諸概念の迷宮(Things got frantic)

歴史とは何か。それは「専有(occupation)=自由(liberty)」と「消費(demand)=生産(Supply)」と「実証主義(positivism)=権威主義(Authoritarianism)」「敵友主義=適応主義(Snobbism)」を巡る虚々実々の駆け引きの積み重ねではなかったか。その部分だけ抽出して並べると、一体どんな歴史観が浮かび上がってくるのか。はてさて全体像はどうなるやら。

【1970年代若者文化の解釈違い】「ドラキュラ72」と「デビルマン」の思わぬ並列関係

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Netflixでの「デビルマン Cray Baby」放映やその是非を巡る論争もあってか、はてなブログアクセス解析によれば以下の投稿の参照数が伸びている様です。
*実際検索されてるのは「ハレンチ戦争」の方とも?

ああ、でもまだ忙しくて「デビルマン Cray Baby」見れてない…

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正直に打ち明けます。子供の頃、最初にTVでこの作品を見た時残った印象は「わお、アルカー(ALUCARD)を逆読みすると『DRACULA』になるんだ(棒読み)」というただそれだけでした(ちなみにこのネタの初出は「夜の悪魔(Son of Dracula;1943年)」)…そういう人、結構多いんじゃないですか?

ドラキュラ'72(DRACULA A.D. 1972 ,1972年)

1872年9月18日、ローレンス・ヴァン・ヘルシングピーター・カッシング)は仇敵ドラキュラ(クリストファー・リー)との死闘の末に相打ちとなる。その後、現場に謎の男が登場。ドラキュラのリングと死の灰をこっそり持ち去る。

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それから100年後の1972年。ヴァン・ヘルシングの孫ヘルシング教授(ピーター・カッシングは相変わらず吸血鬼ハンターを本業としつつも、表面上は冴えないオカルト研究家として老齢を迎えていた。彼の唯一の楽しみは目に入れても痛くないほど可愛がってる孫娘ジェシカの成長(両親がどうなったかは不明。彼が親代わりに育ててきた)。しかし孫娘は時流に流されて完全にヒッピー化し、家業を蔑ろにして夜遊びに夢中になっていた。危うしヘルシング家、存続の危機!!

ヘルシング教授「どうだい、今夜久し振りに一緒に食事でも」ジェシカ「やーよ。友達と約束があるもの」。お定まりのやり取りの後、街に繰り出すジェシカと遊び仲間達。そこへ遊び慣れてそうな美貌のイケメンが近付いてくる。「最近もう面白い遊びなんて全然ないよね。でもまだちゃんと先があるんだぜ。一緒に限界越えてみる?」。ジョニー・アルカー の名乗るこの美青年の提案に、リーダー核でジェシカの彼氏のボブも大興奮。もしジェシカがちゃんと祖父からオカルト知識を伝授されてたら、アルカー(ALUCARD)を逆読みすると『DRACULA』になると気付いていた筈なのに…

語り口調からみて、どうやらアルカーは反政府活動で相応の実績を有するテロリストっぽい。それを知って遊び仲間一同はさらに大興奮!! 「わお、そりゃ確かにますますクールだぜ!!」。期待にますます胸を膨らませる一同が案内されたのは謎めいた教会の廃墟で、遊び仲間のローラを「生贄役」として怪しい儀式が始まる。「…我は招く不和を招く地獄の公爵…」「あれ、これ何か想像してたのと違くね?」。今更の様に自分達の間違いに気付いてあわてて逃げ出す一同。しかしアルカーが行っていた「ドラキュラの灰に自分の血液を混ぜて注いでドラキュラ伯爵を復活させる儀式」は見事に成功。面白半分に生贄役を引き受けたローラはあっけなく第一犠牲者となってしまうのだった。

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*「わお、そりゃ確かにますますクールだぜ!!」…これ1960年代後半から1970年代後半にかけて世界中で、無軌道な青春を送りつつ密かに新左翼運動を心情的に応援してた若者達にとっては普通の反応。石原慎太郎原作の「狂った果実(1956年)」に感動したフランスのゴダール監督が撮影した「勝手にしやがれ(1959年)」や「気違いピエロ(1965年)」が国際的ヒットとなった結果生まれた新世代で「俺達に明日はない(1967年)」や「イージー・ライダー(1969年)」や「日活ニューアクション(1970年~1971年)」に自分を重ねて暴れ回ったものである。

*一方当時は日本や欧州の共産党が相次いで議会制民主主義への適応と暴力革命の放棄を宣言し、暴れ足りない若手層が分離して「老人が寝言を言い出した。痴呆症か? スターリン主義自己批判に着手したとはいえソ連では未だに共産党一党独裁が続いてるし、中国では毛沢東の主導する文化大革命が大成功を収めてるじゃないか!! 老害地上から一刻も早く消え失せろ!!」と言い出し所謂「新左翼運動」を開始した時期でもある。とはいえ最初から一枚板ではなく「既存左翼」との抗争より互いに殺し合う内ゲバを優先してあれよあれよという間に自滅。「それでも純真な若者の暴走に罪はない」と宣言した事で当時国際的に圧倒的支持を受けたのがゴダールの「中国女」と「日活ニューアクション」にも何作か送り込まれた若松孝二監督作品なのだった。しかし当時の日本では彼らが銀行強盗や工事現場からのダイナマイト盗難や拳銃を手に入れる為の交番襲撃を日常的に行う様になり「よど号ハイジャック事件(1970年)」「山岳ベース事件(1971年)」「あさま山荘事件(1972年)」まで引き起こして急速に一般国民からの同情を失っていく。「今すぐ答えが欲しい若者達の無軌道にしか見えない暴走に罪はない」という日活ニューアクションのスローガンも、その終焉とともに滅びざるを得なかったのだった。

翌日になってローラの遺体が発見される(「ヘルシングの孫娘」ジェシカも大概だが、「ドラキュラの灰を持ち帰った一族の末裔」ジョニーも詰めが甘い!!)。警察が被害者ローラの周辺を調べると彼女の遊び仲間の中にジェシカの名前が発見された。マレー刑事が叫ぶ。「これはいつも警察の捜査に協力して頂いてるヴァン・ヘルシング先生の孫娘!!」。それで早速刑事達がヘルシング教授に話を聞きにいく。

その頃、ジェシカの遊び仲間のゲイナーもあっけなく吸血鬼の餌食となり、あっさりジョニーに騙されたジェシカの彼氏ボブもドラキュラの子分にされた後であっけなくポイされていた。その一方でヘルシング教授もあっけなく今回の事件の首謀者であるジョニーを捕縛(とにかく詰めが甘い!!)。早速十字架でグリグリしたり、手鏡下反射した日光を浴びせたりする壮絶な拷問が始まる。「ぐぇー、げぼ、うげげげげっ、どばぁ」。彼が白状した内容からヘルシング教授はドラキュラ伯爵の真の目的が彼の孫娘ジェシカと判明。冷酷にもシャワーを浴びせてジョニーに止めを刺すヘルシング教授。おのれドラキュラ伯爵!! 決して許してはおかぬ!!

祖父の教えにならって銀のナイフやら聖水を用意してドラキュラ復活の儀式が行われた廃墟教会に乗り込むヘルシング教授。かくしてジェシカを拉致したドラキュラ伯爵との宿縁の一騎打ちが始まる。ヘルシング側は杭を突き立てた落とし穴を掘ってそこに落としてやろうという作戦だったが、ドジを踏んであっけなく見破られてしまう。しかし用意した聖水をジャーとかけたら、おののいて自ら穴に転落していった。偶然にもクイが心臓にブスリ。今度の闘いはヘルシング家側勝利となったのだった…

一般に「デビルマン(1972年~1973年)」の内容との重なり具合がしばしば指摘されてる作品。記憶が正しければ永井豪本人がその事実を認めた証言はないのですが…要するに国際的に「無軌道な若者」の風俗が重なっていて、彼らをどうやって劇場に誘き出したり、漫画読者として確保するか当時なりに考えた結果が「エロスとバイオレンスの(当時なりの考え方に基づく)てんこ盛り」だったという事実は動きません。

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①国際的には割と「ジョニー・アルカー =飛鳥了」が常識になってる感があり、それ故に「飛鳥了は元来単なる序盤の案内役に過ぎず、本来は早めにあっけなく死んでしまう役だった予定だったんだけど、思わぬ方向に育って作者も吃驚」という永井豪当人の発言が極めて重視されている(それ故に「それなら序盤で被るあの変な被り物はどこから来たのか?」という議論も活発だが…御免、それ日本人も知らない)。

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②とにかくクリストファー・リーピーター・カッシングといった古株組に対して、自ら罠に突っ込んで自滅していく若者達が馬鹿で愚か過ぎる。明らかにそれまでの若者偏重トレンドに対する意趣返しであり、そうした「大人の手の平返し」に呆れた永井豪は「ススムちゃん、大ショック」を発表し、トミー・フーバー監督はこれをニューシネマ時代に流行したアメリカ南部ゴシック小説の定番キャラ「田舎に潜んで旅行者を待ち受ける殺人鬼一族(一応は実話がモデル)」と結びつけて「悪魔のいけにえ(The Texas Chain Saw Massacre;1974年)」を撮影したともいわれている。

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③その一方で英国人は「スターウォーズ」シリーズでピーター・カッシングに続いてクリストファー・リーも悪役とされた事を根に持ち「スターウォーズにおける帝国とは大英帝国の事であり、共和国とはアメリカの事で作品自体が復讐戦なのだ」などと言い出す。アレックス・ギネスに続いてユアン・マクレガーも「主人公の引き立て役」に回された事も確執を強めた。

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いずれにせよ以降の展開は全く別物に…

新ドラキュラ 悪魔の儀式 (The Satanic Rites of Dracula、1973)

ロンドン。スパイ容疑の謎の組織に潜入していた一人の国家情報員が証拠のマイクロフィルムを残して息絶える。やがて国家の中枢を担うVIPを悪魔崇拝へ導く組織の正体が明るみになる中、国家情報局の相談役として一連の経緯を聞かされたオカルト学の権威ヴァン・ヘルシング教授は、一味のリストに名を連ねる学友のもとを訪れる。
*「かくして汝は深き奥の名もなき怪物達に呼ばれたり…未知の領域を徘徊する内的秘密に接し…冥界神ハデスの世界に降り立ち…」

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やがて浮上してきたのは新種の腺ペスト菌を使った国際的犯罪計画。情報局と警視庁の合同捜査によってフリーメースンもどきの堕落した権力者達を操る吸血鬼達の存在を炙り出すうちに浮上してきたのは、2年前にヘルシング教授がドラキュラ伯爵と死闘を繰り広げた市街地の教会跡地に社屋を構える謎の巨大企業の存在だった。ロンドン警視庁の警部マレー(マイケル・コールズ)の「人類が滅亡すれば、伯爵(クリストファー・リー)の餌食も居なくなってしまうのでは?」と指摘されてヘルシング教授は伯爵の真意にたちまち気付く。永遠の寿命に飽きた伯爵は、自らの人生を終わらせて安息を得る為に人類を滅ぼそうとしているのだ…むろんその計画は本拠地に踏み込んだヘルシング共助の活躍で未然に防がれる。

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*ところで今回、ヘルシング教授の片腕に成長した孫娘ジェシカを演じるジョアンナ・ラムレイは「女王陛下の007 (1969年)」にも出演しており、この時も細菌テロに巻き込まれている。こうした大量殺戮兵器で世界が滅びかけるのが当時の定番ネタだったのである。
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 ジョニー・アルカーは明らかに若者達を捨て駒として利用する事しか考えていませんでしたが「飛鳥了サバトに誘った意図」はずっと不明のまま(というより原作者自身が白状してる様に「この時点では考えてなかった」)。こうした設定上の穴が飛鳥了が生き延びた上に重要キャラに格上げとなった最大の理由とも。

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いずれにせよ「デビルマン(1972年〜1973年)」でも「マジンガーZ(1972年〜1973年)」でも、年長者がイニチアシブを取って敵まで倒してしまうのではなく、主人公に力だけ与え「未来は若者のもの。どうするか自分で決めろ」と判断を委ねたのが一つの時代の突破口になったのです。そして、こうした動きが「グレートマジンガー(1973年〜1975年)」「UFOロボ グレンダイザー(1975年〜1977年)」と4年に渡るブームに結びつく展開に…
*一方、ハマープロが次に社運を賭けたのは「これからの映画業界は非白人系の移民が牽引する」なるビジョンに基づいた「ドラゴンVS.7人の吸血鬼(The Legend of the 7 Golden Vampires 七金屍/七屍金、1974年)」だったのである…
ドラゴンVS.7人の吸血鬼 - Wikipedia