それもあんまりない。決してつまらなくはないけど驚きには欠けているんです。

川原氏がAW・SAO執筆の際どれほど影響受けていたかという意味では楽しめると思います。というか影響が多大過ぎてこれは川原せんせー言わない方が良かったんじゃないか的な…。

「ソード・アート・オンライン」より。

人工知能には、大きく分けて2種類。

  •  トップダウン…既存のコンピュータ・アーキテクチャ上で単純な質疑応答プログラムに、徐々に知識と経験を積ませ、学習によって最終的に本物の知性へと近付けようというモノ。現在、「人口知能」と呼ばれているモノのほぼ全てが、この「トップダウン型」です。つまり、どんなに「似ている」トップダウン型でも、見かけ上は人間のソレに似ているが、実は 完全に異なるモノなのです。端的に言うと、「Aと聞かれたらBと答える」というプログラムの集合体でしかない…つまり、原理的には、携帯端末に搭載されている予測変換辞書プログラムと何ら変わるところがありません。なので裏を返せば、学習していない入力に関しては、適切な反応が出来ないと言う事。現状では、真に「知性」と呼べるレベルに達してはいないと言わざるを得ません。

  • ボトムアップ…人間の持つ「脳」脳細胞が一千億個連結された生態器官の構造そのものを、人工の電気的装置によって再現し、そこに「知性」を発生させよう、という考え方ですもし実現すればソコに宿る「知性」は、「トップダウン型」とは本質的に違う、人間と真に同じレベルにまで達しうる存在となるはずなのです。

トップダウン人工知能の「ユイ」のした説明の簡略文

J.P.ホーガン「仮想空間計画(Realtime Interrupt、1995年3月、邦訳1999年)」

コリガン は 言っ た。

「 ぼくはかつてここにある大企業の一つに勤めてた―― サイバネティクス・ロジック・コーポレーションだよ――ぼくはブロゥノクスにある会社の研究 センター で 働い ていた。あの会社は人工知能をもとにしたシステムで大手だ。AI分野の目標は常に変らず、いつ の日か本物の人間のレベルの知能を生みだすことだ。だが、今世紀初頭の 頃に技術は行き詰まりはじめ た。多少の進展と、成功もあるが失敗もあるという結果 が出た後で、明らかにそれ以上先へ進んで いるとはいえなくなったんだ」

「ええ、CLCは知ってるわ」

リリィ が 言った。

「 都心にビルがあるでしょう、ウェスティングハウスの近く」 

コリガンはうなずいた。

「それで 約 十 二 年前、 CLC は A I を 作りだす ため の 新しい 方法 を 試す ため に、 大がかり な 研究 プロジェクト を 立ち あげ た ん だ。 こう 言う と驚くかもしれないが、実質的にその方法を発明したのはぼくなんだ」

言葉を切る。が、リリィはどうとでもとれる視線を返しているだけだった。

コリガンは続けた。
「いい かい、AIに対しては伝統的に二つのアプローチがあった。全体から細部へ(トップダウン)と基礎から全体へ(ボトムアップ)だ。トップダウンというのは、われわれが『 精神』と呼んでいるこの複雑な代物をすべて解明して、そいつを充分に細かいところまでコードに変えてプログラムを組もうとす やり方だ」。顔の前で手をふっ た。「 冗談 じゃ ない。たとえコードにする対象がわかっ ていたとしても、必要な作業 はでかすぎてとても手におえるもんじゃ ない」。

リリィの唇に奇妙な、半ば微笑みのようなものが浮かんでい た。が、自分の話に気を とられたコリガンはそれには気がつかなかった。彼は続けた。

「もう一つの方法のボトムアップは、進化させていけるような、単純な神経繊維に似た 構成を作ろうとするやり方だ。われわれが知能を発達させるのと同じだ。ここでぶつかる問題は、いざ模倣しようとするまで、動物の神経組織というものがどれほど効率良く できているかわからないことだ。この世界で最高の連中に十年の時間と五 千万千万 ドル つぎ込んでも、テレビカメラと脚をつけたコンピュータに歩かせることがせいぜい だ。そして平均的な一歳 児はその周りを駆け回れる――文字どおりだ よ。コンピュータという やつ は外界との相互作用はうまくはできないという、単純な事実があるん だ。何十億年もかけ てそのために最適化されてはいないからね。自分たちだけの内部 世界でのほうがうまくやれる」

リリィはようやくうなずき、片手を上げた。

「もう良いわ、ジョー。それ以上言う必要はないわ。そのプロジェクトはオズと呼ばれ てた――ザイログという CLCの新しい部門として立ち あげられた。川向こうの、カースン・ストリート沿い――そうでしょ。基本に なっ たアイデアはAIをヴァーチャル 世界との相互作用で 進化させようというものだった」

コリガン は驚いてリリィを見つめた。

「その相互作用がどういう風に実装されることになっていたか、どのくらい知ってるのかね」

不必要な説明を始めるのを避けるため、たずねてみた。

「充分なところまで知ってるわ」

リリィは答えた。

「基本的な考えというのは、外部から投影された本物の人間の分身を模倣して擬人 的 アニメーションを操作することでシステムに学習させるというものよ」

AIはヴァーチャル世界で人工のキャラクター を操ることで進化するはずだ。生物的 進化の方向へ押しやるかわりに、システムは自分が創造したものの振舞いを、ボランティア参加者が代理として外部から注入した分身の振舞いに近づけるように努めることに なる。 つまりヴァーチャル世界には二 種類の住民がいることになる。コンピュータが 操作する擬人的 な「アニメーション」と本物の人間が自分自身の姿として操縦する「 分身」だ。テストはアニメーションの振舞いを見分けのつか ないものにすることが 機械にできるかどう か 調べるためだった。その 答え から、リリィはこうしたことをすべて承知しているらしい。

「すると分身をどうやっ て注入するかも知っていると見ていいんだ ね」

コリガンは言った。

「VIVとかDIVACはどう かな、聞いたことあるかい」

コリガンが挙げたのは、神経に直接 結合するI/ Oシステムの、当時最先端の技術だっ た。頭にかぶる式のディスプレイやボディ スーツ などといった初期のヴァーチャル 装備の後に実用化されたものだ。それはカーネギー・メロンや MIT、ある種の政府 機関、それに京都の先進テレコムといったところで進められてい た 研究から生まれて きたもので、脳の中の神経構造との直接 結合を含むものだった。

なるほど、ここで「誤解」が入って来る訳ですね。原義における「トップ・ダウン型AI」と「ボトム・アップ型AI」はまた違ったものを指していたんです。

人工知能史

AIの開発手法はその初期から今日に至るまで2つの対立したアプローチがとられている。トップ・ダウン型とボトム・アップ型だ。

  • トップ・ダウン型はマーヴィン・ミンスキーを筆頭に、 脳の生理学構造をひとまず無視して、シンボルやルールで人工知能を作り上げようとするもの。

  • ボトム・アップ型はフランク・ローゼンブラットを筆頭に、神経構造を重視するもの。

これら2派は1960年代まで競い合ったが、神経構造モデルのパーセプトロンの限界が示されボトムアップ型は下火となる。この辺の解説は、ハワード・ガードナー「認知革命」やパラメ・マコーダック「コンピューターは考える」がおもしろい。

それ以降1970年まではトップダウン方式全盛の時代だったが、「背景知識」や「フレーム問題」など根本的な問題を解決することはできなかった。

1980年代になってコンピューターの進歩によって、ボトムアップが見直され、「コネクショニズム」として、再び表舞台に登場してくる。コネクショニズムの思想や心、脳、機械、について欠かせない本はダクラス・ホフスッター「ゲーデルエッシャー、バッハ」である。トップダウン方式とボトムアップ方式に関する優れた説明は、ジャック・コープランド人工知能-哲学的入門」にある。

1980年台にはいるとAIというアイディアそのものが不可能であるという意見が他分野から提出される。哲学者サールの中国語の部屋である。これはチューリングテストに対する反論として、著書「心・脳・科学」の中で展開された。


第2の攻撃はロジャー・ペンローズの「皇帝の新しい心」に始まる。これは、ゲーデル不完全性定理がベースになっている。この理論はその後「量子脳理論」となって現在の最新理論の一つに発展した。

1997年チェスプログラムがカスパロフを負かしたニュースが世界を駆けめぐった。しかしこれは単なるゲームで、知能ではない。しかしカスパロフは「指し手に異星人の知性を感じた」と述べているのが、非常に興味深い。十分に発達したプログラムに一種の人間を感じたようだ。しかし、ディープ・ブルーの延長線上に創造性を期待することはできない。

ところで、J.P.ホーガン「仮想空間計画(Realtime Interrupt、1995年3月、邦訳1999年)」が出版された時期はまさに「人間を超える人工知能」を目指した第二次AIブーム(1981年〜1993年)が何の成果も出せないまま挫折した「AI冬の時代」の最中。だから「仮想空間を使って従来の壁を破る」という発想が出てきた訳ですが、ここで新たな展開が。

1997年5月になるとIBMのスーパー・コンピュータ「ディープ・ブルー(Deep Blue、1989年〜1997年)」がガルリ・カスパロフ(露)とのチェス対戦で初めて世界チャンピオンに勝利し開発目標を達成するが、これはむしろ発想の逆転で人間は鳥を真似て飛行機を発明したわけではなく、新たな飛行原理を発見したのである」すなわち人間を真似て思考マシンを作る必要はない。新たな思考原理を見つければいい」という発想に到達した結果だった。

2010年代に入るとさらなるブレイクスルーが起こるが、これはソフトウェア技術の進歩そのもののせいではなかった。

  • コンピュータの処理能力が劇的に向上したこと(70年間で100兆倍)。
  • 人間の思考にとらわれない思考原理「統計学的確率」が実用化されたこと。
  • ウェブ上のビッグデータのおかげで、機械学習の餌(エサ)に困らなくなったこと。
  • ディープラーニング(深層学習)で、機械学習の精度が劇的に向上したこと。

特にディープラーニング(深層学習)は、認識能力をコンピュータが自ら獲得した点が重要。

そもそも「人工知能とは何か?」という話になってきちゃう様です。そして話はさらにデリケートな方向に。

第二世代人工知能の亡霊がもたらす”AIの冬” - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)

「汎用人工知能」は、通常、AGI(Artificial General Intelligence)の訳とされ、人工知能研究のメインストリームでは、GoogleFacebookなどを含めて「まだ世界の誰も開発に成功していない」ものとされています。

ビデオに登場する株式会社日立製作所、研究開発グループ技師長の矢野和夫氏によれば、このH(エイチ)は、「(カスタマイズなどの必要がなく)汎用的に使える人工知能」ということで、このビデオの中では「汎用人工知能」という言葉が連呼されていますが、こうした言葉の濫用に、眉をひそめる業界人も少なくないようです。

昨今、ディープラーニングを契機としてAIが急激に注目を集める中で、こうした言葉の濫用により、現在の人工知能技術に過度の期待を集めることで、逆に再びAIに対する深い失望による投資意欲の後退を意味する「AIの冬(AI Winter)」の到来が懸念されています。

既に国際会議では、早くもこうした言葉の濫用に警鐘を鳴らすべきかどうかという議論に発展しています。

日立製作所としては、「汎用的に使える」「人工知能技術」ということで、略して「汎用人工知能」と呼んでいるという主張なのだと思いますが、「汎用人工知能」では全く意味が異なってしまうため、濫用は避けるべきです。

「 AIの冬の悪夢再び」ですか…そういえばここにその汎用人工知能(AGI=Artificial General Intelligence)そのものとしかいえない存在が。

ユイ(Yui)声 - 伊藤かな恵

ソードアート・オンライン・シリーズ」の登場人物。キリトとアスナが新婚生活を送っていた「アインクラッド」第22層の森に倒れていた幼い少女。記憶の混乱やシステム回りに不審な点が見られていたが、その正体はプレイヤーの精神的ケアを司るカウンセリング用人工知能・MHCP001。純然たる人工知能でありながら、人間顔負けの豊かな感情表現を見せる。

デスゲーム開始直後にシステムからプレイヤーに接触することを禁止され、プレイヤーの負の感情をモニタリングしつつその解決のための行動を起こせない矛盾状態から崩壊寸前に陥っていたが、偶然触れたキリトとアスナの感情が他のプレイヤーと違うことに引き寄せられて2人の前に出現した。名前以外の記憶を失っており、自身を保護してくれたキリトとアスナを「パパ」「ママ」と呼んで慕うようになる。ダンジョン内に設置されていたGM用コンソールに触れたことで記憶を取り戻し、GM権限を行使してキリト達の窮地を救う。その結果システムに検知され消去されそうになるが、キリトの尽力でアイテム「MHCP001」としてシステムから切り離されて彼のナーヴギアのローカルメモリに保存された。(アニメ放映中の作者ツイッターによると圧縮コピーをしていると発言されている)。
*MHCP…システム側に立つSAO内のGM的存在であり、ゲーム上のあらゆる動的オブジェクトからは攻撃不可・かつそれらを選択的かつ一方的に消去する権限を有している。

フェアリィ・ダンス編では、SAOのシステム・セーブデータが流用されたALOにおいて、キリトの他のアイテムが使用不可になっている中で唯一残り復活を遂げる。(厳密にはオリジナルからのコピーではある。)「ナビゲーション・ピクシー」としてキリト達にケアや情報提供でサポートし、母・アスナの奪還に臨む。事件解決後はキリトのPCに本体を置き、ゲーム内外でAIとして高い能力を発揮して情報収集に活躍する。
*ナビゲーション・ピクシー…本来はゲームに関する基本的な質問に鄭文型で答えるだけの存在であり、どちらかといえばプレオープンの際に抽選配布された「プライベート・ピクシー」に近い。

旧SAOアインクラッドでの2年間から引き続く人間観察を経たその感情模倣機能は、違和感を持つ人間がほぼいないレベルに達しており、キリトによるとトップダウン型AIの最先端。ストーリーが進むごとに機能の追加やAIとしての成長が見られ、ファントム・バレット編ではALO外のアスナの携帯に通信を送っており、さらに後にキリトの学校での研究成果により現実世界でも限定的ながら見る・聞く・話すことが可能となった。アリシゼーション編の時点ではクラッキングをこなすまでに成長している。その反面未だシステム的には脆い部分を持っており、人間の負の感情に対してあまり耐性がない。ALO内で出会ってからもリーファやシノン達も妹のように接している。

アリシゼーション編ではアスナの「オーシャン・タートル」潜入を手引きし、その後襲ってきたガブリエルたちの作戦を看破。日本に残っていたシノンたちに事情を説明して助けを求める。

既に最初から「トップダウンAI」とか「ボトムアップAI」なんて次元を遥かに超えた存在だったという事にキリトは一刻も早く気づくべきですね。本当に中身は一体どうなっているやら。

http://teresaescrig.com/wp-content/uploads/2012/04/Jeopardy.jpg

それにしてもどうして、J.P.ホーガン自身は「MMORPGの場にAIアカウントを放つ」という発想を追求しなかったのでしょうか?

最初期に登場したDiabloUO、EQは根強い人気を誇り、後世のオンラインゲームに計り知れない影響を与える。

1992年

  • Neverwinter Nightsがアメリカオンラインによりサービスを開始する。従来のチャット及びキャラクター機能にグラフィック面を追加した、世界初のMMORPG

    http://cdn.mmohuts.com/wp-content/uploads/2015/03/neverwinter-nights-oldmmorpg.jpg

1995年

  • 【Books】3月、J.P.ホーガン「仮想空間計画(Realtime Interrupt)」発表。 

1997年

  • ダンジョン探索型(ローグライクゲーム)MORPGDIABLO」がBlizzard Entertainmentより発売され、全世界で300万以上の売り上げを記録。

    http://www.growlingdoggames.com/wp-content/uploads/2012/05/diablo-1-game-image.jpg

  • ウルティマオンライン(UO)が米国で販売開始。日本国内販売は翌月。レベルではなくスキル制によるプレイヤーの成長という点で、冒険と戦闘を主軸にした今日のMMO・引いてはRPG全般と大きくそのスタイルが異なっている。スキルの許す限り、あらゆる職業につくことが可能とされており、その自由度は現状でも他のMMOの追随を許さない。

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  • 日本発のコンシューマーMORPG「Dragon's Dream」がセガ富士通より発売される。

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1998年 

  • ウルティマオンラインの日本鯖の運用が開始される。
  • 日本システムサブライズによるMMOライフストームの発売。二年後にクローズ。ライフストームは、3年後に発売されるエニックスのMMO「クロスゲート」の原点となる。
  • 韓国のMMO「Lineage」がリリースされる。当時では主流ではなかった無料DLにより爆発的に数を増やす。1対1の決闘やクラン(血盟)同士による攻城戦など、PvP要素が多く取り入れられている。

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1999年

  • 初めて本格的な3Dグラフィックスを採用したMMO、EverQuestが欧米で発売される。RACE(種族)とCLASS(クラス)の組み合わせによってキャラクターを作成。MOBの攻撃ターゲットを決めるヘイトや多数戦闘を有利に操作出来るクラウドコントロールの概念を生み出す。また、複数のプレイヤーが協力して戦う強力なレイドという敵の存在も、EQより生まれたものである。これらの概念は後のMMORPGに影響を与え、EQクローンという言葉を生み出す。今日のMMORPGの多くはEQクローンであると言える。

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  • Asheron's Callが発売される。3DRPG。初期MMOを支えたMMOの一翼であるが、日本での認知度は低い。アメリカでは今でも根強い人気を誇っている。
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  • 【Books】3月、J.P.ホーガン「仮想空間計画(Realtime Interrupt)」邦訳版が発売される。

2000年

2001

・2002年

  • スクウェアPS2ファイナルファンタジー11を発売。コンシューマーゲーム機による国内初のMMORPGである。スクウェア独自のオンライン・サービス「PlayOnline」を介して提供されている。ハードの普及率とFFのネームバリューによって数十万アカウントのユーザーを獲得した。そのシステムはEQに酷似し、EQクローンとも一部では呼ばれている。機種・国・言語によるサーバー分割がされておらず、ボーダレス化が行われているのが特徴。後に、PC版・X-BOX360版なども発売される。

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  • 韓国のMMORPGラグナロク・オンライン」の正式サービスが開始される。2Dのキャラクターと3Dのフィールドという独特のグラフィックが特徴。そのために、当時の外の3DMMORPGよりも要求スペックが低く、気軽に参加することが出来た。独自のコミュニティが形勢された結果、「横殴り」「ノーマナー」などのRO発祥となる多数の言語を作り出した。

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2003年

2004年

  • 3月、鉄騎大戦カプコンよりX-BOXで発売される。鉄騎大戦は前作の鉄騎から本格的戦闘用二足歩行ロボットの操縦シミュレーションとして話題を集めていた。

  • 翌月、同じくカプコンからPS2で狩猟型MOアクションゲーム「モンスターハンター」が発売される。

  • トゥルーファンタジーライブオンライン(TFLO)の開発が中止される。開発は三年間に及び、βテストまで予定されていた。(実際にテスターの応募も行われていた)。グラフィック部分は既に完成していたが、ネットワーク部分が未完成だったために開発中止措置が取られた。このような形でネットゲームの開発が中止されたのは初の事件。

  • リネージュⅡ(韓国、NCソフト)が日本で正式サービスを始める。前作のPvP要素である攻城戦に新要素を加えて進化させている。また前作では弱かったグラフィック面も、格段に変貌を遂げている。

  • Blizzard Entertainment社のMMORPGWorld of Warcraft(WoW)がサービスを開始した。同社の「ウォークラフト」シリーズの世界観を継承している。MacOSでも動作するという特徴がある。プレイヤーは「Alliance陣営」・「Horde陣営」と呼ばれる二つの陣営のどちらかに所属して戦争を行うという設定であり、対立する陣営とは一切のコミュニケーションを図ることが出来ない。またPvP・RPPvPサーバーでは、スパイ行為を防止するために、同一アカウントではどちらかの陣営にしかキャラクターを作成することは出来ない。2007年現在、有効アカウントが750万を超え、MMORPG史上最も成功したタイトルと呼ばれている。しかし、日本でのサービスが行われていない影響で、一部のコアユーザーを除いては国内の認知度はあまり高くはない。

  • エバークエスト2(EQ2)がソニーオンラインエンタテインメント(SOE)によりサービス開始される。日本語版は2005年6月16日から2006年6月30日までスクウェア・エニックス、2006年7月1日よりSOEによってサービスが提供されている。リアルな見た目が追及された結果、要求スペックがとても高く、現行の最高スペックのPCが必要になる。また日本の販売代理店がないなどの問題により、国内での浸透性は薄い。ただしBOTRMTなどの不正対策が他に類を見ないほど本格的に実施されており、サービスの質は高い。

  • この頃より月額無料アイテム課金制のネットワークゲームが爆発的増加を開始。

2005年

2006年

  • 2月、FANTASY EARTH ~THE RING OF DOMINION~ がスクウェア・エニックスより発売される。最大100人での多対多の戦闘が中心となったアクション型オンラインゲーム。FirstPersonStrategyと呼ばれるFPS(FirstPersonShooter)とRTS(Real-timeStrategy)の融合したシステムが特徴。11月に運営がゲームポットへと移管され、それに伴い名称がFANTASY EARTH ZEROに変更される。

  • ときめきオンラインがサービスを開始。運営はコナミ。対象はPC。従来のネットゲームとは異なり、仮想の学園を舞台にしたコミュニケーションツール的な側面を持つ。翌年7月にサービスを停止する。

  • セガよりPSOの続編に当たるファンタシースターユニバース(PSO)が発売される。

  • オンライン対応。PS2、X-BOX360、PCにて発売されているマルチプラットフォームMORPG

  • この年の調べではアイテム課金型オンラインゲームは前年度比71.2%増の302億円の市場規模を誇った。アイテム課金制のゲームは韓国産のものに多く見受けられ、日本でも増加の傾向にある。

2007年

2008年

  • 総開発費12億円という宣伝で話題を集めた、Soul of the Ultimate Nation(ゲームオン)が4月にサービスを開始する。

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  • 6月、ブラウザゲームRTSトラビアン」の国内正式サービス(JP1)が開始される。

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  • 2008年9月15日 リーマン・ショック勃発

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  • 11月、WoWの拡張パック第二弾「Wrath of the Lich King」が発売される。発売より24時間で280万本、一ヶ月間の販売数は400万以上というMMORPG市場で最大の売り上げを誇った。またこの拡張パックの発売の影響を受け、全世界における登録者数は1150万人を突破した。

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  • NCsoftのAionが韓国で正式サービスを開始。OBT中には同時接続者数が20万人を記録した。翌月、2008年韓国ゲーム大賞を受賞。日本でのサービス開始は翌年の7月19日。 
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  • 【Books】河原礫がSAOの気分転換に執筆した「アクセル・ワールド」が第15回電撃小説大賞の大賞を受賞。その際「ソードアートオンライン」を読んだ担当編集者の提案により電撃文庫から商業作品として刊行されることになる。

2009年

  • Meteor Gamesが開発中のMMORPG「Twin Skies」がFlashをベースとした2Dゲームへ路線変更された事が発表される。理由は世界的な経済情勢の悪化。経済悪化による開発中止、計画変更などは他にもいくつか見られ、世相を映した流れとも言える。

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多数のネットゲームが生み出された事で、日の目を浴びる事なく消えていったゲーム、あまりにも粗雑な内容で消費者から見限られたゲームも少なくはない。また、ジャンルとして成立してしまった事で、RMTやアカウントハックなど犯罪の温床となってしまっている部分も決して避けては通れない問題である。そんな中、各社はソーシャルアプリやブラウザゲームなど、従来のMMORPGとは異なる方向性を模索し始めている。

①実は作中に「仮想空間プロジェクト」の先行研究の一つとしてMMORPGの場にAIアカウントを放つ」研究も出てくる。ただそこに登場するMMORPGは(未来の話なのに)2000年代レベルの内容で「このアプローチだけでは目標到達は目指せない」と、あっけなく切り捨てられてしまうのである。
*ただ実際、物語中の時間軸では2000年代の話なので、割と正確な未来予測だったとも。

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J.P.ホーガン「仮想空間計画(Realtime Interrupt、1995年3月、邦訳1999年)」

ペルセウスは目的志向で自己適応能力を備えた神経網の類似物を基礎にした学習システムから生まれた最新ヴァージョンだった。MITにいた間コリガンが研究していたもの で、与えられた問題を解く手法で実験を重ねているシステムだ。新たな変異の中で一番 うまく動くように思われるものを採用 し、うまく働かないものは落してゆく――自然界 では「 進化」として知られている手順だ。手法を試すのに理想的な環境――明確に定義 された課題が豊富で、容易に測定できる結果が生じるもの――は、古典的なドラゴン& ダンジョン(D&D)タイプ のアドヴェンチャー・ゲームだった。したがってペルセウス はコンピュータが生みだしたキャラクターで、そうした神話的な世界を、同様の達成目標と克服すべき障害を与えられていた。AI研究の半分は、世界の知識を与える際の問題と格闘することであるように思えた。
*まさしく黎明期MMORPGNeverwinter Nightsのイメージそのもの?

②代わって採用したのが「徹底した映像取材によって実在する街を再現するGoogle Map路線。そしてその発想はむしろ同じ河原礫「アクセル・ワールド(2008年〜)」における「ソーシャル・カメラ映像からステージを生成する」発想につながっていく。
*その一方で実際のGoogle Map路線は「ユーザー側が次々とポータルを登録する事によって自動生成されるビッグデータ」を展開の軸とする「Ingress(2012年〜)」「ポケモンGo(2016年〜)」を生み出したが「都会と田舎の情報格差」なる新しい問題も表面化させて新局面に突入。

J.P.ホーガン「仮想空間計画(Realtime Interrupt、1995年3月、邦訳1999年)」

「リアルスケイピング」

オズ計画の準備の一環として、この街の建築物、地勢、その他視覚的な細かい点を系統的に記録し、デジタル化するという大規模な計画があった。これは「リアルスケイピング」と呼ばれる作業で、ヴァーチャル空間の中のすべてのシーンを本物そっくりに再現するためのもの だっ た。が、それ にも限界はあった。計画ではピッツバーグとその周辺だけをカヴァーしているにすぎなかった――そしてそれだけでも、必然的に伴う作業 量は膨大なものだった。それだけで なく、ザイログは、同様の計画を他で進めている 提携先の組織 とそのデータベースを合体していた。そうした提携先の一つが東京の久松 で、だからコリガンは四年前に日本 に「 行く」ことができたのだ。

だがそれでも足りないと言い渡されてしまう。

「大したもんだ。それに、あざやかだ。実にうまくやったもんだ。誤解しないで欲しい んだが――あれには非常に頭の切れる人びとが、大変な苦労をしてるもんだということ はわかる。そのことを否定するわけじゃない。だが、本当のところを言え ば、あれは まだおもちゃにすぎん――ガキどもならより本物らしいゲームができて大喜びするところだ。わしの言っとることがわかるか」

ここでJ.P.ホーガン作品恒例の文系否定論。「仮想現実を生きてるのはむしろ奴等」

「わたしたちが相手にしている人たちはほとんどが詐欺師、変人、ペテン師です。ここで問題になってる連中ってなにものか、ちょっと考えてみてください。宣伝部の連中 は、これが現実だと自分たちが言ったものが現実だと思っています。広告業界や政治家の清潔イメージ保持の専門家たちは、自分たちだけの現実を作ってます。こういう連中 はみんな、人工的に作られたイメージの世界で行動しています―― そのイメージという のは、一般大衆の信じやすさと願望充足の幻想を基礎にして、錯覚と妄想によって支え られ ています。現象が真実であることは重要ではないんです。ただ、人びとが真実と信じこんでいるもの、真実であって欲しいと思っているものです」

フラクタルアルゴリズムの効用と限界の検討

あらゆるものを完璧に再現することは非実用的でもあったし、また不必要でもあった。 現実というものは充分本物らしく見せれば充分本物らしく見えるからだ。したがって問題は、ごまかしながらそれを覚られないですむうまい方法をどうやって見つけるか、ということに絞られた。

フラクタルアルゴリズム を 使えば、最低限の情報から大量の素材を生みだすことが できる――自然が組立て命令をDNAの中に圧縮している方法だ。主な障害は、納得の ゆくほど本物らしい結果を生みだすことで、それには何らかの形の無作為化能力を導入 することが必要だった。すなわち、同じ入力用数式を適用しても普通には同じような結果が二つは出てこないようにするのである。これによって、二つの別々のソフトウェア が走って例えば一本の木(あるいは葉でも岩でも山でも雪片でもいい)を生みだしているとすると、はじめの変数で同じセットを使えばどちらも木のように見えるが、しかし 同じ木ではないことになる。おそらくこの方法は森や空やあるいは全体の情景といった、細かいところ まで 正確であることはたいして問題にはならないものを再現するには使えるだろう。 だが他の状況ではまた別の手法が求められていた。

そして突如訪れるパラダイムシフト。「トップダウンが駄目ならボトムアップ

「チャーリィはまだ理想主義者なのさ」

ハチャーが言った。

「世界は論理的 じゃない ということを認めようとしないんだ」

「確かに世界は図式的なアリストテレス的論理では動いていないね」

シプリィも認めた。

「それは完全に演繹的だからね。真理からスタートする。そしてそこから世界がしたがっているはずの法則が導きだされる。機械が得意とするのはそれさ。ところが現実生活 では、人間は経験で得た今の世界のあり方から出発する。それからその理由を推察し、 それが実際のものに近いものでありますようにと祈るわけだ。帰納法さ。人間がやって いるのはこっちだ――しかもどうやってかは自分たちですらはっきりわかっていない。 だから教科書に書いてある科学と実際の科学が違ってくる」

帰納法に関しては哲学者たちが何世紀も議論してきたんじゃなかったかしら」

イーヴリンが口をはさんだ。シプリィは肩をすくめた。

「そいつは連中が自分で作りだしたものだからね―― 人類の問題の大半は同じだけど ね。哲学者たちは宇宙は帰納的には動くことができないと仮定するところから始めた――なぜなら宇宙を論理的な法則にまで分解できなかったからだ――実際には宇宙は帰納的に動いていることがはっきりしていたのにね」

「するとわれわれはシミュレータに帰納的になる方法を教えなけりゃならないわけだ」

コリガンが言った。

「じゃ、現実世界の論理は実際にどうやって動いているんだ、エリック」

「九割がたの場合、九割がたはちゃんと動いてるのさ」

シプリィは答えた。

「科学や仕事や戦争や進化が成り立っているのはそのためだ」

「セックス は どう だい」

 ハチャー が たずね た。

「ああ」

シプリィ は にやりと し た。

「 そいつは 今あげたもの全部の具合によるな」

 ハチャーの顔に、何か思いついたような表情が浮かんだ。

「問題は帰納的にする方法をシステムにどうやって教えるかってことじゃないのかもしれないな。つまり自分たちでもどうやっているのか本当のところははっきりわかっちゃ いないとすれば だ、おれたちゃその法則をちゃんと説明できるような立場にはないわけ だろ」

「他に方法があるのかい」

コリガンがたずねる。

「やり方を百八十度変えてみる ってのはどうだ」

二、三秒沈黙があって、他の者たちはこの謎を解こうと頭をひねる。

「そりゃどういう意味だね」

とうとうシプリィが訊いた。

「おれたちが学習するのと同じ方法でシステムにも学習させてみるのさ。システムが作りだした環境の中で実際の人間たちがどうふるまうかを観察させるんだ。EVIEがあれば必要な技術は全部そろってる」

ハチャーは一度口をつぐん だ。それから思いつい たことを膨らませるにしたがい、眼 に見えて興奮しはじめた。

「ある世界の住人が環境に反応しながら進化するかわりに、住人の反応を観察すること で環境のほうが自分を改善することを学習するのさ。言ってることがわかるか――自然 を逆さまにひっくり返すわけだな」

 *このプロセスは、ベイズ推論が再発見されるプロセスそのもの。その一方で「ソードアート・オンライン」の世界においてユイが「他の人間と魂が違う」キリトとアスナを見出したプロセスは、ある意味、これと頻度主義統計学のハイブリッド型だったと推定される(というか、そもそもベイズス異論のプロセスそのものに「(頻度主義における)突出例」を「学習過程」から跳ね除けるアルゴリズムが組み込まれてるとも)。ところで彼女の「ヘタレ分布図」は他のメンバーをどう位置付けているのか? というか彼女、明らかにこの基準に従って「救援隊メンバー」選んだんじゃね?

③そして駄目押しとなったのが「夢」の研究成果の導入。そこで提唱された「解像度補完機能」は「ソードアート・オンライン:アリシゼーション編(2005年〜)」に、「時間感覚加速機能」は「アクセル・ワールド(2008年〜)」にそれぞれ組み込まれる事になる。
*あと「クライマックスでマスター権限を握った登場人物が無双化する」も、重要な継承要素の影響。
J.P.ホーガン「仮想空間計画(Realtime Interrupt、1995年3月、邦訳1999年)」

結合神経共鳴

「これはDSAでつい最近発見したものなんだ。すごく面白いよ――きみにはりわけ面白いと思うけどね、ジョー。ぼくらはこれを結合神経共鳴と呼んでるんだ」

コリガンは眉を上げた。

「というと……」

「脳の内部に複雑な映像を生みだすショートカットさ。ほんのわずか、正確に選んだニューロンのグループに刺激を与えるだけで、一連の連結した映像全体が起動できること を発見したんだよ」

ワイルダーペンフィールドの実験ね、一 九 四 〇年代の」

イーヴリンが口をはさんだ。

「そうだ」

ハンスは認めた。

「ただし、ぼくらの場合はそれを外部からできるんだ」

コリガン に 視線 を もどす。

明晰夢がどれほど驚くべきものになるか、知ってるだろ。イメージ がすごく細かい ところまではっきりしてるんで、自分が眠ってるのかどうかわからなくなることも良く あるくらいだ」

「目が覚めてから五分もしてからようやく自分がまだ目が覚めてないことに気がつくこともあるな」

とコリガン。

「そう、それだよ」

ハンスはうなずいて続け た。

「明らかにその情報は外部から来てるもんじゃない。前からそこに、心の中にあったものだ。偶然に発動したものが互いに関連のあるひとつながりの情報としてはじかれることもある。ぼくらはそれを夢として体験するわけだ―― あるいはそうした発動は不安 や強烈な感情状態といったものによって最近繰り返した行動が素因になっている場合も ある」

「鐘から音が出るのと同じね」

イーヴリンが言った。

「音の複雑さは、鐘の叩き方には関係がないし、鐘を叩く道具にも関係ない。音は元からそこに、鐘の構造の中に備わっている」

「言語もそうだよ」

ハンス が 引き取る。

「言葉は単にコード体系でしかなくて、聞き手の神経組織の中に生活体験を通じてすでにできあがっている結合の引金を引くだけだ。情報は聞き手の中にあるんだ、語り手ではなく。これはどうやら神経システムの一般的な特徴らしいんだな。」
*この言語に対する考え方、まさにマルキ・ド・サドエドガー・アラン・ポーの研究を通じて「近代詩の父」ボードレールが発見したとされるキダイ文学の出発点でもある。

加速効果

「夢を見るとき、どんな具合か思いだしてください――ときに、何時間も続いたように 思えたことが、目が覚めているときであればほんの数秒でしかないことがありますね。 それと同じ効果を、主要感覚システムの上で入るなら、人工的に作りだせるようになる のです」

「人工的にだと」

パインダーの眉がぴょんと飛びあがった。

「どういうことだね。交流比率を加速することが可能だということか」

 コリガンはうなずいた。

「まさしくそのとおりです。シミュレーション世界での時間を速められるのです。」

「どの程度の加速のことを言ってるのかね」

はっきりと関心を示して、パインダーはたずねた。

「おそらく数百倍の単位です。」

それでもJ.P.ホーガン「仮想空間計画」そのものがベストセラーになった訳ではありませんし2000年代前半に「ソードアート・オンライン」が「発見」される事もなかったのです。「啐啄の機」というのは、本当に重要。