今から思えば、そもそも1980年代ポストモダン文化における「既にこれ以上新たなオリジナルは発明されないであろう」なる感傷的ドグマ自体が、以下のムーブメントが射影(Projection)の中心となった時期における一時的直積(Temporary Producted Result)に過ぎなかったといえましょう。
- 1960年代/1970年代における新左翼/ヒッピー運動の敗北と撤退の連続が学生運動世代にもたらした絶望感や停滞感。本物の第一世代はハードロック・プログレ音楽商業化に反感を感じイーグルス(Eagles)「ホテル・カリフォルニア(Hotel California, 1976年)」の歌詞「その様な蒸留酒はもう1969年を境に製造されてません(We haven't had that spirit here since nineteen sixty-nine)」に共感した。
さらなる大流時にはレッド・ツェッぺリン(Led Zeppelin)「天国の階段(Stairway to Heaven, 1971年)」も。要するにハードロック/プログレ文化は始まる以前から終焉の認識に彩られていたとも…
サイバーパンク文学の嚆矢として名高い K・W・ジーター「Dr. Adder(執筆1974年頃、刊行1984年)」にもこの種の終焉感は横溢している。そしてP・K・ディックをモデルとする海賊ラジオ放送者がベルク(1885年 - 1935年)の近代オペラ「ヴォツェック(Wozzeck,1925年)」を流し続ける。サイバーパンク文学における「ミラーグラスのモーツァルト」概念の大源流…
- 電子音楽、とりわけサンプリングとハウス音楽/クラブ文化への傾斜。ただしそのプロセス自体が「メンバー内で次第に求道者路線(坂本龍一)と王道路線(細野晴臣, 高橋幸宏)の軋轢が高まり、最終的に散解に追い込まれたYMO」にも見てとれた様な爆発的内部分裂による分散性増殖傾向を備えており、POPで王道な部分が露出すればするほどその最も闇深い部分が Goth文化として世に放たれていく。セックスアピール強化目的でバットマンスーツに乳首がつき、マイケル・ジャクソンがキャプテンEOや超巨大変形スーパーロボットに扮し、アン・ライスの「ヴァンパイア・クロニクルズ(1976年〜)」を最暗部を代表する吸血鬼レスタトをかのトム・クルーズが演じた価値観錯乱の時代の陰で…
実際には当時文化の終焉など一切起こっておらず、むしろ良きにつけ悪きにつけ坂口安吾「堕落論(1947年)」の背景にあった「肉体に思考させよ。肉体にとっては行動が言葉。それだけが新たな知性と倫理を紡ぎ出す」なるフランス式行動主義が主導した時代だったという側面すら存在した時代といえましょう。
そして(体制側や商業主義側に取り込まれるのを恐れるあまり)実際の行動が一切起こせず、反体制的自尊心を守り抜く為に冷笑だけを続けた怠惰な連中だけがそのムーブメントに乗り損ね、21世紀に守旧派として取り残される展開を迎えたとも。ある意味生存バイアスの最も残酷な側面とも…
かかる無残ながらも美し過ぎるレクイエム、そして「最良解の一つが極東日本で抽出されて生き延び続けていた」衝撃…
ポストモダンはすべての芸術作品は既存作品のパスティーシュだという考えらしいが、それが事実かはともかく、自らの作品にいかなる過去作品への類似を認めない姿勢はただただ傲慢だ。
— 人間ジェネリク (@DividedSelf_94) 2020年5月27日
Honestly it comes across as artists being insecure in their work. As much as artists would like to have unique style and ideas sometimes that shit doesn’t happen.
— Nick Howland (@howland_nick) 2020年5月27日
尾田栄一郎と真島ヒロを比べてみると分かりやすいかもしれない。両者とも絵柄はかなり親しいがそれはどちらかが真似たからではなくふたりとも鳥山明から強い影響を受けたからだ。そして鳥山を形作ったのは大友克洋であるし、その大友を生んだのはジャン・ジローである。「~に似てる」は歴史そのものだ https://t.co/InswZLD6IM
— 人間ジェネリク (@DividedSelf_94) 2020年5月27日
「~に似てる」という感想は文化を体系的に理解しようとする芸術批評の原始的な欲求である。類似性の指摘から文化の歴史は紐解かれていく。一部の絵師の「似てる」ヒステリーはそういった読者の好奇心を殺し批評空間を縮小させる。それこそ慎むべきだ(勿論作者に直接言うか言わぬかの問題はあるが)
— 人間ジェネリク (@DividedSelf_94) 2020年5月27日
例えばアクション・シーンの進化史とかも、ジョン・ウー監督のBallet Timeから始まってこんな展開ですからね。
言いたい事はまだ色々あるけど、とりあえず以下続報…