♪巡る、巡る、時代は巡る〜
今回の投稿の発端は以下のTweet。
国際的エンターテイメント市場には「トワイライト・サガの悲劇」なる概念が存在します。「ヒロインはイケメンの吸血鬼とイケメンの狼男のどちらを選ぶのか?」なるジレンマで世界を席巻したにも関わらず、吸血鬼を選んで以降の展開が単調になってたちまち人気消滅。https://t.co/39Us58h1QX
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
この様に「作中で決して解決してはならないジレンマ」問題は数多く存在します。例えば「70年代うる星やつら」から「80年代うる星やつら」への乗り換え期…https://t.co/VYgtuirm6U
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
当時の作品に数多く見られる「毒婦と貞婦を峻別する旧価値観」を、この作品は「意外と一途な毒婦」「意外と浮気性の貞婦」なる概念の導入によって乗り越えていった訳ですが…(「乗り越え後の世界」観に立脚する令和版アニメではほぼ全削除)。 pic.twitter.com/p5dF6PUNjB
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
定期連載開始による「新キャラ」面堂終太郎追加を契機に新たな構造が導入されたのです。 pic.twitter.com/OZWkcSyt0N
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
まぁ「意外と浮気症のしのぶ」は、案外そのままの射影(令和版アニメは当時の等式「結婚=出産」を巡る展開を大幅削除)。 pic.twitter.com/53DqYgvdYo
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
「金持ちは金持ち同士で結婚するのが一番」は「コンピューターの客観的判断」として登場する一方で、面堂終太郎側も時々仄めかしたりしています。 pic.twitter.com/Yd8hfeZb31
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
「貧乏人は貧乏人同士で結婚するのが一番」については、あたるがしのぶを引き留める方便として熱弁を振るう回がありますね。 pic.twitter.com/iidAkGXu5Z
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
「それまで身の回りにいなかったタイプが気になる」展開は金持ちが貧乏人に惚れる方便としてしばしば用いられ、作中でも面堂終太郎が口にしています。ラムちゃん自身は「どうしてあたるを選んだか」主観的に口にする事がないので「みなしそう考える事も出来る」程度の推察。 pic.twitter.com/RJWd4X4fFf
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
ところで1980年代は第二世代人工知能ブームの最中であり、歴史のその時点における「うる星やつら」のこうした構造に注目したルールDB化も試みられたのです。https://t.co/kCYqPRNTZR
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
オリジナルのルールDBエンジンは海外製でシェークスピア「お気に召すまま」を題材とした内容。従ってチューダー朝時代の常識に従って無難に「結局は同じ身分同士の結婚が一番だよ」なる結論に到達します。https://t.co/vosvJfdqGc
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
しかしこの「うる星やつら」は「あたるはラムと、面倒はしのぶとくっつくのが良い」という結論に到達させる為に強引に新規ルールを導入しました。冒頭で述べた「トワイライトの悲劇」回避条項、すなわち「金持ちが金持ちと、庶民が庶民と結婚するありふれた結末を禁止する」なるルール追加。
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
確かに重要な先例がありました。一時期全米を制した「ポリアンナ物語」が続編「ポリアンナの青春」で上京して「軽薄な都会の恋愛文化」に翻弄されて帰郷し幼馴染と結婚すると、たちまち人気が凋落してしまったのです。https://t.co/GBxxZayCdG
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
これに執筆開始時点ではポリアンナ・シリーズと同様の数学的構造だったのに(その人気凋落を目の当たりにしたからか)主人公を「貞女」メラニーから「毒婦」スカーレットに切り替えて大成功を収めたマーガレット・ミッチェル「風と共に去りぬ」が続きます。https://t.co/tPPHiUnw8d
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
しかしながら(高橋留美子の鋭い嗅覚が「デッドポイントへの接近」を察知したのか)「うる星やつら」がこうした数学的構造を下敷きにしていた時期は思うより短く(おおよそ1980年~1981年)、たちまち別の展開へと推移。一方、ルール・ベースDBをこの様に用いるアプローチそのものが1990年代には終焉…
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
×しかしこの「うる星やつら」は○しかしこの「うる星やつら」DBは。当時Plolog入門書にコーディング例が掲載されたので実際に打ち込んで動かしてみましたが「(統計的事実に基づく)ありふれた結論」を例外設定により強引に回避する追加仕様のせいで動作が滅茶苦茶ピーキーに。
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
まぁ「人工知能の歴史」には、そういう逸話もあったというエピソード。第二世代人工知能のブームが去った後、当時はもっと酷い振る舞いしかしてなかったニューロン・コンピューティングの分野がパラダイム・シフトを起こして今の機械学習全盛期に至る訳ですが…
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
さて、今回はこの壁をどうやって乗り越えるのでしょう?そんな感じで以下続報…
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
ちなみに途中で紹介した「あたるがしのぶの面堂終太郎への接近を牽制する熱弁」の一説が英訳に際して格好良く翻訳され、時代を超越して国際的に愛用されるmemeに。曰く「特権階級が別世界で(のうのうと)暮らしてる限り、封建時代は終わらない」。カール・マルクスの著作の一節か何か? pic.twitter.com/FJnTQhPwLD
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
まぁ、そもそもこのあたりの感覚をどう人工知能に実装するかという「宿年の課題」だったりもする様です?
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年1月17日
そんな感じで以下続報…