諸概念の迷宮(Things got frantic)

歴史とは何か。それは「専有(occupation)=自由(liberty)」と「消費(demand)=生産(Supply)」と「実証主義(positivism)=権威主義(Authoritarianism)」「敵友主義=適応主義(Snobbism)」を巡る虚々実々の駆け引きの積み重ねではなかったか。その部分だけ抽出して並べると、一体どんな歴史観が浮かび上がってくるのか。はてさて全体像はどうなるやら。

【雑想】「2020年代に相応しい人工知能」について。

f:id:ochimusha01:20190712174838j:plain

f:id:ochimusha01:20190712174744j:plain

 臨界期(英critical period、独kritische Periode、仏périodes critiques) - 脳科学辞典

同義語:敏感期 (sensitive period)、感受性期。神経回路網の可塑性が一過的に高まる生後の限られた時期であり、生涯にわたる学習とは一線を画する。脳の神経回路は、生後の体験・経験により成長する。特に、視覚や聴覚などの感覚の機能や、母国語の習得に関わる神経回路は、臨界期の経験によって集中的に形成される。近年の遺伝子改変マウスを用いた研究から、臨界期のメカニズムが少しずつ明らかになってきている。視覚(眼優位性)モデルにおいては、大脳皮質の抑制性介在ニューロンの発達が臨界期の可塑性の制御に重要であることが示唆されている。

  • Konrad Lorenz1958)によって提唱された「刷り込み」の現象は、行動学からの臨界期への最初のアプローチと考えられる。ニワトリやカモなど早成性の鳥では、孵化の直後から目が見えており、数時間の内に近くにいる親鳥の姿を記憶する(刷り込む)。ヒヨコは鳥の形をした物に惹かれる傾向があるが、暗闇の中で飼育されるとその傾向を失う。興味深いことに、鳥類だけでなく、ヒトの新生児も顔の形に惹かれる傾向があり、数か月の内にヒトとサルの顔を区別することが出来るようになることが知られている。
  • 神経科学の分野では、Hubel とWiesel(1963)によって示された「眼優位性可塑性(ocular dominance plasticity)」が、半世紀以上にわたり臨界期研究の良いモデルとなっている。
  • さらに近年では、英語耳や絶対音感の臨界期が取り上げられ、臨界期は幼児教育の分野にも影響を与えている。

昨今の神経科学分野における盛んな研究活動により、一定の期間に観察された神経細胞の可塑性に対して「臨界期」という言葉が頻繁に使われるようになっている。一方、従来からの臨界期モデルに焦点を当てると、臨界期とは次のような特徴を持つ期間であることが分かる。

  • 競合する2つ以上の入力が経験(活動)依存的に選択される。
  • 入力の選択は神経細胞の刈り込み・伸長など脳内の形態学的な変化に帰結する。
  • 始まりと終わりの時期は齢に依らず経験によって決まる。

さらに、最も重要な特徴として可塑性が一過的に亢進する生後の限られた期間であり、生涯にわたる学習などの可塑性とは一線を画することが挙げられる。

回路形成の臨界期モデル

近年の動物モデルの解析から、運動系と感覚系(視覚、体性感覚、嗅覚、聴覚)において、生後間もない臨界期が観察されている。

  • 複数の神経細胞からの軸索投射が、単一細胞からの投射に択一される系として、神経筋接合部(neuromuscular junction)や小脳プルキンエ細胞への登上線維投射などが知られている。
  • 重なり合った軸索投射が、それぞれ分離して緻密化される系として、感覚系(視覚、体性感覚、嗅覚、聴覚)における投射マップ形成などが報告されている。

この様に中枢神経と末梢神経の発生発達期には、神経細胞から伸びた過剰な軸索が神経活動に依存して競合的に刈り込まれ、一生涯の機能的回路が形成される。

回路再編の臨界期モデル

生後の早い時期に観察される臨界期は、広く張り巡らされた神経回路を神経活動によって厳選し、緻密化するための時期である。一方で、動物個体に経験の偏りが生じたとき、既存の回路を再編するための臨界期も存在する。

  • 歌を覚える鳥類(オウム/インコ類、ハチドリ類、鳴禽類)には、歌を覚えるための臨界期がある。鳴禽類のキンカチョウは、孵化後20日から90日頃までに歌を学習し、臨界期に覚えた1つの歌を生涯歌い続けることが知られている。キンカチョウは歌を学習するための特別な回路を持っており、臨界期であれば回路の再編によって歌を覚えなおすことが出来る。歌の学習ができる動物種はヒトを含め非常に稀である。
  • ヒトの言語習得の過程も、キンカチョウの歌学習に似た「感覚学習聞き覚え)」と「感覚運動学習発声学習)」の段階を踏むことが示唆されている。
  • 猛禽類のフクロウでは、視覚と聴覚から得られた標的(獲物)の位置情報を一致させるための臨界期が存在する。臨界期のフクロウにプリズムゴーグルをつけ視覚の位置情報を20度以上ずらすと、視覚と聴覚のズレを修正するように聴覚の回路が再構築される。

どちらの眼からの入力を多く受けるか(眼優位性)は、臨界期の視覚経験に依存して可塑的に変化する。これを眼優位性可塑性とよぶ。現在までに神経生理学、神経解剖学、分子生物学などの様々な見地から解析され、臨界期のメカニズムを探求する上で良いモデルとなっている。

  • マウスからヒトまで、両目で見た情報は大脳皮質の第一次視覚野で初めて統合され、物の立体的特徴は正確に捉えられる。
  • げっ歯類では、網膜神経節細胞からの軸索の多くは反対側の視覚野に伸び、一部が同側の視覚野に投射して両眼視領域を形成する。
  • ネコやヒトでは、左右の網膜からの入力は両側の視覚野に投射し、第4層において互いに分離して縞模様を作り、第2/3層において初めて統合される。

幼年期(ヒトでは9歳頃まで)に偏った視覚経験を受けると(例えば、片眼に長期間眼帯をすると)、閉じられた眼からの情報よりも開いた眼からの情報を多く受け取るように、神経回路が作り変えられる。その結果、閉じられた眼の入力を中継する外側膝状体細胞の軸索(視床-皮質投射)は、視覚野において著しく萎縮し閉じられた眼の視力は弱くなる(弱視)。就学前までの子どもの2~4%に見られる決して珍しくない疾患である。

  • げっ歯類でも同様に、生後20 - 40日頃に眼優位性の臨界期があり、臨界期に閉じられた眼の視力は弱くなる。マウスからヒトまで、弱視を回復するためには可塑性が高い臨界期のうちに治療を施す必要があり、大人になってからの治療では回復が難しいことが知られている。
  • 治療は、良い方の眼にアイパッチを施し、さらに弱視の眼(多くは遠視である)を眼鏡で矯正するという方法が一般的である。一方、子どもの精神的な負担を軽減するために、治療の時間を短くする研究も行われている。弱視の眼で見る機会を増やすよう工夫されたテトリスゲームを行うことで、両眼視のトレーニングを行い、効率的に治療する方法も開発され始めている。

生後の大脳視覚野には、眼優位性だけでなく、方位選択性(orientation/direction selectivity)の臨界期もある。

  • ネコの第一次視覚野においては、特定の方位の動きに強く反応する(特定の方位選択性を持つ)細胞が集まり、カラム構造を形成する。視覚野においてそれぞれのカラム構造は方位マップを形成しており、隣りあったカラムは似た方位選択性を見せる。
  • げっ歯類では、方位選択性を持つ細胞がゴマ塩状に分布し(編集部コメント:salt-and-pepperの訳かと思いますが、判りにくいと思います)、カラム構造を形成することはない。 方位マップも観察されず、似た方位選択性を持つ細胞が視覚野に離れて存在する。方位選択性は経験に依存して形成され、その臨界期は、眼優位性より少し先行する。

げっ歯類では、両眼視領域の細胞は両眼からの入力を同時に受けることが多い。そのため、両眼視領域の単一細胞の方位選択性は、臨界期の経験により両眼で統一されることが重要である。

カニズム

大きく2つの時期に分けられる。

  • 遺伝子設計図に従い伸展した神経回路が、早期の神経活動により機能的に刈り込まれる臨界期…ここでは、回路で使用される神経伝達物質とその受容体のシグナル伝達系の役割が重要である。さらに、出生によるセロトニン量の減少や、C1q補体ファミリーなどの免疫系因子が軸索の分離や刈り込みに関与することが示唆されている。
  • 個体が独自の経験、刺激を継続的に受けることにより、既存の神経回路が再編される臨界期…眼優位性可塑性の研究から、回路で使用される神経伝達物質/受容体や片眼遮蔽により活性化される因子(組織プラスミノーゲン活性化因子 (tissue plasminogen activator、tPA)など)に加え、興奮-抑制バランスが重要であることが分かってきている。

未熟な脳では興奮性活動が相対的に強いが、抑制機能が発達して自発発火が抑えられ、視覚入力による発火が顕著になると眼優位性の臨界期が活性化される。①抑制性介在ニューロンのなかでも、パルブアルブミン陽性細胞の機能発達が臨界期を制御する鍵と考えられる。②臨界期の可塑性の高まりは、興奮-抑制バランスが入力に応じて柔軟に変化する時期に見られ、特に、優位な入力をより多く受け取るように抑制機能が作用する。③さらに興奮-抑制バランスが固定化されると、臨界期が終わると推測される。

  • パルブアルブミン陽性細胞の機能発達に関与する分子(GAD65、BDNF、Otx2、NARP)を欠損したマウスでは、臨界期が誘導されない。
  • 細胞形態や抑制機能の固定化に関与する分子(Nogo受容体、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、Lynx1)を欠損したマウスでは、臨界期が終わらない。

一方で、方位選択性の臨界期には、抑制性介在ニューロンの発達よりもむしろ興奮性シナプスの可塑性が重要である。

  • GAD65やOtx2の欠損マウスでは方位選択性が正常に形成されるのに対し、GluN2A (NR2A, GluRε1)やPSD-95の欠損マウスでは、眼優位性可塑性の異常よりも、方位選択性の形成不全のほうが顕著に見られる。

ほぼ同時期に同じ視覚野において見られる臨界期でも、回路によって可塑性のメカニズムは異なることが示唆される。

詳細はさっぱりですが、とりあえず「それぞれの生物の神経系統には空間認識手段などがまとめて初期化される発達時期がある」なる概念だけ継承して先に進みます。ところで人工知能の一分野たるニューラルネットワーク・モデルにおける構成基礎単位は「人工神経artificial neuron)」とされています。

ヘブ則(英Hebb's rule、独Hebbsche Lernregel、仏Règle de Hebb) - 脳科学辞典

ヘッブ則/ヘブの学習則(Hebb's postulate/Hebbian learning)も同義語。1949年カナダの心理学者であったDonald Hebbが自らの著書『The Organization of Behavior』の中で唱えた仮説である。同書の該当箇所には「細胞Aの軸索が細胞Bを発火させるのに十分近くにあり、繰り返しあるいは絶え間なくその発火に参加するとき、いくつかの成長過程あるいは代謝変化が一方あるいは両方の細胞に起こり、細胞Bを発火させる細胞の1つとして細胞Aの効率が増加するWhen an axon of cell A is near enough to excite a cell B and repeatedly or persistently takes part in firing it, some growth process or metabolic change takes place in one or both cells such that A's efficiency, as one of the cells firing B, is increased.)」とある。要約すれば「ニューロンAの発火がニューロンBを発火させると2つのニューロンの結合が強まる」となる。これは脳の中で起こっている記憶の基礎現象であると考えられる。つまり、記憶とは適切なニューロン同士の結合力の変化であると定式化できる。

f:id:ochimusha01:20190712141706p:plain

ヘブは当時の知見を徹底的に吟味し、神経活動における「cell assembly細胞集成体)」という概念を打ち立てた。ある受容器が刺激された場合には、それに応じて活動する細胞群によってcell assemblyが形成され、それはひとつの閉じた系として短時間活動できるようになると推測。記憶とはそうした反響性活動の中で生じる永続的な細胞の構造変化であり「ニューロンニューロンの接合部であるシナプスというところに、長期的な変化が起こって信号の伝達効率が変化することが学習の仕組みである」という学習のシナプス仮説を唱えた。今日では、この仮説に基づくシナプス可塑性のルールが「ヘブ則」と呼ばれている。

ヘブの学説が大きく注目を浴びるのは、それが発表されて20年以上も経ってからである。

  • 1973年BlissとLømoは電気生理学的手法を用いて、ウサギの貫通線維路を単一パルスで刺激した際の海馬歯状回でのシナプス伝達応答を観察していた。そして、彼らは貫通線維路を高頻度に連続して刺激したときに、その刺激前後で単一パルスに対するシナプス応答が増大し、これが数時間以上さらには数日間にもわたって維持されることを見出したのである。
  • 後にLTPlong-term potentiation=長期増強)と呼ばれるシナプス可塑性の発見である。ヘブが記憶の痕跡であると考えた仮説はまさにこのLTPの機構を説明するものであった。

  • 当初、記憶と関わりの深い海馬で観察されたことから、LTPは記憶の基礎現象であると注目されLTPの研究は一気に加速していった。その後、LTPは大脳皮質、小脳、扁桃体などの様々な脳領域で見つかり、ヘブの学説が脳における一般的な学習メカニズムのひとつであると認知されるようになった。

  • 現在では、LTPにはさまざまな分子機構が存在することがわかっており、脳領域や細胞種、生物の年齢によっても大きく異なる。その中でも、とりわけヘブ則と関連深いのはNMDA型グルタミン酸受容体依存的なLTPであろう。この種のLTPは最も広く研究されているシナプス可塑性であり、Blissらが最初に報告したLTPもこれに当たる。

  • 驚くべきことに、LTPがもつ3つの特徴のうち、「共同性cooperativity)」と「連合性associativity)」についてはすでにヘブの学説の中で予見されていたことであった(3つ目の特徴は、「入力特異性(input specificity)」である)。これら2つの特性は、McNaughtonら(1978年)およびLevyら(1979年)によってそれぞれ確認されている。

  • 1997年にMarkramらによって発見されたSTDP(spike timing-dependent plasticity;スパイクタイミング依存可塑性 )という学習法則は、ヘブ則とLTPとの関係をより深く理解するために重要である。というのも、ヘブ則はしばしば簡略化されて「ニューロンAとニューロンBが同時に発火することによりシナプスが増強される」と解釈されるが彼らの研究では(厳密には同時ではなくニューロンAがニューロンBに対して少しだけ先行して発火した場合にのみLTPが誘導されることが明らかとなった。この点についても、本来のヘブの仮説は正確であったと言える。ヘブ則には「ニューロンAがニューロンBを発火させると…」という2細胞間での発火の因果関係が明確に記されているからである。

  • その一方でヘブ則に従わない可塑性ルールも多数発見されていることも事実であり、ヘブ則が唯一の学習理論であるわけではない。そうしたヘブ則に従わない一部の学習ルールは反ヘブ則(anti-Hebbian)や非ヘブ則(non-Hebbian)とも呼ばれ、重要な研究対象となっている。

ヘブ則が広まったのは実験科学の分野だけではない。1957年アメリカのRosenblattは、ヘブ則を学習関数として組み込んだパーセプトロンというパターン認識アルゴリズムを考案した。その後も、計算機シミュレーションを用いたニューラルネットワークの研究に大きな影響を与えている。

人工神経(artificial neuron) - Wikipedia

①それは1つ以上の入力を受け取り(1つ以上の樹状突起に相当)、その総和から出力(シナプス)を生成する。通常、各ノードの総和には重み付けがされ、活性化関数(activation function)もしくは伝達関数transfer function)と呼ばれる非線形関数に渡される。

f:id:ochimusha01:20190711175333p:plain

  • b=バイアス値
  • w=シナプスの重み付けベクトル
  • x=入力ベクトル
  • φ=活性化関数

f:id:ochimusha01:20190711174743g:plain

②活性化関数としてはパーセプトロンが登場した頃の1950年代はステップ関数が多く、1986年のバックプロパゲーションの発表以降はシグモイド関数が最も一般的だったが、現在はReLU(ランプ関数)の方が良いと言われる。単調増加関数が選ばれる事が多いが、必ずしもそうしなければいけないという物でもなく動径基底関数なども採用される。

活性化関数(activation function)もしくは伝達関数(transfer function) - Wikipedia

放射基底関数(英radial basis function、RBF、動径基底関数) - Wikipedia

函数近似において、各々適当な点に関して球対称となる実数値函数からなる基底を考える時の各基底函数。一般に函数 φ が動径函数あるいは球対称 (radial) であるとは、φ(x) = φ(‖ x ‖), すなわちその値が偏角成分に依存せず動径成分(つまり原点からの距離)のみに依存して決まることを言う。従って動径基底函数は適当な点 c を中心として、c からの距離のみに依存して決まる (φ(x; c) = φ(‖ x − c ‖))。ここで、ノルムはふつうユークリッド距離で考えるが、べつの距離函数を取ることもできる。

  • 私がこれまで使ってきた「オイラーの原始量Euler's primitive sweep)=観測原点をすっぽり包む全球型スクリーン」の概念はとりあえずN=1で、それゆえにあらゆるスカラーとはいえ実際には定数でなく状況によって増減してるかもしれない)がとりあえず「」に単純化された特別限定版の単位円unit circle)/単位球面unit sphere)と言い換えられる。そして次の段階では(おそらくN<1となった時、ここでいう「」に何が突き合わされるかについて検討していく展開となる。

    *要するに「試金石による検証」の試金石側という解釈…

    *で、まだちゃんと調べてない段階だけど放射基底関数なる活性化関数、記述統計(descriptive statistics)で使う平均や分散、標準偏差などを扱う概念のデータの持ち方と関係してくるじゃないかと推測してる。こういう当てずっぽうってたとえ外れても(どうしてそんな間違いを犯したかの分析もふくめ)別の局面で生きる事もたまにはあるのであえて掲載しておく…

  • ちなみに私が大学に在籍していた頃は第2次AIブームの最中で当時「ニューロン・コンピューティング」といったらパーセプトロンの出力は0か1が普通で中間の数字を使うのはファジーfuzzy)工学の応用といわれていた。最近では最適解を出力したパーセプトロンアッセンブリ)だけ残したり(相関係数検定の一種?)、出力された確率からさらなる計算を行ったり(エキスパート・システムの一種?)もするらしい。思い返してみれば当時はただでさえコンピューター・リソースが圧倒的に不足していた上(現在なおGPUを大量投入しても長時間かかる計算もあるらしい)、あまりにも人間に似せて考えようとし過ぎていたのである。
    *この意味合いにおいてはまさに「現代にタイムスリップしてきた江戸時代の人間」みたいな気分をしょっちゅう味合わされてる。面白くて仕方がない。

こういう立場なのでシンギュラリティ技術的特異点)問題とか聞いても普段は「ふ〜ん」という感じなのですが、確かに話が「強いAIと弱いAIStrong AI and Weak AI)」みたいな領域まで及ぶなら、冒頭の様な話も出てくるのです。

 強いAIと弱いAI (Strong AI and Weak AI)- Wikipedia

人工知能AI)が真の推論と問題解決の能力を身につけられるか否かをめぐる論争において用いられる用語である。哲学者ジョン・サールが作った用語であり、彼は以下のように書いている。「…強いAIによれば、コンピュータは単なる道具ではなく、正しくプログラムされたコンピュータには精神が宿るとされる」。サールはコンピュータと機械を区別している。彼は強いAIに反対の立場を主にとっているが(例えば、中国語の部屋)、一方で「脳は機械であり、エネルギー転送によって意識を生じる」とも述べている。

人工知能という言葉は、「人工」と「知能」の意味からいえば「強いAI」とほぼ同義と言えるが、初期の人工知能研究はパターン認識や自動計画といった狭い領域に集中しており、そういった研究が最終的に知能に関する真の理解をもたらすと期待されていた。このため、人工知能がそのような狭い領域(弱いAI)を指すと同時に強いAIの考え方も指すという状態になっている。強いAIを指すためのより明確な言葉として、Synthetic Intelligence合成知能)を提案する者もいる。

弱いAIWeak AI

強いAIとは対照的に、弱いAIは人間がその全認知能力を必要としない程度の問題解決や推論を行うソフトウェアの実装や研究を指す。弱いAIに分類されるソフトウェアの例として、ディープ・ブルーのようなチェスプログラムがある。強いAIとは異なり、弱いAIが自意識を示したり、人間並みの幅広い認知能力を示すことはなく、最先端とされるものでも知能を感じさせることのない単なる特定問題解決器でしかない。

弱いAIプログラムは真に思考することができないから「知的」とは言えないとする立場もある。ディープ・ブルーのような弱いAIソフトウェアは真に思考しているとは言えないという主張に対して、Drew McDermott(イェール大学の計算機科学教授)は次のように書いている。「ディープ・ブルーがチェスについて真に思考していないというのは、飛行機が羽ばたいていないから実際には飛んでいるとは言えないというのと同じだ」。彼は、ディープ・ブルーは知的に処理をしており、単にその知能の幅が狭いだけだという立場である。

また、ディープ・ブルーは非常に強力なヒューリスティック探索木マシンであって、これがチェスについて「思考」していると主張するのは、細胞が蛋白質の合成について「思考」していると主張するのと同じだというものもいる。どちらも全体として何をしているかを意識しておらず、単にプログラムに従って処理しているだけというわけである。これに対して、弱いAIを擁護する立場からは、機械が真の知性を獲得することはあり得ないと主張されている。

一方、強いAIの立場からは、人間の脳の働きに基づいた特殊な「プログラム」を使うなどすれば、真の自意識や「思考」が生まれるとの主張がある。進化心理学者の中には、そのようなプログラムが人間の脳で発達したのは、社会的相互作用やおそらくはある種の詐欺やぺてんのためだろうと指摘する者もいる。

強いAIStrong AI

コンピュータが強いAIと呼ばれるのは、人間の知能に迫るようになるか、人間の仕事をこなせるようになるか、幅広い知識と何らかの自意識を持つようになったときである。

知能指数のような人間向けの知能尺度を機械の知能にそのまま当てはめるのは簡単ではないため、以下のような人工知能の知能を計る簡単な方法が提案されている。

ここでいう知能とは、現実についてのモデルを持つことであり、そのモデルを使って行動計画を立てたり、将来を予測する能力である。モデルの複雑性と精度が高くなって計画立案や予測に要する時間が短くなればなるほど、知能も高いと言うことができる。

汎用人工知能Artificial General Intelligence

人間レベルの知能の実現を目指したもので、他のAIプロジェクトと区別するためにAGIと呼ばれている。短期間で人間の知能の複製はできないという見方もされ、今のところあまり注目されていない。しかし、一部の少数の研究グループがAGI研究を行っている。AGI を推進している組織として、Adaptive AI、Artificial General Intelligence Research Institute (AGIRI)、Singularity Institute for Artificial Intelligence、Vicarious、OpenCog、GoodAI、DeepMind、NNAISENSE、AGI Innovations、carboncopies、Nengo、micropsiindustries、全脳アーキテクチャイニシアティブ、HumanBrainProject、BRAINinitiative、などがある。

近年これに加わったのがヌメンタで、Palm Pilotを開発したジェフ・ホーキンスの理論に基づいたプロジェクトである。ヌメンタはコンピュータ側からのAGI研究だが、ホーキンスは生物学的な面からのアプローチとしてレッドウッド神経科学研究所も設立している。

どう見積もっても、強いAIに向けての実際の進歩は未だ限定的である。時間制限無しで完全なチューリング・テストに合格できるシステムは未だ存在しないが、人々を最初のうちだけだますことができるシステムは既に存在している。

いつ、どの程度のシステムが登場するかを予測するAI研究者があまりいないのは、過去のAI研究についての予測がほとんど当たらなかったためと思われる。また、「AI効果」と呼ばれる問題もある。これは、人工知能で何か新しいことを実現したときに、それが単なる自動化であって知能とは関係ないと結論付ける心理効果である。同様のことは、人間特有と思われていた知的な行動を動物も行うことが示されたときにも見られる(道具を使う能力や鏡像を認識する能力)。

合成知能SI=Synthetic Intelligence

この用語を提唱している人々は「人工知能」という用語が一種の撞着語法であるとしている(知能が知的でないことを暗に示している)。テキサス大学オースティン校計算機科学科の Diane Law は Searle, Subsymbolic Functionalism and Synthetic Intelligence の中で、人工ルビーと合成ルビーを比べたとき、合成ルビーだけが本物のルビーであるという喩え話を挙げている(訳注:人工ルビーと言っているのは、ラインストーンなどのいわゆるガラス玉のこと)。

この用語の提唱者は、SI(合成知能)という用語が人間が意図的に作成する真に知的なものを指すことにしようと提案している。これはまさに強いAIのことであり、現在実現されている弱いAIと対比されることを示している。

この用語が使われるようになって、定義を超えた用法として、人間のテクノロジーの無作為な集積によって創発的に知能が発生したものも指すようになりつつある。これにより、用語の適用範囲が広がる一方、生物、特に人間の知能もある意味で種の発展と個人の経験の自然な過程から生じると捉えると、この2番目の定義は問題を提起する。つまり、合成知能(あるいは人工知能)と自然に発生する知能の境界は何かという問題である。このような議論は今のところ、サイエンス・フィクションの世界と理論上の議論にとどまっている。

人工意識

強いAIの可能性を論じるとき「心身二元論」の性質と記号処理の役割の問題が出てくる。ジョン・サールらは議論を通じて、符号化されたデータの変換によってだけ作業するマシンが精神を持てるのかを検討した。これは一元論対二元論といった問題を超えるものではない(すなわち、生物学的機械を含むどのような機械でも、精神を持てるか)。

サールは中国語の部屋という形で情報処理装置が何らかの事物を表す符号化されたデータを処理する様子を表現した。符号化されたデータ自体はそれによって表されている事物との相互参照なしでは無意味である。そのため、サールは情報処理装置自体には意味を理解する能力が全く無いとした。結果としてサールは、チューリング・テストに合格するマシンであっても、人間的な意味での意識を持たないだろうと主張している。

哲学者の中には、弱いAIが実現可能なら、強いAIも実現可能なはずだと主張する者もいる。ダニエル・デネットは『解明される意識』の中で、魔法のスパークや魂がなければ人間も単なる機械であると主張し、機械が知能や「精神」を伴ったとき、人間という機械が特権的な立場でいられるだろうかと問うた。同書の中で彼は意識の「多元的草稿」モデルを提案している。

サイモン・ブラックバーンは哲学入門書 Think において、「あなたは知能を持っているかもしれないが、それが本当に知能かどうかを知る方法はない」と指摘している。しかし、議論を人工意識よりも「強いAI」に限定するなら、情報処理コンピュータに関係ない人間の精神機能を特定することは可能かもしれない。

強いAIの信奉者の多くは、精神はチャーチ=チューリングのテーゼで表されるチューリングマシンで実現可能と考えている。この考えは極端にいえば、バベッジの解析機関や(構築可能ならば)鉄球と木材でできたチューリングマシンにも精神が宿ることを意味する。これは、デイヴィッド・チャーマーズの汎経験説に近い考えである。しかし、汎経験説と同様に、日常的な常識からの隔たりが大きいため「その結果はあまりに常識に反する」といった形で批判される事が多い。

ロジャー・ペンローズチューリングマシンの停止問題を論じることで、チャーチ=チューリングのテーゼの適用可能性を攻撃し、情報システムでは実行できないが人間の精神には実行できる計算が存在するとした。しかし、これは明らかに計算可能性の問題ではなく、シミュレーションの問題 — すなわち同じ計算を別のテクノロジーで行うという問題である。

脳の神経系は超並列的パターン照合が可能であり、これにより知覚と自覚の即時性が生じる。視野にある物を識別するという意味の「視覚」、自己を感じるという意味の「意識」、精神的に生じる身体感覚という意味の「感情」といった観念は、より高いレベルの概念を生じる。サールの中国語の部屋は、記号処理と生物のシステムの身体性がどのように結びつくかという「意味論的マッピング」を説明できない。脳自体は感じていないが、感覚を生じている。

最終的に、強いAIが実現するかどうかは、情報処理機械が意識などの精神の全ての特性を持てるかどうかに依存する。弱いAIと強いAIの問題は独立であり、ほんの一世紀前には乗算やデータベース検索といった現代のコンピュータが持つ機能の多くが「知的」であると考えられていたであろうことも確かである。

人間の脳モデルのシミュレーション

この手法は知能の仕組みを完全に解明しなくてもよいため、強いAIを実現する最も手っ取り早い手段と考える者が多い。基本的に、非常に強力なコンピュータさえあれば、人間の脳を神経単位のネットワークとしてシミュレーションできるだろう。例えば、人間の脳内の神経の(ほぼ)完全なネットワークのマップを得て、個々の神経細胞の働きをよく理解すれば、コンピュータプログラムによって脳をシミュレートすることは可能と思われる。何らかの通信手段を与えれば、このシミュレートされた脳は完全な知性を示すかもしれない。シミュレーションの具体的な形式は様々である。神経細胞毎ではなく複数の神経細胞をまとめてシミュレートすることも考えられるし、個々の分子をシミュレートすることも考えられる。人間の脳のどの部分をシミュレートすべきかも明らかではない。人間は脳の一部を損傷しても通常の活動が可能な場合があり、脳の一部は思考とは無関係な機能(呼吸など)に対応している。

この手法には以下の3つが必要となる。

  • ハードウェア…非常に強力なコンピュータが必要となる。未来学者レイ・カーツワイルの見積もりによれば、1000万MIPSまたは10ペタFLOPSが必要とされている。10ペタフロップス級のスーパーコンピューターは既に日本国内で稼働しており、京 (スーパーコンピュータ)がある。中国では、神威・太湖之光が93ペタフロップス(LINPACKベンチマーク)を記録している。カーツワイル以外の予測ではさらに強力なコンピュータが必要とされていて、1億MIPS(100ペタフロップス)から1000億MIPS100エクサフロップス)と言われている。さらに、神経の振る舞いを生物学的な詳細なモデルを使って表現することでオーバヘッドが生じ、脳自体の計算能力よりもずっと大きな計算能力を必要とすることが考えられる。

  • ソフトウェア…脳機能をシミュレートするソフトウェアが必要である。神経回路をモデルとしてシミュレーションする代表的なものとしてNEURONやNEST Simulatorがある。この前提として、精神が中枢神経系そのものであり、物理法則によって制御されているという考え方がある。シミュレーションを構成するには、人間の脳の物理的かつ機能的な知識を総動員する必要があり、特定の人間の脳の構造を詳しく調べる必要があるだろう。各種神経細胞の機能やそれらの接続に関する情報も必要となる。ソフトウェアがどのような形式になるかによって、それを実行するのに必要となるハードウェアの構成や性能が決まる。例えば、分子レベルでシミュレーションしようとすれば、神経細胞単位でシミュレーションするよりも多大な計算能力を要するし、神経細胞のモデルの正確度によっても必要な計算能力が違ってくる。シミュレーションする神経細胞数が増えれば、必要な計算能力は増大する。

  • 脳や神経についての理解…最終的に脳のシミュレーションを実現するには、脳(神経細胞)の数学的なモデルを作成できる程度の理解が必要とされる。中枢神経系を学問的に理解するか、マッピングまたはコピーを行う方法が考えられる。脳機能イメージング技術は急速に進化しており、カーツワイルは十分な品質のマップは必要とされるハードウェアとほぼ並行して出現するだろうと予測している。しかし、シミュレーションでは神経細胞グリア細胞の詳細な挙動を擬似する必要があるが、今のところそれに関しては概要レベルしか理解が進んでいない。一旦このようなモデルが構築されれば、変更は容易であり、試行錯誤的な実験が可能となる。それによって理解が促進され、モデル化された知能の改良や動機付けの変更が可能となる。


Blue Brainプロジェクトは、世界最高速のスーパーコンピュータの1つであるIBMのBlue Geneを使って、約6万の神経細胞と全長5kmのシナプスからなる大脳新皮質をシミュレートすることを目指している。プロジェクトの最終目標はスーパーコンピュータ群を使って脳全体をシミュレートすることである。

一方で、脳に関する詳細な測定結果を利用しながら、NEST Simulatorなどで脳全体の大雑把なシミュレーションを行い、仔細はシミュレーション結果を見ながらモデルにフィードバックして現実の脳とそっくりなモデル(あるいは汎用人工知能に繋がる基礎技術)を完成させるという手法も提案されている。

実際の脳は多数のモジュールの並列動作によってその能力を得ており、コンピュータは逐次動作の高速性によってその能力を得ている。

約1000億の神経細胞が同時並行的に機能しており、それらが約100兆のシナプスで接続されている。脳の処理能力の見積もりとして、一秒間の神経細胞の状態更新が約 1014 回とされており(シナプス間隙の伝達にかかる時間は、0.1~0.2ミリ秒ほど )、最適化していない脳のシミュレーションに必要な計算能力は 1018 FLOPS(=1Exa-FLOPS)と予測されている。2018年現在、日本では1エクサフロップスの性能を持つ富岳の2021年共用開始を目指して開発が行われている。

しかし、神経細胞間の信号は150メートル/秒の最高速度で転送される。最近の2GHzのマイクロプロセッサは毎秒20億サイクルで動作し、人間の神経細胞より1000万倍も高速だし、信号の伝達速度は光速の約半分であって、人間の場合の100万倍である。従って神経細胞間の伝達速度とマイクロプロセッサの動作速度の差を考えれば、十分性能に余力を持ってシミュレーションできる可能性が残されている。余談であるが、脳の消費エネルギーは約20W、スーパーコンピュータは約1MWである。なお、ランダウアーの限界によれば、室温で1W消費当たりで1秒間に実行できる操作数は 3.5×1020 回が上限である。

また神経シリコンインタフェースNeuro-silicon interface)も提案されている。

個々の知的振る舞い人間の脳のシミュレーションとは対極的に、自然を擬似せずに直接AIを実現しようというアプローチもある。この手法の提唱者は、初期の飛行機の開発で、鳥を真似た設計が多くなされたが、結局現在飛んでいる飛行機が鳥とは全く異なる原理で飛んでいることを指摘する。

直接的アプローチにおける主な疑問は「AIとは何か?」である。最も有名なAIの定義は、アラン・チューリングが「チューリング・テスト」の提案時に行った操作的なものである。その後、AIの定義をしようという試みは数えるほどしかない(その一部は AI Project にある)。ジョン・マッカーシーWhat is AI? の中で、未だに知能の明確な定義がないと述べている。

 おや、ここには「一番読みたかった記述」が存在してない…

人工知能の歴史 - Wikipedia

実体を持つことの重要性: 新AIと推論の具現化

80年代末、一部の研究者はロボット工学に基づく全く新しいアプローチを主張した。彼らは機械が真の知性を獲得するには「身体」が必要だと信じていた。すなわち、知覚し、動き、生き残り、世界とやりとりできる身体が必要だとした。常識推論のような高いレベルの能力には感覚運動能力が必須であり、抽象的推論は人間の能力としては興味深くないし重要でもないという主張である(モラベックのパラドックス)。彼らは知能を「ボトムアップ」構築することを主張した。

このアプローチは60年代以来下火だったサイバネティックスと制御理論の考え方を復活させた。もう1人の先駆者は70年代末にMITにやってきたデビッド・マーで、それ以前に視覚の理論神経学的研究で成功を収めていた。彼は全ての記号的アプローチ(マッカーシーの論理やミンスキーのフレーム)を廃し、記号処理の前にボトムアップで視覚の物理的機構を理解する必要があると主張した。なお、マーは1980年に志半ばで白血病で亡くなった。

1990年の論文"Elephants Don't Play Chess"で、ロボット工学者ロドニー・ブルックスは物理記号システム仮説を正面から扱い「世界はそれ自身の最良のモデルである。それは正に常に最新である。知るべき詳細は常にそこにある。秘訣は適切かつ十分頻繁に世界を感知することである」と述べ、記号は常に必要とは限らないと主張した。80年代から90年代にかけて、多くの認知科学者が精神の記号処理モデルを退け、推論には身体が本質的に必要だと主張し、その理論を「身体化された心のテーゼ」と呼んだ。

まさしくこれが20世紀の置き土産、エンターテイメントの世界では今日なお完全退役には至ってない「ボトムアップ・コンピューティング」理論なんですね。サイエンス・フィクションの世界には3シリーズのマスターピースが現存しています。展開上ネタバレ全開で内容紹介…

 

J.P.ホーガン仮想空間計画Realtime Interrupt、1995年3月、邦訳1999年)」

  • 仮想人格の集団が営む仮想空間社会に「人間らしさ」を学ばせるべく記憶を奪われ現実世界から投入された人々が違和感の積み重ねを契機に真相に辿り着き、脱出を考え始める展開。ただし作者も読者も高齢化した当時のハイファンタジー/サイバーパンク文学の状況を如実に反映し、登場人物は「倦怠期の中年夫婦」とかばっかりでドラマ展開に躍動感がなくあまり話題とならなかった。
    *同時代にはマイケル・クライトン作品も同様の症状に陥っていた。沢山恐竜を出してなんとか誤魔化してた「ジュラシック・パーク(Jurassic Park、1990年〜、映画化1993年〜)も人間ドラマに目を向けると…最近はむしろ「エンジニア残酷物語」という辺りに再照明?

  • ぶっちゃけウォシャウスキー兄弟(現在は姉妹)の「マトリクス三部作1999年〜2003年)」の元ネタとされている。第1作目の映像こそ「リベリオンEquilibrium、2002年)」と並ぶ伝説を残したが、次第に奇妙な革命理論を持ち込んだり「砂の惑星ごっこを始めたりして台無しとなり竜頭蛇尾に終わる。
    *ちなみに個人的には、同じフランク・ハーバード「デューン砂の惑星シリーズ(1965年〜1985年)」の中世的陰謀渦巻くドロドロした世界観から多大な影響を受けながら「若者向けへのリニューアル」を怠らず大成功を納めたのが「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones、2011年〜2019年)」だったと考えている。「きっとそのうち砂漠の神皇帝が登場する」という予感から未視聴のままだが、最後やはり登場し後味を随分と悪くしたらしい。

  • 川原礫ソードアート・オンラインSword Art Onlineシリーズ2002年〜2018年)」も設定面で多大な影響を受けているが「登場人物を若者にリニューアル」「原作での仮想空間を現実世界より見下す描写を逆手にとって「今自分が生きてるこの場所こそ現実」というメッセージを打ち出す」といった改善の積み重ねによって全く別物の青春群像劇に。
    *今日ではむしろ国際的にこの路線を踏襲した「レディ・プレイヤー1(Ready Player One、原作2014年、映画化2018年)」の先行作品という位置付けに。

グレッグ・イーガン順列都市Permutation City、1994年、邦訳1999年)」

  • 仮想空間において細胞レベルでシュミレートされた人々が暮らす様になった事が引き起こす様々な問題を独特の哲学的語り口調で展開。高齢化問題以前に「自殺を考えてる全裸のオッサンの苦悩に満ちた独白が延々続く」といったハードルの高い展開で、まるで一般人を相手にするつもりがなくSF通にしか読まれず。

  • ぶっちゃけ劇場版アニメ「楽園追放 Expelled from Paradise2014年)」の設定上の元ネタといえる。とはいえ「劇場アニメで面白く見せられる設定」だけ巧みに抽出してきた感じ。まぁエンターテイメント作品なんて、それでいいのだ?

ルーディ・ラッカーウェア四部作1982年〜2000年)」 

  • サイバーパンク文学初期の名作の一つとされる第1作「ソフトウェアSoftware、1982年)」は(ジョン・カーペンター映画「ニューヨーク1997(Escape from New York、1981年)」に登場する「監獄と化したマンハッタン島」みたいに)州まるごと老境に達したヒッピー世代の老人ホームと化したカリフォルニアを舞台に、そうした人々が相変わらず自暴自棄気味で刹那的快楽に耽る生活を送りながらサイバー化(全身スキャン過程で元の肉体は解剖され破壊され尽くして消滅)による第二の人生を渇望する物語だった。
    *というかさらなる元ネタは間違いなく「メタルギアソリッド」シリーズ同様…

  • 時期的に見てK・W・ジーターDr. Adder執筆1974年頃、刊行1984)」からの影響で人体コピー技術を採用した可能性も考えられる。そういえばこれも西海岸文学だった…

  • 当時のサイバーパンク文学作家中でも異色な作風で、その全盛期から「通好みの作家」という感じだった。自らも数学者にして情報科学者だから設定も割と精巧だが、他の作家がそれにあやかって採用したという話は聞いた事がない。
    *そういえば作品を構成する要素自体はキアヌ・リーブスとロバート・ダウニーJrのジャンキー演技が迫真に迫った独特のアニメーション映画「スキャナー・ダークリー(A Scanner Darkly、2006年)」と随分と重なってる。どうしてあんなにポップでパンキッシュな読後感を残すのか。

それぞれちゃんとそれなりの成功を飾ってきた作品ですが、流石に今や2019年なのです。20世紀に想像され、今やすっかり忘れ去られた人工知能テクノロジーのイメージをこれ以上引き摺り続けていく訳にはいきません。とはいえ格好の代替案なんてそう転がってる筈も…とりあえず「脳の臨界期」理論と「強いAI」の条件は相性が良さそうに見えるのでメモがてら投稿。とはいえ間違いなくここで期待されているのは当時の様な「仮想空間上への生活環境まるごとの構築」とかじゃなさそうなんだよなぁ…