諸概念の迷宮(Things got frantic)

歴史とは何か。それは「専有(occupation)=自由(liberty)」と「消費(demand)=生産(Supply)」と「実証主義(positivism)=権威主義(Authoritarianism)」「敵友主義=適応主義(Snobbism)」を巡る虚々実々の駆け引きの積み重ねではなかったか。その部分だけ抽出して並べると、一体どんな歴史観が浮かび上がってくるのか。はてさて全体像はどうなるやら。

言語ゲーム(Sprachspiel)としての神話② 北欧神話における「猫馬車を駆る女神」

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以下の投稿でも述べた様に、調べれば調べるほど古代における北欧と地中海沿岸の関係の深さが浮かび上がってくるのです。特に猫。猫が登場したら、それはもう…

フレイヤの猫馬車の謎。

谷口幸男訳/「ギュルヴィたぶらかし」24節

フォールクヴァングというところにて
フレイヤは広間の座席を定める
日ごと女神は戦死者の半ばを選び
他の半ばはオーディンの手に帰す

この女神の広間セスルームニルは広々として美しい。
そして女神は、出かけるときには、二匹の猫をつれて車にのる。
女神は人間の祈願にはよろこんで耳をかすので、貴婦人をフローヴァと呼ぶのは、女神フレイヤという名から由来しているのだ。
女神は恋歌をとても愛好される。だから恋愛問題で祈願するにはうってつけのかたなのだ。

ノルウェージャンフォレストキャット(英Norwegian Forest Cat / 諾Norsk skogkatt) - Wikipedia

非常に古いネコの品種のひとつ。原産はノルウェー、スカンディナヴィア半島を中心とした北ヨーロッパで、非常に寒冷な気候にも適応する長毛種。「メインクーンと長毛種のマン島の猫の先祖である」「人間がトルコから運んできたターキッシュアンゴラと地元のショートヘアーの交配により誕生した」等の説がある。

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ノルウェーではよく知られた存在で、スコグカッテル“Skogkatter”もしくはスコウカッテル“Skaukatter”と呼ばれている。“skog”と“skau”はどちらも「森」に対する言葉で、ノルウェーの方言によって語の形が異なる。また、このネコについてよく知る人は特性から、「ノルウェーの森林ネコ」の意味のノシュク・スコグカット“Norsk Skogkatt”と呼ぶ。

女神フレイヤと牽引する二頭のネコ神話に登場するネコの伝説として、雷神トールでさえ持ち上げる事のできなかったネコの話や、女神フレイヤが車を牽かせるために二頭のネコを用いた話があり、これらのモチーフとして考えられているのがノルウェージャンフォレストキャットである。どちらも体躯の大きさをモチーフとしているように、ノルウェーの厳しい寒さの中で生きていくために厚い被毛を持つ大きな身体へと発達した。雪原を歩くために指の間にタフトを蓄え、これらがかんじきのような役割を果たす。

あえてここでは引用しなかったのですが、そもそも「アース神族 /アサ神族古ノルド語Ás、 Áss、 複数形Æsir エーシル、 女性形:Ásynja、 女性複数形:Ásynjur、 古英語:Ós、 ゲルマン祖語再建形:*Ansuz)」はアジア(アナトリア半島)経由でドニエプル川下流に移住し、そこに先住していた(フレイやフレイアの所属するヴァン神族を従えたとされています。そして「アース / アサ神族」なる呼称自体、古代インド=ペルシャ神話におけるアスラ(阿修羅)神族やゾロアスター教最高神アフラ・マズダー (Ahura Mazdā)と同語源と考えられているのです。

北欧神話は、なぜギリシア神話と似ているのか

最初に北欧、ゲルマン民族の神話とギリシア神話を比較したのは、ローマ人タキトゥスだろう。

彼によって「ゲルマーニア」という書物が書かれたのが、紀元後1世紀(正確には98年とされている。「歴史」が出版されたのが105年)。「エッダ」と呼ばれる書物が書かれるより、はるか千年も昔のことだ。

ローマは勇敢なゲルマン人を傭兵として雇っていたし、ゲルマン民族の移動によって国土を脅かされる関係でもあった。それなりに、興味は持っていたのだろう。

だが、この興味はあくまで「自分たちが上」と、いう立場のもので、ゲルマン人は北の異民族、文字も持たぬ連中という認識であったようだ。ことさら意識して偏見を持たなくとも、完全に理解できたとは言いがたい。なにしろ、情報化された現代でさえ、いまだに日本といえばゲイシャ・フジヤマだと思っている欧米人がいるくらいだ。

ゆえに、最古のゲルマン資料である「ゲルマーニア」が、北欧人たちの信仰を正確に表しているとは思えない。勘違いや、理解に浅い部分も、あるだろう。

しかもタキトゥスは、どういうわけか、エジプトのイシス女神まで引っ張り出してきて北欧神話と比類している。

最高神オーディンのことか?)をヘルメスと呼んだり、スエービー族の女神がイシス女神になったりで、そのまま信用してしまうと、どこぞの三流オカルト雑誌の連載のようにも思える。しかも、タキトゥスは、その神に対するゲルマン人の呼称は一切書いていない。

タキトゥスがヘルメスと呼んだ神はオーディンである、というのは定説となっているが、彼は、オーディンという名も、それに似た名前も、書いていないのである。また、その神に関する詳細な信仰や性格についても、言及されていない。

と、いうことは、その神はオーディンによく似た別の神かもしれないし、オーディンだが未だオーディンという名前では呼ばれていなかったかもしれないし、よく知られている、ルーン文字の発明者や戦死者の父という属性を持たない状態のオーディンだったかもしれない。

この事情を知らずに、ギリシア神話と比較した説を鵜呑みにして語るのは、ちょっとばかり神話への愛が足りない。

実際に帝政ローマ時代の記録に見られる「北欧神話の原型」は以下。

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  • 最高神テュール(Tyr)…語源的には古代インド=ペルシャ神話体系におけるディーヴァ神族(天部衆)の流れ、すなわちギリシア神話のゼウス (Ζεύς) やローマ神話のユーピテル (Jupiter: 原型はDieu pater) といった「天空神=最高神」に由来。そして詳細は不明だがその時代のゲルマン人諸族の王を意味する語は、ティワズの祭司を意味するティウダンス (thiudans) であった。

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  • 北欧を含むゲルマン地域の農民階級の間で崇拝されていた雷神・農耕神としてのトール(Thor;ソー)…当時はオーディンと同格以上の地位にあり、 スウェーデンにかつて存在したウプサラ神殿(トール、オーディン、フレイの3神の像があった)でもトールの像が最も大きく、真ん中に置かれていた。

    ウプサラの神殿 - Wikipedia

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  • タキトゥス『ゲルマーニア』における「ゲルマン人が最も崇拝する神もまたメルクリウス」という記述…これは古代ローマにおいて既にゲルマン神話における風神あるいは嵐神(天候神オーディンウォーダン)を知恵と計略に長けるメルクリウスと同一視する傾向が見られた事を示唆している。そもそもフェニキア神話に文化英雄として登場する(別名をメルクリウスともエジプト人ヘルメスともいう)ヘルメス・トリスメギストスは、ヨーロッパでもヘルメス主義を象徴する神話的人物であるが、ヨーロッパ中世およびルネサンス期において、錬金術の考案者にして諸学と技芸の祖であるとされ重ねて考えられた。

    ヘレンニオス・ピローン(Herennios_Philon)断片集

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  • アース神族と闘い、後に和解して人質として差し出されるヴァン神族のニョルズとその息子フレイ(Frey「男主人」の意)および娘フレイヤFreya「女主人」の意タキトゥスの『ゲルマニア』に記述がある「ガリア人の大地の女神ネルトゥスNerthusとその双子の息子と娘」を起源と見る向きが強い。ちなみにフェニキア人やギリシャ人の足跡は彼らの全盛期から既にマルセイユなどの南仏沿岸地域にまで届いており、その結果「トリスタンとイゾルデ」の様な中世騎士道物語にテセウス伝承の影響が残っていたりする。また「ユングリング家のサガ」によればアース神族との戦争後、その人質となったヴァン神族出身のフレイは3代目スウェーデン国王となり(ちなみに一代目がオーディン、二代目がフレイの父ニョルズ)豊作の続く「フロディの平和フロージの平和)」をもたらし、その末裔が彼の本名「ユングヴィ」を継承して名家ユングリング氏族を名乗りスェーデン王室となったという。

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その一方で「曜日」の概念が整理されていく過程での神話の影響が以下。

  • 火曜日

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    英語のTuesdayはローマ神話の軍神(すなわちギリシャ神話の軍神アレス)と同一視された「勇敢なる隻腕」北欧神話の軍神テュール(Tyr;想定されるゲルマン祖語はティワズ (Tiwaz) ) 。

    何時の間にかオーディン最高神の座を譲り渡し古代インド=ペルシャ神話体系ではライバル関係にあるアスラ神族(阿修羅衆)の流れ、すなわちアース神族の一員とされる事に。

    タロット・カードの「塔」に描かれる雷文は「神の怒り」を表すとされる。

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  • 水曜日

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    ロマンス諸語では(ギリシア神話における神々の伝令使ヘルメースと同一視された)ローマ神話における商人や旅人の守護神メルクリウスの日であり、ゲルマン諸語ではオーディンの日(英語:Wednesday)とされる(オーディンは英語ではOdin(オーディン)Woden、 Wodan (ウォウドゥン)、ドイツ語ではWotan、 Wodan (ヴォータン、ヴォーダン))。

    ちなみにオーディンが隻眼なのは片目を対価として支払う事でその水を飲めばあらゆる知識が手に入るというユグドラシルの根元にあるミーミルの泉ミーミルの泉の水を飲んだからで、さらにルーン文字の秘密を得る為にユグドラシルの木で首を吊り、グングニルに突き刺されたまま、九日九夜、自分を最高神オーディン(つまり自分自身)に捧げ続けたが、縄が切れて助かったという伝承もある(この逸話にちなんで、オーディンに捧げる犠牲は首に縄をかけて木に吊るし槍で貫くという)。かくして気付くとアース神族最高神に。

    タロットカードの大アルカナ XII 「吊された男」は、このときのオーディンを描いたものだという解釈も存在する。

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  • 木曜日

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    英語 Thursday は、北欧神話において神々の敵たる巨人と対決する戦神トール(Thor;ソー)からきている。ドイツ語Donnerstagも同様である。

    元来はオーディンと同格以上の神格だったが、やがて戦士階級の台頭によってオーディンの息子の地位に甘んじる様になった。かくして自動的にアース神族の一員に。

    タロット・カードの「運命の輪」が表すのは「善悪の共存がもたらす好機の到来」である。

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  • 金曜日 

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    英語のFriday は、北欧神話オーディンの妻フリッグFrigg)のアングロ・サクソン形Frigeの日に由来するとも、同じく北欧神話におけるヴァン神族の女神フレイヤフレイヤ(Freya、 Freia、 Freyja) の日から来ているとも言われ、ゲルマン諸語でも北欧神話に因む。また、ラテン諸語ではローマ神話の女神ヴィーナスの日を意味する(例:イタリア語のVenerdì)。

    そういえば古代神話において主神ゼウスの妻ヘラはペロポネソス半島に伝統的に伝わる地母神、アプロディテは紀元前9世紀以降フェニキア人が地中海沿岸に広めた諸信仰およびその流れを汲む英国出身の女教皇アグネス(ヨハンナ)伝説(9世紀。男装癖があって、沢山の恋人が居て、教皇就任時既に妊娠しており、ローマに向かう途中で出産し、産後の肥立ちが悪くて母子ともに死んでしまったとされる。15世紀に入ると「早過ぎた宗教改革者」フスが教会弾劾の材料に使ったが、16世紀に入ってなおシエナ大聖堂にはその像が飾られていた)やタンホイザー伝承などに登場する「妖精の隠れ里」での女王統治伝説に見られるポルノクラシー(Pornocracy;娼婦政治)と密接な関係にある。

    その一方でローマ神話においてギリシャ神話のアプロディテに当たるヴェヌスは建国の祖アイネイアスとその末裔を名乗る名家ユリウス氏族の祖とされ、共和制から帝政への移行を主導したユリウス・クラウディウス朝(紀元前27年~紀元68年、アウグストゥスティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロの六代)を正当化するイデオロギーとして大いに活用されたが、これに代わってフラウィウス朝(69年~96年)を建てたフラウィウス氏族は古代エジプトにおける「習合神セラピスヘレニズム期にプトレオマイオス朝エジプトがオシリスとハデスの折衷神として広めた冥界神)と女神イシス妻神や母神としての神格をハトホルより、豊穣神としての神格をシリウスの化身ソティス(Sothis)より継承と息子神ホルスギリシア化したハルポクラテス(エジプト語で「子供のホルス」の意)の聖家族像」を広めキリスト教との混合を産んだ。

    イシスにはさらに「その魔力を駆使して太陽神ラーから強引に秘術を奪った強力な魔術師」という側面もあり、そのせいで中世ヨーロッパにおいて魔女の元祖と目される事もあった。これだけの前史がフレイアという存在にはついて回っている。

    タロット・カードの「女教皇」が女教皇アグネス(ヨハンナ)伝説に基づくのは習知の事実。

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  • 土曜日

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    英語のSaturday とオランダ語のZaterdagは、ドイツのヴェストファーレンでのSatertagと同じく、古代ローマの農耕神サトゥルヌス(Saturnus)あるいはその英語読みサターン(Saturn)から来ている(一方、 イタリア語のSabato、フランス語のSamedi、ドイツ語のSamstag、スペイン語のSábadoなどは、ラテン語のSabbatumに起源があり、それはまたヘブライ語安息日(יום השבת)が起源)。

    フェニキア神話とギリシャ神話の双方に登場する時間神クロノスと同一視される様になって以降のローマ神話では、ユーピテルにオリンポスを追放された後で地上に降り立ち、門の神ヤーヌスに導かれる形でカピトリヌスの丘に都市を建設してイタリア王となった。そして当時、未開野蛮の民だった人々に農業やブドウの木の剪定などを教え、法を発布して太古の黄金時代を築いた文化英雄とされる。

    タロット・カードの「世界」。中央の女性はローマ神話における幸運の女神フォルトゥナとされるが、古くはここに正体不明の男性が描かれていた。

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 こうした記録の積み重ねに関する解釈。

  • 神話学者のエリアーデは、天空神から天候神への変遷は、狩猟民族から農耕民族への切り替わりを意味するとした。天体を見て、その周期的な動きに驚嘆している太古の人類は天を神として崇めるが、農業を始めると、風雨が重要にとなり、単純な天空神から(恵みの雨をもたらしてくれると同時に、旱魃や暴風雨や河川の氾濫や洪水なども引き起こす懐柔が不可避の存在たる)天候神を崇拝するようになるという次第。
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    *この仮説によって帝政ローマ時代には既に「雷神」トール(Thor)が「天空神」テュール(Tyr)より優位に立っていた事が説明出来る。古代ギリシャ神話において「天空神」ゼウスが後天的に雷撃能力を獲得したのも、古代インド神話において「嵐の神」シヴァの重要性が次第に向上していったのもこの流れとされる。エリアーデはまた「その変化は風神(あるいは大気神)の誕生に伴う天地分離の神話で説明される事が多い」としたが、この部分は北欧神話には見られない。
  • またヴァイキングViking=略奪遠征)時代(9世紀〜10世紀)の北欧諸族の間で「(後世におけるハスカール制に原型を提供した軍人=冒険商人」階層の地位向上が見られ、彼らの崇めていた「辻神オーディンOdin)が族長/司祭階層の崇めるテュールTyr)や農民階層の崇めるトール(Thor)より優位に立ったとも考えられている。

  • そしてヴァン神族の「フレイFrey「男主人」の意 / フレイヤFreya「女主人」の意」二重信仰」は地中感沿岸一帯でフェニキア商人が標準化した「バール男主人 / バーラト女主人二重信仰」を連想させるし「猫馬車を駆る女神」の原型はおそらくアナトリア半島プリュギアフリギア)で崇拝されていた(そして後には古代ギリシア古代ローマにも信仰が広がった)「獅子の牽く戦車を駆る地母神キュベレー古希Κυβέληη / Kybélê、仏Cybèle、英Cybele)と推察される。古代インド神話における「ヒマヤラ虎に跨る戦争の女神ドゥルガーDurga)」との連続性も指摘されている。

古代ギリシャ世界に猫が伝播したのが紀元前6世紀頃で、歴史のその時点でドナウ河流域よりアナトリア半島経由でボイオキアに到着したアイオリス人との邂逅が果たされたと考えられます。古代ギリシャ世界では歴史のその時点で鼠を駆除する益獣の座を巡る蛇と猫の戦いがあって蛇が敗北していきますが、そういえば北欧神話でも蛇は比較的悪役として登場する事が多い様です。伝統的に北海と黒海は「琥珀の道」や「ヴァリアリーグの道」で結ばれてきたので、おそらく猫もその経路を辿って…