劉慈欣「三体(2006年)」を読んで強く感じたのは、それに先駆けて発表されたマイケル・クライトンの晩年のテクノロジー小説の影響。
マイケル・クライトン(Michael Crichton、1942年〜2008年) - Wikipedia
「プレイ -獲物-(Prey、2002年)」は科学やテクノロジーの発展に警鐘を鳴らす話で、特にナノテクノロジーを問題にしている。この小説では比較的新しい科学技術の成果である人工生命、創発と複雑性、遺伝的アルゴリズム、知的エージェントなどを扱っている。
「恐怖の存在(State Of Fear、2004年)」は、エコテロリズムによる大量虐殺を描いている。テーマは地球温暖化と気候変動で、クライトンは付録の中で地球温暖化と科学の政治化について論じている[16]。疑似科学と政治が結びついて起きた不幸の実例として、優生学とホロコースト、ルイセンコ論争を挙げている。この小説は初版で150万部を売り上げ、ベストセラーとなった。
環境問題についての見方への批判
「恐怖の存在」では、近年の“過剰な環境保護ブーム”を「環境保護利権」等が煽っている「危険な疑似科学」であるとして批判した。するとそれまで“権力や科学文明の暴走に警鐘を鳴らす作家”としてクライトンを評価していた読者、団体、メディアの多くが一斉に、“クライトンは右派に転向した”と非難の声を浴びせたという。例えば気象学者 Jeffrey Masters は『恐怖の存在』について、この本は地球温暖化について間違った説明をしていると書いている。
また、クライトンは南極の気温が1986年から2000年にかけて下がっているとしているが、その出典となったのはピーター・ドランがネイチャー誌2002年1月号に発表した論文である。ドランは2006年7月27日のニューヨーク・タイムズにて、「マイケル・クライトンは小説『恐怖の存在』で地球温暖化への反証として我々の成果を間違った形で使っている」と述べている。アル・ゴアは2007年3月、「地球は温暖化している (has a fever)。もしあなたの赤ん坊に熱があったら医者に行くだろう。……医者が処置が必要だと言っているのに、『そんなことは問題じゃないというSF小説を読んだから、結構です』とは言わないだろう」と述べた。これは一般に『恐怖の存在』を指した発言と見られている。
そう、当時は国際的にリベラル層の暴走開始期に当たり、それに反するあらゆる動きに「極右」のレッテルが貼られていく(そのプロセスを通じて左翼勢力が団結しカルト宗教化していく)時代でもあったのです。
今回の地上波初放送に際しても、この筋の人達はやはりこういう話を繰り返すばかり。
#この世界の片隅に が地上波初放送。何度見てもすごい。原作では、朝鮮の太極旗のコマのあと、すずさんが「暴力で他の国を従えてきたから暴力に屈するのか。それが日本の正体か」と泣き崩れる。 #韓国 中国、台湾、フィリピンはじめ東南アジア諸国を日本が暴力でねじ伏せてきた歴史を忘れてはいけない
— 望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI) August 3, 2019
「三体」既読の方は、こういう人達が作中でどう扱われてるか既に御存知だと思います。そう「敵側に利用されるだけ利用され、邪魔になったらまとめて始末される」お手軽使い捨て人材。こうした非情の設定もまた「米国におけるサバイバル文学の大ブーム」同様に2000年代独特の空気の貴重な証言だったりするのですね。