諸概念の迷宮(Things got frantic)

歴史とは何か。それは「専有(occupation)=自由(liberty)」と「消費(demand)=生産(Supply)」と「実証主義(positivism)=権威主義(Authoritarianism)」「敵友主義=適応主義(Snobbism)」を巡る虚々実々の駆け引きの積み重ねではなかったか。その部分だけ抽出して並べると、一体どんな歴史観が浮かび上がってくるのか。はてさて全体像はどうなるやら。

グレイテスト・ショウマン観てきました② ヒュー・ジャックスマンにとっての「深淵からの帰還」?

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グレイテスト・ショーマン(The Greatest Showman、2017年)」…要するにこの作品は21世紀版の「ファントム・オブ・パラダイス(Phantom of the Paradise、1974年)」や「ロッキー・ホラー・ショー(The Rocky Horror Picture Show、1975年)」や「トミー(Tommy、1975年)」として鑑賞されるべき作品とも見て取れる訳です。

ただし進入角が深い(コメディなる糖衣を被せてない)分だけ「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている」ジレンマも深まっているのでした。

  ①そもそもの発端はトーキー映画時代が到来した「ユニバーサル・モンスターズ(Universal Monsters)」成立期にまで遡る?

  • 当時の様々な試行錯誤のうち、不幸にも徹底拒絶を受けたのがトッド・ブラウニング監督映画「Freaks(1932年)」。路線としてはH.P.ラブクラフト「死体蘇生者ハーバート・ウェスト(Herbert West–Reanimator、1922年)」同様に「視野外に追いやられた者達の逆襲」を描く。 

    ハーバート・ウェスト(Herbert West) - Wikipedia

    ラヴクラフトの小説「死体蘇生者ハーバート・ウェスト(Herbert West–Reanimator、1922年)」において初登場した不道徳な医学者。その後、他のクトゥルフ神話のキャラクター同様、別のフィクション作品にも登場。この作品においてウェストが所属する架空の大学「ミスカトニック」も初登場した。

    • 死者蘇生実験を研究し、死者に対する恐れを抱かない人物として描かれるマッドサイエンティスト。上記の作品において唯一の友人とされる人物の助手が語り部として彼の行動を読者に解説する体裁を取る。
      *助手の本名は不明。物語は彼の一人称で語られる。17年間、共に人体蘇生の実験を取り組んでいた。ウェストが友人と呼べるのは助手だけ。助手の両親はイリノイに住んでいる。ウェストの実験に最初は興味を持っていたが、次第にウェストの実験に恐怖し、そして己もまた実験体とされる危機を感じはじめていた。ウェストの失踪後、ボストン警察に尋問を受ける。

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    • 体格は、小柄、金髪、薄い青い目をしており、眼鏡を掛けている。物静かな印象を受けるが、鋭敏な頭脳の持ち主。ミスカトニック大学医学部に在籍時に人工的に死を克服することが可能であると公言したことや、後述する蘇生実験から、教授や周りから嫌われていた。

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    • 実験の過程でついに人間で実験を行おうとしたが、ミスカトニック大学医学部長アラン・ハルゼイから実験の禁止を言い渡されたので助手の手引きでミドウ・ヒルにあるチャップマンの所有する廃屋を手に入れ、ボストンや大学から(カモフラージュをつけて)道具を持ち出した。しかし新鮮な死体を求めて警察や病院を訪ねたが空振りに終わる。代わって共同墓地で防腐剤を撒かれていない死体が埋められたことを聞いて掘り出し実験した。1度目は、失敗し、2度目は、処方液を変えようと考えていたが死体が突然復活して叫びだしたため逃げた。

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    • その後は、経験の恐怖から一時中断したが、実験を再開するために大学に死体を提供することを頼んで断られた。最後の夏季講習でアーカムチフスが蔓延し、大学に多くの患者が運ばれたため、どさくさに紛れて死体を盗み解剖室に持っていって実験したが、死体は、復活せず焼却した。8月にハルゼイが過労死し、その死体を使って実験したところ肉体のみが復活し、知性が戻ることはなかった。

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    • 医師免許を獲得した後、コテージで外科医として医療所を開き、繁盛したそのかたわら、近くにあった墓地から新鮮な死体を取ってきては実験をしていた。裏ボクシングで黒人バック・ロビンソンが死亡した際、事態のもみ消しを条件に死体を引き取り実験したが、復活の予兆もなく墓に入れた。しかしロビンソンは、墓からよみがえって子供を襲い、ウェストは「彼」を射殺した。

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    • 1910年7月、助手がイリノイに帰っている間にウェストは、人工鮮度保存法を知り、セント・ルイスのローバット・リーヴィットと町中で出会った際、彼が突然心臓発作で倒れたことで新鮮な死体を入手した。1910年7月18日の夜にリーヴィットの死体を使って実験し、復活したが絶叫して再び死亡した。この時、一時的に復活したリーヴィットの口からウェストがリーヴィットを薬で殺害していた事が判明。

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    • 1915年に第一次世界大戦の最中、死体入手のために死体蘇生術の弟子モーアランド卿の手引きにより、助手と共に軍医として従軍。助手は、フランドルのカナダ連隊所属の大尉となった。3月の夜にそのモーアランド卿が飛行機でサンテロワに移動中、対空砲を浴びて墜落。他の死体は酷いが、モーアランドの死体は新鮮なものだったので、首と胴体を切り離して実験に使ったが、ドイツ軍の空爆で失敗に終わった。しかし助手は、空爆の直前、蘇ったモーアランドの首が叫ぶのを聞いていた。
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    • 戦後、ウェストと助手は、ボストンの墓地近くの怪しげな地下室がある館に住み実験を繰り返した。この時に召使を雇っている。ある日ウェストは、助手と共に新聞でハルゼイが入院させられているセフトン精神病院に蘇生された一団がやって来て、それらがハルゼイを救出したという記事を見て恐怖した。そしてウェストの館にモーアランド卿の首が入った箱が届く。ウェストは、箱を地下で焼却したが、その夜に地底からモーアランド卿の胴体に率いられた死体たちが現れてウェストを八つ裂きにし、そして蘇生させて地底に連れ去った。

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    その後、世間ではウェストの失踪に助手が関与したと疑っている。そして助手も抗弁もできぬまま、己が狂気で幻覚を見たのか、それとも正気でいつか死体たちが再来するのかを、どちらにしても恐れている。

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    *ここで興味深いのが国際SNS上の関心空間においては「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」の映画版「ゾンバイオ/死霊のしたたり(Re-Animator、1985年)」は「 フランケンフッカー(FRANKENHOOKER、1990年)」とセットで語られる事が多い点。

    最低映画館〜フランケンフッカー

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    あの『バスケットケース』のフランク・ヘネンロッター(FRANK HENENLOTTER)の商業監督第4作。同じく「奇想の映画監督」として知られるラリー・コーエン(『悪魔の赤ちゃん』等)同様にニューヨーク在住の異端児。かくしてニューヨークという場所はキチガイの吹きだまりであることを知る。

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    電動芝刈り機の誤作動のためにバラバラとなった恋人を蘇らせようと研究に励む発明青年。足りない部品を売春婦=フッカーで補い、恋人をフランケンシュタインとして再生する。

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    ところが、売春婦の部品を使ったものだから、彼女も売春婦=フランケンフッカーになってしまい、ビリビリビリと放電しながら、客を爆発させるのであった.....。 

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    この映画の見どころは容赦ない人体破壊描写であろう。さながらスポンティニアス・コンバッションの如く、6人の売春婦が次から次へと様々な形態で爆発し、バラバラになる様は圧巻で、まるでシュルレアリスム絵画を見ているようだ。

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    ラストには様々な形態の畸形人造人間が大挙出演し、いったいどうしたらこんな奇妙な映像を思いつくのやら、監督の正気を疑った。

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    *これだけハチャメチャな内容でも一応は「死体蘇生者」の筋書きをなぞっているのが興味深い。そして当時の映像化の興味深い点は、ラブクラフトの原作が(他の作品にも多々見られる様に)マッドサイエンティストと(なぜか逃げ出したり告発しようとしない)その助手のブロマンス形式なのに対して「マッドサイエンティスト=内向的青年」という単一人物構造を選択している点。その意味合いにおいてはスティーヴンソン「ジキル博士とハイド氏の奇妙な事件(The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde、1885年執筆、翌1886年出版)」やジョージ・ウェルズ「透明人間(The Invisible Man、1897年)」といった(その自業自得性の強さと科学技術への耽溺によって「狼男」系列とは区別される)二重人格 / 人格変容物の系譜にも位置付けられる。

    フリークス (Freaks、1932年) - Wikipedia

    旅回りの見世物小屋が舞台で、出演者は実際の見世物小屋のスター、デイジー&ヴァイオレット・ヒルトン姉妹などの本物の奇形者や障害者であった。公開当時は世間に大変なショックを与え、ブラウニングは本作以降の仕事に恵まれず、彼のキャリアを閉ざすものとなってしまった。また、イギリスでは公開から30年の間、公開禁止となっていた。

    日本公開は1932年(昭和7年)11月、初公開時のタイトルは『怪物團』であった。2005年にはデジタルリマスター版がリバイバル上映された。

    1994年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録され、アメリカのフィルム遺産としてアメリカ議会図書館に保存されている。

    日本の音楽ユニットのALI PROJECTが2012年に発表した楽曲「凶夢伝染」のミュージック・ビデオには、本作の一場面が使用されている。

    あらすじ

    フランスの曲馬団の一員である小人のハンスは小人の曲芸師のフリーダと婚約していたが、美貌の軽業師のクレオパトラに魅せられてもいた。ハンスが親戚からの莫大な資産を相続することを知ったクレオパトラは金目当てに彼を誘惑し、クレオパトラに眩まされるままハンスは彼女との結婚を決めてしまう。婚約者を奪われて悲嘆にくれるフリーダを、一座の仲間のフロソとヴィーナスは心配して慰める。

    実はクレオパトラは一座の怪力男のヘラクレスと通じており、結婚式のあとにハンスを毒殺する計画を進めていた。結婚式の祝宴でクレオパトラはハンスと一座の見世物仲間を侮辱し、彼女の真意を知ったハンスは悔恨にくれる。自分たちに対する侮辱と併せて毒殺計画を知ったフロソとヴィーナスをはじめとする一座の仲間たちは激怒し、逃げるクレオパトラを追い詰めて罰を下す。

    やがて、ハンスは曲馬団を離れて資産家になったが、失意とフリーダへの罪の意識から沈うつな生活を送っていた。しかし、フリーダはハンスを許して彼と結ばれる。そして、クレオパトラには仕置きのあとに恐ろしい運命が待っていたのだった。

     

  • 同様の際どい内容を含みながら、あえて筋書きを「感動のヒューマンドラマ」に仕立てメインストリームで強引に押し通したのがデヴィッド・リンチ監督映画「エレファント・マン(The Elephant Man、1980年)」だった。

    「エレファント・マン(The Elephant Man、1980年)」 - Wikipedia

    イギリス・アメリカ合作映画 。デヴィッド・リンチ監督、脚本。メル・ブルックスがプロデューサーとして参加している。

    19世紀のイギリスで「エレファント・マン」と呼ばれた青年ジョゼフ・メリックの半生を描いている。最優秀作品賞、主演男優賞などアカデミー賞8部門にノミネートされた。
    ジョゼフ・メリック(Joseph Carey Merrick、1862年〜1890年) - Wikipedia

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    あらすじ

    19世紀のロンドン。生まれつき奇形で醜悪な外見により「エレファント・マン」として見世物小屋に立たされていた青年、ジョン・メリック(ジョン・ハート)。肥大した頭蓋骨は額から突き出、体の至るところに腫瘍があり、歪んだ唇からは明瞭な発音はされず、歩行も杖が無ければ困難という悲惨な状態だった。

    ある日彼を見世物小屋で見かけた外科医、フレデリック・トリーブス(アンソニー・ホプキンス)は興味を覚え、研究したいという理由で持ち主のバイツ(フレディ・ジョーンズ)から引き取り、病院の屋根裏部屋で彼の様子を見ることに。

    はじめは白痴だと思われていたジョンだったが、やがてトリーブスはジョンが聖書を熱心に読み、芸術を愛する美しい心の持ち主だということに気付く。当初は他人に対し怯えたような素振りを見せるジョンだったが、トリーブスや舞台女優のケンドール夫人(アン・バンクロフト)と接するうちに心を開いていく。

    詩篇23篇 - Wikipedia

②「視野外に追いやられた者達の逆襲」のさらなる大源流は以下の作品群に求められるが、メアリー・シェリー「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス(Frankenstein: or The Modern Prometheus、1818年)」の段階に至ってなおそれは(その力の解放が核兵器の様に自らを滅ぼしかねない)人類の愚かさの顕現として描かれるだけに過ぎなかったのである。

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*その意味は真の大源流はアイスキュロスの悲劇「縛られたプロメテウス(Prometheus vinctus、紀元前5世紀)」にまで遡るとも。

「縛られたプロメテウス(Prometheus vinctus、紀元前5世紀)」 - Wikipedia

アイスキュロス作のギリシア悲劇ギリシア悲劇は三部作で上演されるものであるため本作はその第1編であり、この後に「解放されたプロメーテウス」「火を運ぶプロメーテウス」の2編が続いてプロメテウス三部作を構成するものと考えられている。一方『火を運ぶ~』を三部作の冒頭に持ってくる意見もある。

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  • これらとは別に『火を点けるプロメーテウス』と言う作品もあるが、こちらはペルシア人競演の際のサテュロス劇『プロメテウス』だとされており、「プロメテウス三部作」には含まれない。いずれにせよこうした作品は散佚し、現代には僅かに断片のみが伝わるだけである。

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  • この作品は後の時代の無名の脚本家の作で、アイスキュロスの作ではないという説もある。上演年代についても不明で、『テーバイ攻めの七将』、『オレステイア』の間に上演されたとする説、晩年の460年代とする説の他、紀元前478年以前とする説などがあげられるが、『オレステイア』(紀元前458年)より後の晩年の作品としたり、死後の他者の手によるものとして紀元前440年代-紀元前430年代の上演とする見方が有力である。

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メアリーの夫で詩人のパーシー・シェリーも長詩「鎖を解かれたプロメテウス(Prometheus Unbound, 1820年頃)」を残している。プロメテウスの予見どおりにセーティス(テティス)と結婚したジュピターが息子デモゴーゴンに座を奪われ、ハーキュリーズヘラクレス)がプロメテウスを解放する展開。

また「ヘレニズム」概念を提唱したプロイセンの歴史家ドロイゼン(Johann Gustav Bernhard Droysen、1808年〜1884年)はプロメテウス三部作の復元を試み、これにインスパイアされる形でワーグナーは楽劇「ニーベルングの指環四部作(Ein Bühnenfestspiel für drei Tage und einen Vorabend "Der Ring des Nibelungen"、1848年〜1874年)」に着手した。

*そもそも「奇形や珍獣こそが 神の意図を顕現している」なる発想自体が、キリスト教が伝来する以前から欧州文明に存在していた。「驚異的なものは自然に反しているのではなく、私たちが自然として知っているものに反しているのである(アウグスティヌス)」。

  • 清教徒革命において自由の為に絶対君主たる王と戦った共和派の側に立った詩人ジョン・ミルトンの手掛けた「失楽園Paradise Lost、1667年)」。当時の観点では「被造物」たる天使も人間も「創造主」たる神に勝利し得ない。

    失楽園「失楽園(Paradise Lost)」 - Wikipedia

    楽園喪失、楽園追放とも。旧約聖書『創世記』第3章の挿話で、蛇に唆されたアダムとエバが、神の禁を破って「善悪の知識の実」を食べ、最終的にエデンの園を追放される過程を描く。ユリウス暦1667年にイギリスの17世紀の詩人、ジョン・ミルトンによる旧約聖書の『創世記』をテーマにした壮大な初期近代英語の叙事詩の題名でもある。

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    • ミルトンの「失楽園」はヤハウェに叛逆して一敗地にまみれた堕天使のルシファーの再起と、ルシファーの人間に対する嫉妬、およびルシファーの謀略により楽園追放に至るも、その罪を自覚して甘受し楽園を去る人間の姿を描いている。
      *『失楽園』に対応する作品として『復楽園(楽園回復)』もある。ダンテ・アリギエーリの『神曲』とともに、キリスト教文学の代表作として知られる。

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    • ミルトンは悪魔学の専門家ではなかったが、その当時に見られた悪魔に対する様々な説を総合した独自の解釈を作中に盛り込んだ。ミルトンによる解釈はその後のキリスト教に影響し、殊にルシファーに関する逸話に大きな影響を与えた。ミルトンの詩の中では、ルシファーはヤハウェの偉大さを知りつつ、服従よりも自由に戦って敗北することを選ぶ、一種の英雄として描かれる。

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    本作は清教徒革命のあとで執筆されており、そしてミルトンは共和派、すなわち自由のために絶対君主たる王と戦った側であった。そして革命自体は最終的に王政復古に終わっている。
    *当時は印刷物によるプロパガンダ合戦が政治において重要な役割を果たす様になっていく時期でもあった。ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ(Dracula、1897年)」に登場するドラキュラ伯爵のモデルたるワラキア公ヴラド3世(Vlad III , 1431年〜1476年)が(オスマン帝国と直接戦いたくない)ハンガリー王マーチャーシュ1世(在位1458年〜1490年)の政治的プロパガンダ文書によってスケープゴートに仕立て上げられ「ドラキュラ公(Vlad Drăculea) または串刺し公(Vlad Țepeș / トルコ語: Kazıklı Bey)と呼ばれる悪魔」として後世に悪名を残す展開を迎えたのもこの時代。

  • サン=シモン主義的革命観」に由来するワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環四部作(Ein Bühnenfestspiel für drei Tage und einen Vorabend "Der Ring des Nibelungen"、1848年〜1874年)」や「メトロポリス(Metropolis、1926年)」。ただし前者は「メルヘン王」ルートヴイッヒ2世のパトロネージュを受けて完成にこぎつけた経緯から「ヴァルハラ城の主人たる征服者ヴォータン(Wotan)に対する先住民連合の蜂起」なる展開は音楽的に示されるばかりで具体的描写を伴わず、後者はあくまで「資本家と労働者は同じ生物の異なる器官に過ぎない」なる全体主義的理解から、それを「悪しき扇動者に主導された愚挙」として描くに過ぎない。

    *先住民連合…おそらく「グレイテスト・ショウマン」のコーラス「炎よ!! 洪水よ!!」は「ニーベルングの指環四部作」のクライマックス「ブリュンヒルデの自己犠牲」に由来する。その観点からすれば「炎」は(それまで忠臣の仮面を被って虎視眈眈と復讐の機会を狙ってきた)ロキ、「洪水」は先祖代々伝えられてきた「黄金」を盗まれたラインの乙女達に該当。


  • 暗黒大陸」への接点として南アフリカに築かれたオランダ人と英国人の植民地独特の歴史観に由来するトールキンの「ホビットの冒険(The Hobbit, or There and Back Again、1937年) 」および「指輪物語The Lord of the Rings、執筆1937年〜1949年、初版1954年〜1955年、映画化2001年〜2003年)」。そこに盛り込まれた「それを入手した者全てに等しく不和と破滅をもたらす呪われた富」や「原罪から目を逸らした偽りの繁栄とその崩壊」といった諸概念は下敷きとされた「ニーベルングの指環四部作」において既に盛り込まれていたが、蜂起するのはあくまで「闇の彼方(アフリカ奥地)から光の世界(歐洲文明の世界)を密かに蚕食しようと狙う混沌の勢力」として終始ネガティブに描かれるだけだが「(人間のライバルとして)最終的に勝利する可能性も秘めた存在」という含みも持たされている。

③その一方で1930年代の荒れ果てた世相は「放蕩息子や家出娘の生還を阻むおぞましき現実」なる概念をもてはやさせた。そう、フライシャー・スタジオによってアニメ化もされたキャブ・キャロウェイ「Minnie the Moocher(1930年)」の世界!!

キャブ・キャロウェイ「Minnie the Moocher(1930年)」歌詞

Folks, now here’s the story ‘bout Minnie the Moocher,
おまえたち、さあミニーザモッカー(うろつきミニー、家出のミニー、宿無しミニー)の話をしよう

She was a red-hot hootchie-cootcher, (hooch アル中、cooch 下品な女性 )
彼女は赤毛でホット ホッティクッチャーさ
She was the roughest, toughest frail,
えらい粗暴で、気の強い尻軽で
But Minnie had a heart as big as a whale.
でも、くじらのように大きな心があったのさ

Hi-de-hi-de-hi-di-hi!
Ho-de-ho-de-ho-de-ho!
He-de-he-de-he-de-he!
Ho-de-ho-de-ho!

Now, she messed around with a bloke named Smoky,
彼女はスモーキーってやつを好きになってやつの世話を焼いてまわった
She loved him though he was cokie,
彼はジャンキーだったけどもね


He took her down to Chinatown,
彼は彼女をチャイナタウン(阿片窟)につれていき
He showed her how to kick the gong around.
どうやって鐘を鳴らすか教えたのさ(どうやってヤクをやるのか教えたのさ)

Now, she had a dream about the king of Sweden,
彼女はスウェーデン王の夢があった
He gave her things that she was needin’,
彼は彼女が欲しがったものを与えたよ
He gave her a home built of gold and steel,
金と鋼の家を建ててあげたのさ
A diamond car with a platinum wheel.
プラチナの車輪のダイアモンドカーとね

Now, he gave her his townhouse and his racing horses,
彼は彼女に街の家と彼の馬をあげた
Each meal she ate was a dozen courses;
彼女が食べた食事はどれもたくさん (麻薬?)
She had a million dollars worth of nickels and dimes,
100万ドルほどの価値のある5セント銅貨と10セント硬貨を持っていた
And she sat around and counted them all a billion times.
それで彼女は座って、それを10億回も数えるのさ

Poor Min, poor Min, poor Min.
かわいそうなミニー

④そして「恐ろしいから閉じ込められている(あるいは視野外に追い出されている)異形」のイメージはウォルト・ディズニー映画「ダンボ(Dumbo、1941年)」における「息子を守ろうとして暴れ、狂ってると判断されて檻に閉じ込められてしまったダンボの母親ジャンボ」などにしっかり継承される。

*もちろん「サーカスのジャンボ」といえばP.T.バーナムのサーカスの目玉だった巨象を指す。

⑤こうした恐ろしげなイメージの延長線上に幻想派米国SF作家シオドア・スタージョンの「夢みる宝石(The Dreaming Jewels、1950年)」や「人間以上(More Than Human、1953年)」辺りの世界。鬼頭莫宏ヴァンデミエールの翼(1996年〜1997年)」藤田和日郎からくりサーカス(1997年〜2006年)」のモデルとなったレイ・ブラッドベリ「何かが道をやってくる(Something Wicked This Way Comes、1962年、映画1983年)」の世界。この系譜を一貫して支えてきたのは「永遠に続くサーカス」を支える壮絶な形でのショウマンシップ。

あらすじ

ホーティという名の孤児の少年がいる。あまりに残虐な里親の虐待から逃れるため、ある日突然家出を決行する。唯一の持ち物は赤ちゃんの頃から一緒のボロ人形。たまたま町に寄っていたカーニヴァルのメンバーたちの目に止まり、“畸形”を売りにする見世物小屋に拾われる。

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彼の一生を左右する出会いが、この時に始まったのだった…

あらすじ

手を触れないで物を動かせる少女、瞬時に姿を消せる双生児、恐るべき記憶力をもつ不良少年、すこしも成長せずにコンピュータのように知識を蓄えていく赤ん坊。この奇妙な5人が25歳の白痴の男の周囲に集まったとき、彼らはゲシュタルト生命を形成して高次な存在となる。
石ノ森章太郎サイボーグ009シリーズ(1964年〜)」の元ネタとも。

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ひとりひとりでは中途半端な彼らも、6人がその力を結集すれば、人類を破滅に導くほどの恐ろしい力を発揮できるのだ。彼らは個々の人間であると同時に、単一の生物でもあり、白痴がこの有機体の頭脳であった。超存在の誕生と成長を描くユニークなアメリカのSF。
*そして最終的に彼らは「標準的な良識の持ち主であるアメリカ人」を新たな仲間として加える事で完成する。

ジムとウィルは隣同士の仲良し。ジムは10月31日午後12時の1分前に生まれ、ウィルは1分後に生まれるという奇運のために兄弟のようなのだ。現在は14歳になる直前。本人は大人の仲間入りのつもりで、はた目には子供とかわらず、無鉄砲で、臆病で、孤独に直面しておびえていて、しきりに仲間を求める微妙な年頃。

そういう重要な年齢の秋。避雷針のセールスマンがやってきた。そしてジムとウィルの家に大人がいないのを知ると、無償で避雷針を取り付けるように勧める。そこには古代の文字やアイコンが彫られていたが、夜の嵐で壊れてしまう。

その翌日、町にサーカスがやってきた。ジムとウィルはさっそく深夜にサーカスに忍び込む。そしてサーカスの団長が回転木馬に乗り、逆に回転するのを目撃。回転するごとに中年の団長は若くなり、12歳の子供に戻ってしまう。団長の目に邪悪なものが潜んでいるのを見つけて、彼らは震えあがる。

子供に戻った団長は彼らの先生の家に甥という名目で寄宿していた。その翌日、先生(ミス・フォレー)が町から失踪。ジムとウィルは甥が言葉巧みに先生を誘い込み、回転木馬に乗せたのだと知る。そして10歳の少女にされ、行くところをなくし、サーカスの団員にされてしまったのだ。そうしてみると、サーカスの矮人は避雷針のセールスマンそっくりだった。団長が回転木馬に乗って年を戻しているのを見つけた少年たちは配電盤に飛びつくが操作がわからない。その結果、回転木馬は暴走し、150歳の老人になってしまった。それを発見したもうひとりの団長ダークが少年たちに復讐を誓う。街に危機が迫るが、そのことに気付いた大人はいない。少年たちの証言を大人達は取り上げない。

ここに彼らの言を聞く雄一の大人が現れて物語が一気に加速する。ウィルの父チャールズで図書館員。39歳の晩婚で現在54歳の初老。人生に倦み、生きる価値を見いだせないでいる無気力な男。それが図書館で千万の怪奇物語と古い新聞を読み漁り、サーカスが太古から人間の生きる力を奪い取り、<無>を人々に蔓延させることで生き延びる太古の怪物であることを知ったところから、彼は変わる。

少年と父のもとには魔女が、刺青男が送られ、彼らを拉致しようとする。ついにはジムがさらわれ、父の左手首が砕かれる。最終決戦は、サーカスの奇術ショー。ダークが声を張り上げ、大人たちの沈黙する中、手首を負傷した父チャールズが観客席から舞台に上がる。…孤立無援の中、彼らには何が残されているのか…

*そしてレイ・ブラッドベリのオムニバス小説「刺青の男(The Illustrated Man、1951年)からクライブ・バーカー「血の本(Books of Blood、1984年〜1985年)」へ。

「刺青の男(The Illustrated Man、1951年)」- Wikipedia

9月上旬のある日、「わたし」は全身に美しい刺青をした男と出逢った。男は見世物小屋で働いているのだが、夜になると絵が動き出して未来のことを予言するので、すぐ仕事をクビになってしまうのだという。刺青は50年前の1900年に「未来から来た」という老婆に彫ってもらったのだが、老婆は未来へ帰ってしまった。男の右の肩甲骨には絵が描かれていないが、だれかが永く眺めていればその人の一生があらわれるという。すみきった夜。月あかりのなか、刺青の絵がひとつひとつ順番に動き出した…

超心理学者のメアリが霊能力者のサイモンを雇い、ある幽霊屋敷で霊界の存在を証明する実験に着手する。実験が進むうち、やがてサイモンの皮膚が裂け、死者の言葉が血文字となって浮かび上がりる様になる…

*こうした物語は怪談「七人ミサキ」のバリエーションでもある。Show Must Go on!!

七人ミサキ - Wikipedia

高知県を初めとする四国地方中国地方に伝わる集団亡霊。

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災害や事故、特に海で溺死した人間の死霊。その名の通り常に7人組で、主に海や川などの水辺に現れるとされる。

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七人ミサキに遭った人間は高熱に見舞われ、死んでしまう。1人を取り殺すと七人ミサキの内の霊の1人が成仏し、替わって取り殺された者が七人ミサキの内の1人となる。そのために七人ミサキの人数は常に7人組で、増減することはないという。

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⑤こうした一連の流れの集大成ともいうべき「ロンドン / ニューヨーク商業至上主義物」としては「タイムズスクェア(Times Square、1980年)」辺りがひとまずの嚆矢となる。

  • 「タイムズスクェア(Times Square、1980年)」において描かれる商業至上主義は、いわゆる「東海岸物」とも「西海岸物」とも違う、むしろ「ロンドン物」に近い独特の雰囲気を漂わせる。

    あらすじ

    何かと問題を起こしては精神病院送りにされる反抗心の塊たるニッキーと、完璧主義者たる父親の統制化で繊細な心を病んでいたパメラが心療内科の病室で邂逅する。
    *社会的に成功したパメラの父親には、当初娘の苦悩が「高額の治療費さえ注ぎ込めば治療可能な難病=神が自分に与え賜もう新たな試練」としか感じられなかった。その意味ではこの物語は彼が「娘の自然」を受容するに至る成長物語でもある。


    二人は手を取り合う様に脱走を果たし、”スリーズ・シスターズ(がらくた姉妹)”と名乗り、パンク・ファッションに身を包んで自作の曲を歌い「高層ビルの屋上からテレビを落とすパフォーマンス」などによって若者達からカルト的人気を勝ち取る。その流れを後援したのは「面白いものなら何でも応援する」もう一人の主役、ディスクジョッキーのジョニー(『ロッキー・ホラー・ショー』のティム・カリー)だった。
    *時はまさに「金を産むものなら何でも歓迎する」商業至上主義が「カルト界の王子」デビッド・ボウイ、及び「エレファント・マン(The Elephant Man、1980年)」のデヴィッド・リンチ、「バットマン (Batman、1989年)」のティム・バートン、「スパイダーマン(Spider-Man、2002年)」のサム・ライミといったカルト映画監督などをメインストリームに引き上げ、マドンナやシンディ・ローパーの「フェミニズム路線」を応援した時代。だがこうした狂乱状態を商業側から統括しようとしたザック・スナイダー監督映画「エンジェルウォーズ(Sucker Punch、2011年)」は無残な失敗に終わる。 むしろ商業至上主義のこういう残酷な側面は「デス・レース2000年(Death Race 2000、1975年)」や「バトルランナー(The Running Man、1987年)」の方がきっちり描けていた?

    *日本においてはこうしたデス・ゲームの系譜は高見広春バトル・ロワイアルBATTLE ROYALE、1999年)」や川原礫ソードアート・オンラインSword Art Online、Web小説としての公開2002年〜2008年)」に継承され、スーザン・コリンズ「ハンガー・ゲーム(The Hunger Games、2008年2010年)」大ヒットという形で逆輸入を果たす展開を迎える。

    しかしながら今この瞬間を刹那的に生きるエネルギーに溢れたニッキーに、パメラは少しずつズレを感じ始め、最終的別離に至る。それはパメラは父親との和解を果たし、ニッキーは自分に熱狂する支持者達の懐に飛び込む形で為されたのだった…
    *まさに「事象の地平線としての絶対他者を巡って社会が繰り返す黙殺・拒絶・混錯・受容しきれなかった部分の切り捨てのサイクル」そのもの。

    *今から思えばある種(1950年代以降米国を席巻した)再版家父長制を「(父親に憎しみながら依存する神経症的な)息子側」から告発した「アメリカン・ニューシネマ(New Hollywood)」に対するレクイエム的側面もあったのかも。

  • この観点から再考すると「グレイテスト・ショーマン(The Greatest Showman、2017年)」は以下の様な物語として解読される事になる。

    あらすじ

    異世界への転生】良家出身でニューヨーク演劇界において相応の成功を収めてきた劇作家フィリップ・カーライル(演ザック・エフロン)は、評論家に酷評されつつ相応の商業的成功を収めてきた天才興行主P.T.バーナム(演ヒュー・ジャックスマン)から演出家にスカウトされる。当初は金尽くの契約で、ショウにも出演しない約束だった。
    *こうした「資本主義から距離を置いて高潔な立場を保ちたい衝動と商業至上主義の間に生じる葛藤」が描かれてこその「ニューヨーク商業至上主義物」という次第。だからニューヨークはパンク・ロック発祥の地ともなる。
    パンク・ロック - Wikipedia


    異世界からの再生】最終的に家族との平和な暮らしを望んだバーナムは引退。一方、サーカス団員で有色人種のアニーを見初めたカーライルはサーカス興行主の座を継承する。
    *「生還」…とはいえ「タイムズスクェア」と異なり「現実世界に復帰する人間」が逆転している。まるでマヌエル・プイグの小説「蜘蛛女のキス(El Beso De La Mujer Araña / Kiss of the Spider Woman、原作1976年、映画化1985年)」の様に。

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⑥ちなみに1960年代から1980年代にかけての大道芸人/サーカスのイメージはこんな感じ。見た目こそ華やかだが、内側に何かおぞましい要素を秘めているという感じ。

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The Doors「People are Strange(1967年)」歌詞

People are strange when you're a stranger
人々に異質さを感じる。それは他所から迷い込んだとき。
Faces look ugly when you're alone
誰もの表情が歪んで見える。それは一人孤独なとき。
Women seem wicked when you're unwanted
女が意地悪に思える。それは必要とされていないとき。
Streets are uneven when you're down
道がでこぼこで険しく思える。それは沈んだ気持ちのとき。

When you're strange faces come out of the rain
よそ者であるとき、雨の中、ひょっこり見知らぬ顔が現れる。

When you're strange no one remembers your name
よそ者であるとき、誰も名前を思い出してくれない。

When you're strange, when you're strange
よそ者であるとき…よそ者であるとき…

When you're strange
よそ者であるとき…
*バンド名はオルダス・ハクスリーが18世紀の詩人ウィリアム・ブレイクの詩の一節から取った書のタイトル『知覚の扉(the doors of perception)』を元に「ドアーズ」と定められた。「もし知覚の扉が浄化されるならば、全ての物は人間にとってありのままに現れ、無限に見える(If the doors of perception were cleansed, everything would appear to man as it truly is, infinite.)」。

*1967年に鮮烈なデビューを果たすも1969年以降、メインボーカルだるジム・モリスンのライブにおける奇行が目立つ様になり、1972年に謎の死を遂げる。

*そして丸尾末広花輪和一の残酷絵リバイバルを経て「新世紀エヴァンゲリオンNeon Genesis EVANGELION、TV版1995年〜1996年、旧劇場版1997年〜1998年)」の綾波レイへ。

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⑦「舞台と現実の狭間」なる概念について語るには、バレエをモチーフとして国際的ヒットとなった「プリンセスチュチュ(Princess Tutu、アニメ2002年〜2003年)」も忘れられない。「語り部ドロッセルマイヤーの恐るべき悪魔の囁き。「作者は作品が面白くなる事を最優先に考えねば。その過程で登場人物がどれほど酷い目に逢おうが負い目を感じてはいけない。その作品が世間に受け入れられねば共倒れなのだ」。
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⑧いずれにせよ、おそらく「ロンドン / ニューヨーク商業至上主義物」として直系の源流に当たるのはクリストファー・ノーラン監督映画「プレステージ(The Prestige、2006年)」となる。

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*登場人物が追求するのが単なる商業主義的成功だけでない辺り「ロンドン / ニューヨーク商業至上主義物」の面目躍進といったところ。

「プレステージ(The Prestige、2006年)」 - Wikipedia

過去の因縁によって互いに競い合う2人のマジシャンを描くサスペンス映画。クリストファー・プリーストの1995年の小説『奇術師』を映画化した作品。主役である二人のマジシャンにはヒュー・ジャックマンクリスチャン・ベールが配役され、第79回アカデミー賞では撮影賞と美術賞にノミネートされた。
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クリスチャン・ベールマイケル・ケインは『バットマン ビギンズ』に続くクリストファー・ノーラン監督作品への登板。その他、スカーレット・ヨハンソンデヴィッド・ボウイアンディ・サーキスが出演。

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あらすじ

19世紀末のロンドン。「教授(プロフェッサー)」アルフレッド・ボーデン(演クリスチャン・ベール)はライバルである「偉大なるダントン(グレート・ダントン)」ロバート・アンジャー(演ヒュー・ジャックマン)の瞬間移動マジックを調べるため、彼のマジックの最中に舞台下に侵入する。するとアンジャーはボーデンの目の前で、2人にとっていわくつきの水槽に落ちて溺死。そばにいたボーデンはアンジャー殺害の容疑で逮捕される。

遡ること数年前。若きアンジャーとボーデンは、ある奇術師の下で互いに修行していた。ある時、助手であったアンジャーの妻が水中脱出マジックに失敗し溺死する。その原因はボーデンが結んだロープであった。2人は決裂し、アンジャーは復讐のためにボーデンの手品を失敗させ、ボーデンは左手の第4・第5指を失う。以後、2人は互いの邪魔をしながら激しく競い合うようになる。

  • 「グレイテスト・ショウマン」冒頭がオマージュに捧げられている可能性の高い場面においては「偉大なるダントン」としてのヒュー・ジャックマンの以下の様な独白が被る。「ステージに立つ都度僕は新たに生まれ、ステージが終わる都度僕は死ぬ。ならば現実世界に戻ってくるこの僕は一体誰なのか」。ここにもある種の「異世界への転生と現実世界への再生を巡る物語」が埋め込まれているという次第。

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こうした予備知識をもって望んだので「グレイテスト・ショウマン」の第一所感も「ヒュー・ジャックスマン、今度は生きて帰ってきた(代わりに一人置き去りにされたけど)」といった感じになったのです。

多くの人間が「平凡な粗筋」と指摘しますが、これだけの地雷を全て回避して「家族が一番大事」なる無難な着地点に主人公を辿り着かせたのはむしろ天才の仕事とも(代わりに一人置き去りにされたけど)。そして、上掲した一切の暗部を切り捨て、ブレーキを一切踏まずアクセルのみを踏み抜いたこの恐るべき主題歌である…

[Verse 1: Hugh Jackman]
Ladies and gents, this is the moment you've waited for (woah)
淑女と紳士の皆様、これがあなたがずっと求めていたものだ
Been searching in the dark, your sweat soaking through the floor (woah)
暗闇の中で探しながら あなたの汗が床に浸っている
And buried in your bones there's an ache that you can't ignore
そして無視できない痛みがあなたの骨の中に埋まるんだ
Taking your breath, stealing your mind
息を飲んで あなたの心を盗む
And all that was real is left behind
そして全ての現実は取り残されてく

[Pre-Chorus: Hugh Jackman]
Don't fight it, it's coming for you, running at ya
争うな あなたのために来ているんだ
It's only this moment, don't care what comes after
この瞬間 そのあとのことなんて気にするな
Your fever dream, can't you see it getting closer
あなたの熱病が近づいてくるのが見えないのかい?
Just surrender 'cause you feel the feeling taking over
降伏するんだ だってあなたは支配されてくように感じてる
It's fire, it's freedom, it's flooding open
これは炎 自由だ 洪水がおきるぞ
It's a preacher in the pulpit and you'll find devotion
演台にたっている宣教師をあなたは信仰するだろう
There's something breaking at the brick of every wall it's holding I'll let you now, so tell me do you wanna go?
どの壁の中にも壊れているレンガはある だから教えてくれ、君は何処に行きたいんだ?

[Chorus: Ensemble & Hugh Jackman]
Where it's covered in all the colored lights
色とりどりの光が隠された場所
Where the runaways are running the night
家出人たちが夜を駆け抜ける場所
Impossible comes true, it's taking over you
不可能なことが叶うんだ 君を支配する
Oh, this is the greatest show
これは史上最高のショーなんだ
We light it up, we won't come down
灯をつけたら もう降りてこないよ僕たちは
And the sun can't stop us now
太陽も僕たちを止めることなんてできない
Watching it come true, it's taking over you
君は夢が叶うところを目撃する 君を支配していくだろう
Oh, this is the greatest show
これは最高のショーだからね

[Verse 2: Hugh Jackman]
(Woah) colossal we calm these renegades in the rain
巨大だけど穏やかな雨の中にいる裏切り者
(Woah) where the lost get found in the crown of the circus king
迷子だった者ががサーカスの王になっている場所

[Pre-Chorus: Ensemble & Hugh Jackman]
Don't fight it, it's coming for you, running at ya
抗うな 君のためにこのショーはある
It's only this moment, don't care what comes after
今だけのことだ 後のことは気にしないんだ
It's blinding outside and I think that you know
Just surrender 'cause you're calling and you wanna go
外が明るい理由を君は知っているだろう
周りに囲まれている だって君は呼んでいるんだ、そして行きたいんだろ!

[Chorus: Ensemble & Hugh Jackman]
Where it's covered in all the colored lights
色とりどりの光が隠されているところ!
Where the runaways are running the night
家出人が夜に逃げてくる場所へ
Impossible comes true, intoxicating you
不可能は現実に 君を酔わせてくれる
Oh, this is the greatest show
これは最高のショーなんだ!
We light it up, we won't come down
僕たちが燃え上がったら もう落ちていくことなんてない
And the sun can't stop us now
あの太陽でさえも僕たちを止められないさ!今なら!
Watching it come true, it's taking over you
君は夢が叶う瞬間を見れるんだ 君を支配してくれるさ!
Oh, this is the greatest show
だってこれは史上最高のショーなんだから!

[Post-Chorus: Zac Efron & Keala Settle]
It's everything you ever want
これがあなたが今まで欲しかったもの
It's everything you ever need
あなたが必要にしてたものなの
And it's here right in front of you
今そこにあなたの目の前にある
This is where you wanna be
ここがあなたのきたかったところでしょ
It's everything you ever want
欲しかったものがあるところ
It's everything you ever need
あなたに必要だったものがあるところ
And it's here right in front of you
いまあなたの手に届くところにあるわ
This is where you wanna be
あなたがなりたいものになれる場所よ
This is where you wanna be
あなた自身になれる場所

[Chorus: Ensemble, Keala Settle & Zac Efron]
When it's covered in all the colored lights
色とりどりの光が隠れている時
Where the runaways are running the night
家出人が夜に逃げている時
Impossible comes true, it's taking over you
不可能は可能に! あなたを支配する
Oh, this is the greatest show
これは最高のショーだ!
We light it up, we won't come down
僕たちが本気を出したらもう降りてこないよ
And the sun can't stop us now
太陽も僕たちに勝てない
Watching it come true, it's taking over you
見ていると叶う あなたを支配してくれる
This is the greatest show
これは最高のショー!

When it's covered in all the colored lights
色とりどりの光が隠れている時
Where the runaways are running the night
家出人が夜に逃げている時
Impossible comes true, it's taking over you
不可能は可能に! あなたを支配する
Oh, this is the greatest show
これは最高のショーだ!
We light it up, we won't come down
僕たちが本気を出したらもう降りてこないよ
And the walls can't stop us now
あの壁も今は僕たちを止めることはできない
Watching it come true, it's taking over you
見ていると叶う あなたを支配してくれる
This is the greatest show
これは歴代史上最高なショー!

[Bridge: Zac Efron & Zendaya]
'Cause everything you want is right in front of you
だって、あなたの欲しいものはあなたの目の前にあるわ
And you see the impossible is coming true
見たでしょ、不可能なことが叶う瞬間が
And the walls can't stop us (now) now, yeah
あの壁だって私たちを隔てることはできないの

とっさに脳裏に浮かんだのが「1980年代ハリウッド青春搾取映画」代表作の一つ「ストリート・オブ・ファイアー(Streets of Fire、1984年)」の主題歌「Tonight Is What It Means To Be Young(邦題「今夜は青春」)」の歌詞。

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*「和訳」とは一体如何なる疑念なのか…


全体像を俯瞰してみると、むしろ作品全体が口当たりを良くする為の糖衣に過ぎず、この苛烈なプロパガンダ曲が本編だったという気すらしてきますね…