@asama_uru あれは映画じゃなくて体験なので。ものすごい密度だし、それが作品である以上すべてに演出意図がありますから、延々と意味を考えてしまう。
— 木村航/茗荷屋甚六 (@J_Myougaya) 2016年11月13日
原作読破組としては、この試写会会場の写真で一瞬、見に行く気力が萎えそうになりました。右手…
でも気を取り直して、初日に鑑賞してきました。「早回し展開なのにゆったり時間が流れていく」って、どういう事? 今年の劇場アニメは本当に豊作…
(以下ネタバレあり)
真木代表のお話ではクラウドファンディングの目的の二つ、資金調達とプロモーションのうち『この世界の片隅に』ではプロモーションのためにクラウドファンディングをやろうと思っていたそうですが、製作委員会がなかなか決まらないので製作現場とのタイミングが合わず、まずクラウドファンディングをやってみることになったそうです。
やってみたらば10日足らずで目標額の2160万円を達成しファン=将来の観客の存在を確実な数字として示すことができたため、配給会社が決定し製作委員会も組織されることになったそうです。
原作はたいへん素晴らしい作品であり文化庁メディア芸術祭漫画部門で優秀賞受賞といった客観的な評価を得ているのですが、映画に出資してもらうには、お金を出して観に来るファンはどれぐらいいるのか? という心配が製作委員会を組織する法人、スポンサー側にある、これを払拭しないといけないわけですね。いい原作と原作の良さを丁寧に再現し何倍にも引き出すいい監督が揃っていても、アニメ作品の場合はこのように困難が伴うんですね。
まず、 作品完成に至る流れ自体が独特なのが凄い。それ故にエンディング・テロップも別物状態で吃驚…
まだ予告編画像しか流れてないけど海外では「戦時下のLove Story」みたいな受容のされ方をしてる模様。そういう部分や主婦同士の付き合いみたいな日常描写は、原作者(女性)がしっかり調べ込んだ上で現代人にも共感可能な形に再構成されており、片渕須直監督もそのエッセンスを実に丁寧に抽出して映像化しているので正直、宮崎駿監督作品「風立ちぬ(2013年)」より出来が良く、かつ戦前独特の雰囲気を的確に捉えているとも。
この世界の片隅には漫画が超好きなんですがエピソードの取捨選択が巧くて一本の話として見やすくなってた。逆に繋ぎ方を変えたり一部新しい演出もあって良かった。のでみんな見よう。あと原作も読もう
— 川科 (@kahasina9) 2016年11月12日
それから、片渕須直監督には欧米ではむしろ「アレーテ姫(Princess Arete、2001年)」の監督として知られている側面もあるので「女性の成長譚」として鑑賞される可能性もあり得る。時期的には「プリンセスチュチュ(Princess Tutu、2002年〜2003年)」の放映時期とも重なり、国際SNS上では「古株」等級(普通に結婚して、子供がいて「アニメファン」新世代育成に余念がなかったりする)。そういう2000年代前半もあったという次第。
その一方で20世紀に絶滅した「家父長的な父親や夫」は丁寧に排除されてますね。そもそもそんな存在、長谷川町子「サザエさん(1946年〜1974年)」はおろか、その原型に当たる「翼賛漫畫 進メ大和一家(1940年〜1945年?)」にも登場しなかった?
(町山智浩)リアルさで言うとね、これね、さっきから聞いている人で、たとえばスタローンの映画とか好きな人は「関係ねえや!」とか。『ガンダム』を好きな人とか「関係ねえや!」って思うかもしれないですけど。この映画は『ガンダム』が好きな人、絶対に見るべき映画なんですよ。『艦これ』見る人も、見るべきなんですよ。『ガルパン』とか好きな人も、見た方がいいですよ。
(山里亮太)ああーっ! 兵器出てきますもんね。
(町山智浩)兵器描写が超リアル! すっごいですよ。
(山里亮太)大和とか、めっちゃくちゃ……
(町山智浩)大和とかもリアルだし、すっごいきっちり描き込んである上に描写がリアルで。米軍機が、要するに空襲しに来るんですよね。で、それをこっちから高射砲、高角砲っていうので撃ち落とそうとするんですけども、空中で砲弾が爆発するんですよ。それで、その破片で敵機を落とそうとするんですけど、その破片が地面に降ってくる感じがすっごいリアルで。ピュンピュンピュンピュン!って降ってきて、瓦とかを打ち破ったりとか。あと、米軍のB29爆撃機が飛んでくる時にB29っていうのはものすごい高い空を飛んでくるんですよ。で、あまりにも高すぎて、日本軍はそこまで上がれないんですよ。だからもう、どうしようもないんですけど。すごく高いかららしいんですけど、ターボプロップエンジンっていうエンジンの独特の飛行機雲が出ているんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)だからあのシーンで、「あれは、初めて見る!」って言うんですよ。
(山里亮太)言ってました! 言ってました!
(赤江珠緒)ああー、そうなんだ。
(町山智浩)すっごいそういうところがすごくて。いちいち、これは監督の片渕さんがもともとそういう人なんですよ。この人は『魔女の宅急便』のスタッフだったし、そういうメルヘンチックな映画も得意なんですけども、その一方で『BLACK LAGOON(ブラック・ラグーン)』っていうものすごいリアルな銃撃戦アニメも監督していて。しかも、『エースコンバット』っていう戦闘機の空中戦ゲームのアニメの監督もしている人で。この人、航空マニアで。すっごいマニアなんですよ。
(赤江珠緒)あっ、そうか!
(町山智浩)だから戦闘シーン、超リアルなんですよ!
(赤江珠緒)たしかに。ねえ。
(町山智浩)機銃掃射のシーンとか、すごくリアルで。甘く見ちゃいけないっていう感じになっているんですよ。
確かに、こんなにもF6Fヘルキャットが怖いと思った映画は初めてだったかも。そもそもよく考えてみればこれ、終戦まで1000馬力強の域を出なかった日本の戦闘機に対して2000馬力のエンジンを搭載。零戦に匹敵する空戦性能と重装甲を両立させた化物。他にもP-38ライトニング(Lightning)の様な零戦と対抗し得る機体が次々と投入され、大日本帝国は制空権を失陥。
武装としてはブローニング M2 12.7mm 機関銃を6挺搭載。巴戦中の高荷重で弾詰まりを起こしやすいので多めの装備となってますが、これが対地攻撃に投入されて一斉に火を吹くと面を耕します。子供の頃に実際の経験者から話としては聞いてたし、様々な映像化作品でも目にしてきた訳ですが、これが「それまでほのぼのとした日常に突然割り込んでくる闖入者」として登場すると、実に禍々しい。それに加えて250キロ爆弾(時限式地雷弾)に焼夷弾…
色を絶たれた夢、色のついた夢
*ちなみに「この世界の片隅で」で広島や呉の町並みを眺めてるうちに、韓国映画「ブラザーフッド(2004年)」を思い出した。朝鮮戦争(1950年〜1953年)が始まる直前のソウル(京城)は、まさしく本土では大半が空襲で瓦礫の山と化した当時の典型的日本式都市そのもの。日中戦争以来続いてきた戦争特需を追い風に受けて百万人都市まで成長し「大京城」と号する様になるも、やはり戦争によって瓦礫の山へと変貌してしまう。上空を所狭しと飛び回るのはF6Fヘルキャットに代わって米軍の攻撃爆撃主力となったF4U コルセア(Corsair)。かくして冷戦の時代が幕を開ける。
以下みたいな指摘もあるけど、戦前から終戦直後の日本人は恐ろしく分断された世界に生きていて、ヒロインのすずさんが遊郭のある区画に迷い込むのも偶然だから仕方のない側面もあったりして。
広島は戦前から軍需工場が多くて、そこの下請けで働く朝鮮流民があちこちでスラム作ってたんだよ。「朝鮮人がいない広島」を描いてる「この世界の片隅に」のほうが「都合の悪いものを消去したファンタジー」なんだよ
— eternalwind (@juns76) 2016年11月18日
それにしても岩井俊二監督作品「リップヴァンウィンクルの花嫁」といい、最近は「なんとなく現実から遊離したふわふわ系ヒーロー / ヒロインが、それゆえに壮絶な世界を生き延びていくサバイバル物」が確実に増えてますね。20世紀にはモーリス・センダック「かいじゅうたちのいるところ(Where the Wild Things Are、1963年、映画化2010年)」、 ベルナルド・ベルトルッチ監督作品「ラストエンペラー(The Last Emperor、1987年)」、J・G・バラード原作・スティーヴン・スピルバーグ監督作品「太陽の帝国(Empire of the Sun、原作1984年、映画化1987年)」みたいな「全く常識の通用しない異世界を彷徨う少年の物語」中心だったジャンルが、今や「過酷な日常の中に自分の居場所を見つける女性達の物語」中心に。これが2010年代後半のトレンド?
それはそれとして…
「この世界の片隅に」観た帰りに余韻で泣きながらアニメイト寄ったら、入り口で大量のユーリ表紙PASHを手に取った女子が「私この人好きー!」とか言ってるし階段のユーリパネルのとこで「クリス好きー」とか言ってるし追い討ちをかけて泣いた…どっちもMAPPAさんありがとう…
— 久保ミミツロウ (@kubo_3260) 2016年11月12日
『この世界の片隅に』昭和20年の呉市は、このあと『仁義なき戦い』の舞台に。もしかすると闇市ですずさんが啜ったのは田中邦衛による「何でも入れればええんじゃ!」雑炊かもしれないし、続く山守組抗争の背景にもすずさん一家が生きていると思うと、今後の『仁義なき』鑑賞時の視点が広がるかも。
— Yakitito (@Yakitito) 2016年11月12日
こまい
— 青木俊直:キチムシグッズ通販中 (@aoki818) 2016年11月13日
「この世界の片隅に」だと小さいことの可愛さや愛おしさが感じられるけど
「仁義なき戦い」だとチンケとかみみっちいって感じの意味合いだ
世界はこういう具合に一つながりになってるのか…