古い投稿を見返してるうちに再発掘。
「オタク、オタクってみんな言うけど、オタクには2種類あると思うんだよね。ひとつは、ポップカルチャーが大好きで、そこに深くハマっていく人。そしてもうひとつは、入口はポップカルチャーかもしれないが、深く追求するあまり、どんどん興味が他の分野まで広がってしまった人。僕の場合、後者なんだよ」
メキシコ出身のギレルモが、少年時代にTVで見た日本の「ウルトラマン」「鉄人28号」「マグマ大使」「コメットさん」、手塚治虫作品のアニメなどに夢中になり、モンスター愛を育んで、『パンズ・ラビリンス』や『パシフィック・リム』を撮ったのは有名。オタクとして「他の分野に広がった興味」は、彼の口から次々と出てくる。
「三島由紀夫や江戸川乱歩、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)、オスカー・ワイルドやヴィクトル・ユーゴー、ロバート・ルイス・スティーヴンソンという文学に広がり、絵画ではモネやドガ、ダリ、そして日本の漫画では楳図かずおや伊藤潤二へと興味が拡大した。オタク監督としての僕のポリシーは、新しいポップカルチャーと伝統ある古典作品を、とことん純粋な愛情でつなげることなんだ。ポップカルチャーだけに留まることには、まったく興味がないよ」
②日本では全然知られていないが、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は来日以前の渡米期(ルイジアナで働きながら黒人女性との結婚/離婚を経験)に英訳したテオフィル・ゴーティエ著「或る夜のクレオパトラ(Une nuit de Cléopâtre, 183)」が、H.P.ラヴクラフトがエドガー・アラン・ポーの影響から脱するのに貢献し、さらに当時発表したクレオール文化についてのルポルタージュが所謂「インスマンス物」の諸描写に活用された事でも高い評価を得ている。
デザインの現場 2月号「デザインを読む!ブックガイド300」
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そのせいでダンセイニ卿(創作神話ジャンルの創始者)やアンブローズ・ビアス(ハスター概念の考案者)、アーサー・マッケン(ノーデンス概念の考案者)と並んで「宇宙的恐怖(Cosmic Horror)ジャンルの始祖の一人」に並び称されており、さらには「怪談(Kwaidan,1904年)」収録の「雪女」「菊花の約」をクトゥルフ神話に数えるマニアすら存在する(どれぐらいの規模かは不明だが、2010年代の国際的SNS上の関心空間で少なくとも数人と出会った)。もしかしたらこの流れはアーサー・マッケン「パンの大神(The Great God Pan,1890年発表/1894年刊行)」不評に由来するこのジャンルのエロティズムへの言及封印の伝統がニューウェーブSF(1960年代~1970年代)の流行を受けて解除されていくプロセスと何か関係があるのかもしれない。
そうでなくても小泉八雲と夏目漱石は「東大に開設された英文学講座の最初の講師」として並び称される存在だったりする。ちなみに最初に教えたのはどちらもシェークスピアのソネット集と「英国口語文学の始祖」ジェーン・オスティンだったが、歴史のその時点では英国本土にこうした「軽薄な軟派文学」を正統派文学として扱う伝統が存在しなかった(そして小泉八雲も夏目漱石もそういう現状に反感を覚えて新たなる英文学の伝統の創設を目指した)というのが興味深い。
②そして海外の日本オタクの間では、この文脈で普通に伊藤潤二が出てくる。さらに遡って「少女向け恐怖漫画の始祖」楳図かずおにまで言及する例は流石に少ないが、Tumbrで検索してみたらとんでもなく濃厚な「忘れ去られて久しいタイアップ作品」が現れる衝撃…
そう、世界は案外一つだけれど、それをちゃんと実感するには相応の「教養」が要求されるという話。そんな感じで以下続報…