実は神山健治「ひるね姫〜知らないワタシの物語〜(小説版)」、個人的には非常に気になった作品だったりします。多くの賛同者同様、エンディングを眺めながらつい涙ぐんでしまいましたし。むしろだからこそ、この作品に同時につきまとう「違和感」の正体を本気で突き止めようと思い立ったとも。
それで思い出したのが、フランシス・コッポラ監督映画「地獄の黙示録(Apocalypse Now、1979年)」作中におけるとあるエピソード。
.no one has ever looked so dead
国際的に「どうして鉄鉢を尻に敷くんだ」「タマを守る為だよ」のやりとりで有名なウィラード大尉の「船旅」に同行する「シェフ」ことジェイ・ヒックス(演Frederic Forrest)。「どうして自ら(戦わなくて済む)炊事兵の座を投げ出して、(最前線に投入される)実戦部隊への転属を願い出たんだ?」と問われ、こう答えてます。
海軍のやり方にどうしても我慢ならなくなったからさ。確かに世界最高峰の軍隊だけあって集まってくる食材も最高峰。だが奴等、何の芸もなくそれを「ごった煮」にするだけなんだ。正直、毎日が料理人としての良心に対する挑戦だったよ…
*何でも「ごった煮」文化…軍隊食あるあるネタで、歴史上に数多くの足跡を残してきた。例えばイスラム教団大遠征(7世紀〜8世紀)との関連が指摘されているトルコ料理「シャクシュカ(Şakşuka)」、南フランス料理「ラタトゥイユ(ratatouille)」、イタリア南部のシチリア島料理「カポナータ(caponata)」、スペイン料理「エスカリバダ(Escalivada)」。そしてマジャール人の侵攻(9世紀〜10世紀)との関連が指摘されているハンガリー料理「釜煮グヤーシュ(ハンガリー語: bogrács gulyás、ドイツ語: Kesselgulasch、ハンガリー風シチュー)」の世界。*関東大震災(1923年9月1日)に際しての炊き出しが「おでん」や「お好み焼き」の全国普及の発端になったという逸話もこれに準じる。「すいとん」の歴史もこれに重なる。すいとん - Wikipedia
*アメリカ人は「シェフ」がニューオリンズ出身である事からスペイン料理やフランス料理と縁が深いケイジャン料理を連想するらしい。要するに(スペインバレンシア地方の「パエリア」が起源と目されている)ジャンバラヤ(jambalaya)や(フランス漁師の賄食「ブイヤベース」が起源と目されている)ガンボ(Gumbo)などの世界。
*王侯貴族や高級聖職者が(庶民との「距離のパトス(Pathos der Distanz)」確立を求めて)美食を追求するのは、ある種宿命すら帯びている。これに対峙してきた「駄菓子ノリ=B級グルメの世界」の特徴は「少しでも美味しいごった煮」を追求する点にあるのかもしれない。そう考えた時に「シェフの義憤」はまた特別な意味を帯びてくる。
ドアーズの歌の歌詞、カーツ大佐が残した走り書きのメモ(Drop the Bomb. exterminate Them ALL)、自分の息子たちに伝えてほしかったこと、そこから筋をつなげていけば、ラストの宮殿爆破はカーツが作った狂気の王国をすべて消滅させてくれというカーツの願いを叶えたものだという結論にたどり着く。
ドアーズの歌もそこにつながる内容だ。
それが自然な物語りの流れであり、登場人物と台詞から繋がる意志の表れだ。そう解釈するのが極めて自然だ。
そしてここに「親子の葛藤」を巡る新たな展開が見て取れる訳です。
*欧米では「魔法少女まどか☆マギカ」最終回放映日(2011年4月22日)において、親世代が「この物語は間違っている。この展開ならまどかママが、まどかもほむらも殴り倒して自らが魔法少女となって特攻すべきだった」「この重要な局面において、まどかパパは何をやってた?」と問い掛けた。それに対して子世代は「ママ、いつまで自分が自分が人生の主役のつもりでいるの?」「まどかパパの悪口をいう人間は許さない!!」と叫んで対抗した。正直、こういう部分での煮詰まり具合において日本は「周回遅れ」なのかもしれない。
*親子双方に「華」を持たせようとした結果が、どっちも特攻して果てる「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(Rogue One: A Star Wars Story、2016年)」だったのかもしれない。この物語において何重にも描かれた父親と娘の関係ときたら…
こういう展開において過去史の掃き溜め送りとなったのがジョン・ミリアス監督・オリヴァー・ストーン脚本映画「コナン・ザ・グレート(Conan the Barbarian、1982年)」における冒険者コナン(アーノルド・シュワルツェネッガー)と魔術師タルサ・ドゥーム(「エクソシスト2(Exorcist II: The Heretic、1977年)の呪術師」「ダース・ベーダーの中の人」ジェームズ・アール・ジョーンズ)の擬似親子関係にも相似した葛藤とも。
*その一方で「スター・ウォーズ/フォースの覚醒(Star Wars: The Force Awakens、2015年)」に登場した「ファースト・オーダーに少年兵として徴用され、人間性の一切を奪われたストーム・トルーパー脱走兵フィン(Fin)」にこの構図へのオマージュを見る向きもある。
*映画「アミスタッド(Amistad、1997年)」撮影時、黒人奴隷役のアフリカ系俳優が自分達を拘束する鎖の物理的重さに精神的に押しつぶされかけてた時、ジョージ・ルーカス監督が「何を気に病んでいるのです? その重い鎖ですら食い止められなかったのが、貴方達の先祖達の自由への渇望だった訳でしょう? 先祖達を誇りに思うなら、本物の役者なら、その熱狂を、狂気を観客に伝えるのです!!」と発破を掛けたエピソードを思い出す。「まず目の前の貴様から真っ先に血祭りに挙げてやる、このユダ公め!!」「(嬉しそうに)その目を待ってたんです。さぁカメラ、スタート!!」。良い意味でも悪い意味でもこれが剥き出しのアメリカ、ウイリアム・ブレイク言う所の「全てを磨り潰す碾き臼」なのである。
*こういう展開あっての「我々を軽蔑し抜いて会話を拒絶した相手を再び交渉のテーブルに戻すには、まず殴り倒さねばならない」なるダンディズムなのであり、その最新例が「未来を花束にして(Suffragette、2015年)」という次第。
要するに所謂「カリフォルニア映画学校閥(南カリフォルニア大学とUCLA(University of California Los Angeles)卒業生を中心とする人脈編)」は、1970年代末〜1980年代初頭に「究極的には家父長制権威威主義が最後に辿り着く破壊衝動の大元は自殺願望なのではないか?」なる「事象の地平面」に到達してしまった様です。
ちなみに国際SNS上の関心区間は米国での封切りを皮切りに今頃、新海誠監督映画「君の名は」がそれなりにブレイク中。
*ただ正直、原作発表段階で「回覧数5桁の嵐」を達成してる「聲の形」超えは難しくなってきた感も。
'your name.' Earns US$2.4 Million After 1-Week Run in North America: Funimation opened Makoto Shinkai's film in… https://t.co/5nE939TLW3 pic.twitter.com/yKSBtQwcfZ
— Aurao ビリビリ♪ (@Auraoo) 2017年4月17日
So we don’t forget. Let’s write our names on each other.
Ramen!! Ramen!! Ramen!!
For someone who loves me because I am me…
Pork Katsu - Kimi no Na wa