諸概念の迷宮(Things got frantic)

歴史とは何か。それは「専有(occupation)=自由(liberty)」と「消費(demand)=生産(Supply)」と「実証主義(positivism)=権威主義(Authoritarianism)」「敵友主義=適応主義(Snobbism)」を巡る虚々実々の駆け引きの積み重ねではなかったか。その部分だけ抽出して並べると、一体どんな歴史観が浮かび上がってくるのか。はてさて全体像はどうなるやら。

【コロナ禍】「中世を終わらせた黒死病」という考え方について。

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 こういう御時世下ではどうしても「欧州はどうやって黒死病の流行を乗り越えたのか」に意識がむいてしまいいます。

ー「危機によって社会が崩壊するのでなく、危機が訪れた時には既に社会が崩壊していた事実が発覚するのだ」という論理が当てはまる、世界を変えた歴史上の出来事はありますか?

人口の40〜60%が犠牲になった地域もある、1300年代中期のペスト流行が挙げられる。当事者にとっては大惨事のように思えただろう。しかしペスト流行に至るまでのヨーロッパの状況を見ると、既に進行していた多くの問題がパンデミックをきっかけに加速したことがわかるだろう。

1200年代の終わりから続く長期的な景気後退の末に、黒死病の流行が訪れたのだ。それ以前のヨーロッパは「商業革命」による経済の全盛期で、遠距離の貿易が瞬く間に広がり、より多くの貨幣が流通し、経済は成長し続けた。しかしこの経済成長は、人口の増加に支えられたものだった。ヨーロッパ全体を見ると、この時期に人口が倍増したり3倍にまで膨れ上がった地域もあった。

そうして13世紀(1200年代)の終わり頃には、農耕に使用できる土地はほとんど残っていなかった。じめじめして起伏があり農業に適さないような土地ですら、耕作に使われる状態だった。ただ、賃金が極端に低い人々を農業に使えた。多くの人々は自分の土地を持たず、ギリギリの生活を送っていた。土地を使わせてもらう代わりに領主に対して無償でサービスを提供しなければならないという交換条件が、当時盛んだった農奴制度を支えていたのだ。

気候的な要因もある。経済の全盛が長く続いた背景には、穏やかで暖かい天候があったのだ。種まきと収穫の時期さえわかればよい農夫にとって、天気良いかどうかというよりも、先の天気がどうなるか予測することの方が重要だ。しかし1200年代の終わりから1300年代初頭にかけて、天候が非常に悪くなった。天気が予測しにくくなり、雨が多く気温も下がった。さらに1315年〜1322年には西ヨーロッパを「大飢饉」が襲い、数え切れないほど多くの人々が亡くなった。その時点で、何らかのシステム的な誤りの兆候が現れていたと言える。そしてこの状況が黒死病の大流行まで続いたのだ。

ペストが大流行する以前の1340年代中期、ヨーロッパ全土を支えていた歴史上「スーパーカンパニー」と呼ばれる多くの超巨大企業が倒産した。経営が行き詰まった原因はさまざまだが、各企業がビジネスを広げ過ぎたのと、経済全体の不安定さが大きな原因となった。

お金に余裕がない。人口が多い。賃金が低い。地価が高い。これらは全て、これからやってくる最悪の低迷期の予兆と言える。

ーどんなに酷い状況のことを仰っている自覚していますよね?
ワイマンは長い沈黙の後で笑いながら答えた

そう。図式的に説明してみると悲惨な状況に思えるだろう。興味深いのは、多くの人々が亡くなった後ではもちろん経済的な低迷期が訪れるが、長期的に見るとペストは西ヨーロッパの生活環境、特に百姓の生活をかなり向上させた。地価の下落と共に土地を所有できる人が増え、より健康的でバランスの取れた食事ができ、収入も増えた。

しかし深刻な犠牲も伴う。百姓の生活を改善するために、「サノスの指鳴らし訳注:映画『アベンジャーズ』などに登場するキャラクター)」で人口の半分を強制的に消滅させたりしてはいけない。

ー正直に言って、何だか憂鬱な決定論のようです。1330年生まれの百姓は貧乏に育ち、そして恐らくペストに感染して25歳になる前に死んでしまった。一方で1360年に生まれればもっと明るい未来が待っている。これも全て運命だと言えるでしょうか。自分の孫にかつての豊かな暮らしについて語っても、不思議そうな顔をされるだけではないかと心配になりませんか?

ローマ帝国の崩壊は、決して全ての人の生活を悪化させた訳ではなかった。ここが重要なポイントだと思う。巨大国家の終焉が必ずしも人生の悪化にはつながらない。ローマ帝国には深刻な貧富の差があった。ローマ帝国の制度下では、多くの集団が酷い待遇を受けていた。ほとんどの人にとって、人生の価値観を決める基準となる前提条件は存在しない。だからローマ帝国崩壊後は多くの人々の生活水準が高まり、公衆衛生も改善されただろう。さらに、世界中で食生活も改善されたと思う。

とはいえ通常は、政治システムが崩壊すると生活も悪化するものだ。大国は、より良い生活のため、或いはさまざまな面で有益な政策を実現する。ローマ帝国崩壊後の世界はより荒れていたことを示す証拠もいくつかある。はっきりしているのは、人口が減少する中、地方で暮らす人が増えたということだ。都会の生活から離れ、遠距離同士のつながりが希薄になった。私の博士論文のテーマは、ローマ帝国崩壊後の遠距離コミュニケーションの減少だった。

孫の世代に関しては、気候変動についてかなり心配している。気温が高すぎて夏は外出できず、農作物も育たないのではないだろうか。ローマ帝国崩壊後も似たような状況にあったと推測できる。もしも気候状況が当時のまま続いていたら、今の世界はもっと荒れて混乱していただろう。必ずしも酷い状況になっているとは限らないが、孫の世代に対しては、彼らの想像もつかない全く異なる世界の話を聞かせている可能性もある。

ーしかしあなたは、社会の行く末は予め決められないと主張しています。崩れた社会システムの回復に成功した歴史上のリーダーたちを挙げてください。

ローマ時代に限って言えば、少なくとも2人は挙げられる。共和政ローマの末期(ジュリアス・シーザーの死後)に起きたアウグストゥスマルクス・アントニウスとの争いが決着した時、帝国は無傷のままだった。


さらに興味深いのは、ローマ帝国全体のシステムを混乱させた3世紀の危機だ。この時は気候変動による大干ばつが起きている。干ばつ、飢饉、伝染病が続いた(当時の資料が乏しいため、どれほど酷い状況だったかは知る由もない)。気候変動に伴う災害に加え、経済のメルトダウンや異邦人による侵略が重なった。ローマ帝国は、3世紀に脆くも崩れ去っていたかもしれないのだ。

ところが、混乱した社会システムをどうにか収拾できた皇帝がいる。まずはアウレリアヌスで、それからディオクレティアヌス。彼らは古代ローマのシステムを根本から立て直し、全く違ったシステムを構築した。ローマ帝国の後期は、それまでとは全く異なる様相を呈していた。軍備が強化され、官僚政治による中央集権化が進んだ。帝国には、全体が結束して危機を乗り切るために、大幅なシステム変更が必要だったのだ。それでもその後、数世紀間しか存続できなかった。

ーアウレリアヌスや古代ローマ帝国から、今の私たちは何を学べるでしょうか?

アウレリアヌスから学べる教訓は、混乱を収拾するのに強力な軍人皇帝は必要ないということ。ローマ帝国が上手く危機を乗り切ったのは素晴らしいと考えるのであれば、アウレリアヌスの時代に必要とされたのは時代に合ったスキルセットを持つリーダーだった、というのが教訓になる。ローマ帝国が必要としたのは、冷酷で軍事的な才能が豊かなリーダーだった。現在の私たちが古代ローマ帝国を再現する必要は全くない。ローマ帝国はいろいろな意味で、人々の苦痛と奴隷制の上に成り立つ酷い圧政による社会だった。

しかし現在の私たちが直面する問題を解決するためには、適切なスキルセットを持った人間が必要だ。まず、今まさに起きている大きな問題の対策に国や州のリソースを注ぎ込むため、政治システムの舵取りができるリーダーが必要だ。そして病院に必要な備品が不足していることを認識し、備品を生産・供給する方法を保証できる人間が必要だ。またコロナウイルスの検査が必要になった時は、検査キットの生産・供給・利用を実現できる権限を持った人間が必要とされる。現在の状況では、このような人々が必要とされている。

私たちは、誰が適切なスキルセットを持っているか知っている。特に国や州のレベルになるとさらに明らかだ。スキルセットを持ったリーダーは、多くの命を救うために努力すべきだと思う。今は危機的状況にあると言っても過言でない。対照的なのはオクラホマ州知事だ。自分と家族が外食する様子をツイートした同知事は、彼のツイートを見て外出しようと決めた人々を感染させ、文字通り殺したかもしれない。フロリダ州知事は、春休みで賑わうビーチをなかなか閉鎖しようとしなかった。どんなに酷い対応か表現のしようがない。大人数の集まりを避けることは、ウイルスの感染を防止するのに有効な手段であることは明らかだ。それに反するような行為は、悪事だと言える。

ーあなたがマザー・ジョーンズ誌に寄稿した記事の、最後の部分が気にかかっています。あなたは「未来の歴史家たちは今回の出来事を、本当の転換期が訪れる前に我々を苦しめた問題を解決するチャンスであり、私たちは危機を乗り越えた、と振り返るだろう。今の私たちは、あらゆる場所にさまざまな深さの傷をたくさん負っている。しかし傷口をふさぐには今からでも遅くはないだろう」と書いています。私たちはどうしたらよいのでしょうか?

今回のような状況は、何が有効で何が機能しないかを見極めるチャンスだ。変革のチャンスでもある。現在も危機的状況は続いている。しかし最終的に収拾した時、事態の全体像が把握でき、本当に変化の必要なものが見えてくるだろう。そして今回の危機を、将来へ向けたより回復力の強いシステムを構築するチャンスとしたいものだ。

これが最後ではない。これまで長い間このような危機に見舞われなかったのは、運が良かっただけだ。また危機は訪れるだろう。

まぁ 「ローマ帝国は公式に滅亡する前に既に衰退し切っていたし、中世欧州も黒死病が流行する以前に既に壊滅的状況にあった」自体は、納得のいく推測。

古代ローマ滅亡

欧州中世の終焉

本当の地獄はこれからだ?