Tumbrが全盛期を迎えた2010年代前半の思い出をもう少し。当時のTumbrにおける男子アカウントの多くは主アカと別にエロ画像収集用アカを用意し「おっぱいタンブラー」と呼ばれた巨大なエロ画像交易圏を構築する偽善性を発揮しまくっていた。
今では検索してもこんな画像が引っ掛かるばかり。本当に根絶されてしまったんだ…
これに参入したばかりの初心者は、最初欲しいエロ画像が幾らでも手に入る悦びに打ち震えるが、次第に手を広げるほど供給される画像の精度が上がっていく状況を訝しく思う様になる。そしてやがて自分が最初から、そうしたエロ画像を供給するDiggerと呼ばれる集団の監視下にあって彼らに分析され、攻略されてしまった事実を知って戦慄し、自分もそうしたエロ画像Diggerの一員となる道を選ぶのだった。どこの世界の「ミッドナイト・ミート・トレイン」 ですかこれ? 今から思えば実にディストピアめいたエコ・システムではあった。
同数以上の勢力を誇る女子アカウントは、かかる「おっぱいタンブラー」のエコシステムを目の当たりにして「汚らわしい、駆逐してやる!!」と憤るどころか「ええい、虎穴に入らずんば虎子を得ず。女子力とはスルー力なり」と覚悟を固め、ヤマシタトモコ「ドントクライ、ガール(2008年~2009年)」片手に自分達向けの供給網を追加する冒険に乗り出したのである。
勝算ならあった。SNSの世界においてはアクセス数やリブログ数こそが最大の富の源泉であり、女子は男子より「欲しい画像にそれを集中する能力」に長けている。私も計画通りそれに釣られた一人で、エロ画像Digger界からは「まんまと利用されやがって」と指弾されたが「人により多く参照されてこそのエロ画像Diggerだろうが」とカート・ヴォネガット・Jr論法を用いて開き直ったものである。
思うより同志には事欠かなかった印象があるが、「高い集中力を備えている」という事は気に入らないアカウントをBANする能力にも長けているという事でもあり、いつまでたっても要領が掴めないアカウントは容赦無く淘汰されていったものである。他に目敏く動いた集団が2つあった。彼女達には「(創始者たる竹宮景子が自己批判した)腐女子の仮面」と同じくらい有効だった「筋肉の仮面」すなわち「私達は裸が見たい訳ではない。筋肉が照覧したいのだ」なる建前に執着する心理につけ込んだ(ゲイポルノ界でも特異な地位を占める)「毛むくじゃら」熊さん系と(KPOP野獣ドル2PMがライブでバンバン脱ぐので固定客を掴んだ)細マッチョ系である。ちなみに当時「細マッチョ系(lean)」はアジア系筋肉誇示、「中細マッチョ系(Medium-lean)」は(男女を問わない)適度な白人系筋肉誇示に対応する用語だった。要するにザンギエフの様なボディビルダー的ガチムチ系はあまり人気がなかったのである。理由までは分からない。
「熊さん系」の影響については「X-MEN: フューチャー&パスト(X-Men: Days of Future Past,2014年)」でヒュー・ジャックスマンが剥き出しの尻を披露した事に端を発する「ウルヴァリンの尻がこんなにツルツルの筈がない(Wolverine's ass is not supposed to be this smooth.)」事件が歴史にその名前を残した。
ウルヴァリンは熊さん系ゲイの大好物で当時は「恥毛と尻毛がつながった全裸コスプレ写真」が盛んに投稿されており、それを見慣れた女子アカウントが思わず一斉に「これじゃない!!」と叫んでしまったのである。その一方で私は青池保子「イブの息子たち(1975年~1979年)」や吉田秋生「カリフォルニア物語(1978年~1981年)」に鍛えられた世代だったので「さてはブライアン・シンガー監督、70'sロックスターへのイメージに引き摺られたな」とピンときた。70'sロックスターといえばフレディ・マーキュリーにせよボニーMにせよ上半身裸で胸毛を誇示しつつ、下はタイツの様に体の線がすっかり剥き出しになるジーンズなりレザーパンツを穿いていたではないか。要するに「胸毛ぼうぼうなのに尻はツルツル」はこれから生まれた性癖なのでは?
かかる推測は映画「ボヘミアン・ラプソディ(2018年)」でブライアン・シンガー監督がまさにその方向の性癖を剥き出しとした事で確信に変わる。とはいえこの映画「クリストファー通りの仮装文化」を「ミュンヘンのネオナチゲイ」に差し替え「良いゲイと悪いゲイを峻別する」内容でLGBTQA界の顰蹙を買ってしまう。
一方、当時の細マッチョ系は、KPOP野獣ドル2PMがライブでバンバン脱ぎまくる画像に加え、当時の韓国TV番組が「KPOPアイドルが恥ずかしそうに下腹部の筋肉を見せ合う場面(その瞬間、少女漫画チックな画面エフェクトと効果音が鳴る)」や「アンダーウェア一丁で筋トレする場面(Tumbr女子は「苦悶の表情が似合うジブリ男子投票」とかネット上で開催するくらいだから、それで苦悶の表情とか浮かぶのが大好物)」を大量産していたのである。
これに便乗したアマチュア組はさらに果敢に「アンダーウェアをどれだけ押し下げても大丈夫か」なる課題に挑戦し「下腹部の筋肉が見えれば見える程寄ってくる(全盛期Tumbrなのでそれなりのイケメンで筋肉質なら素人でも10,000~5,000リブログが叩き出せた)」「下毛が見え始めても結構踏みとどまる(ただし半減まではいく)」「竿の付け根が見え始めてもリブログ数が100~10未満にはならない」なるデータを統計的に有意なレベルで叩き出したものである。ちなみに今日では「全裸ウルヴァリン」と併せ、どちらも痕跡も残してない。韓国芸能界の自粛と重なって最も執拗に焼かれた領域となったのである。
ところで私の様な女性向けエロ画像Diggerには、概ね「第三世代フェミニスト」と相互フォローの関係にあった。「おっぱいタンブラー」は原則として(大元の引用サイトに近く投稿数も多い代わり分類も大雑把な)上流から(特定の性壁に刺さる画像だけが厳選された)下流へ一方的フォローが続く構造になっていたから、これは例外的構造に該当する。
もう一つの指導案件が「過度に苦悶の表情を求める自分の傾向が意識出来てなさそうな場合」で、我々が流れの中に本物のSM画像を混ぜると合図と察してカッ飛んできて「女性にも性欲同様に攻撃欲や嗜虐心がある事」をきっちり教育していたものである。当時、女性がその攻撃欲や嗜虐心を爆発させる最悪の事案として著名だったのが、2PMのメンバーながら韓国系アメリカン人ゆえに脱ぐのに躊躇いがあったパク・ジェボムがライブでファンから怒号を浴びせられ、仕方なく嫌々脱ぐYoutube動画で、これがさらに「たまらない」と好評で物凄い数の参照数を集めていた。まさにレイプに次ぐセカンド・レイプの世界。その上、米国時代ネット掲示板に韓国の悪口を書いていた事実が発覚するとファンが「死ね」「自殺しろ」を連呼してメンバー脱退、帰国に追い込んだのだから精神も病もうというものである。
幸い私の所属していたアニメ漫画Game系コミュニティにおいては、これほど酷い暴走はそうそう見受けられなかったが、もしかしたらそれは所属女子アカウントの多くが西尾維新「物語シリーズ(2006年~)」のファンであり「羽川翼-ブラック羽川-火虎」「千石撫子-白蛇神-押入れに隠された謎ノートの山」の関係を熟知していたからかも。
そのくせ堀越耕平「僕のヒーローアカデミア(2014年~)」で好きなヒロインのアンケートを取ると決まって「優等生タイプ」蛙吹梅雨が優勝を飾った辺りに彼女達の現実の日常生活とTumbr上に曝している姿の乖離が透けて見えたものである。
ちなみに彼女達が「自分達の間で最もメジャーな性癖」を明らかにしようとしたら「十分な睡眠をとって、肌も髪のキューティクルもツルツルの自分が好き」という答えが出た事があった。「美味しいものを食べたいだけ食べる」がランキングし得なかったのは拒食症女子の「フェイク飯テロ」でしばしば場が荒れたのがノイズとして作用したせいであろう。公式自体が自殺・自傷・拒食症の扇動を禁止した結果「セーラームーン」で月野うさぎが体重計に乗って「また太っちゃった」と嘆く場面すら自粛によって消え去ったくらいだった。
それでは心の渇きが癒せない女子アカウントが群がったのが浅野いにお「うみべの女の子 (2009年~2013年)」「おやすみプンプン (2007年~2013年)」で、これも「第三世代フェミニスト」の監視対象となっており適宜出動しては「心を病むと心を病んだ人々を周囲に引き寄せいる様になる。この惡循環から抜け出す事」「薬の服用で楽になれる事もあるので、しかるべき人に相談して薬を処方されたらそれを飲み続けなさい」といったアドバイスを与えていた。はっとりみつる「さんかれあ(2010年~2014年)」もそれなりには騒がれたが、この筋が最終的処方として選んだのは、何といっても「内から込み上げてくる悪しき衝動と睡眠で戦い、与えられた薬はきちんと飲む」吾峠呼世晴「鬼滅の刃(2016年~2020年)」の竈門禰󠄀豆子だったのである。
そんな感じで以下続報…