諸概念の迷宮(Things got frantic)

歴史とは何か。それは「専有(occupation)=自由(liberty)」と「消費(demand)=生産(Supply)」と「実証主義(positivism)=権威主義(Authoritarianism)」「敵友主義=適応主義(Snobbism)」を巡る虚々実々の駆け引きの積み重ねではなかったか。その部分だけ抽出して並べると、一体どんな歴史観が浮かび上がってくるのか。はてさて全体像はどうなるやら。

【生きる(1952年)】【ゴジラ(1954年)】【生きものの記録(1955年)】「志村喬のあの独特の眼差し」について

 昭和20年代(1945年〜1955年代)の黒澤明監督映画に欠かせない名優、志村喬。一般には「酔いどれ天使(1948年)」「野良犬(1949年)」「醜聞 -スキャンダル-(1950年)」「7人の侍(1954年)」における三船敏郎との共演が有名ですが、この人物の演技にはもう一つの系列が存在するのです。

  • 黒澤監督映画「生きる(1952年)」における「残り僅かとなった与命をを賭して汚水溜まりの埋め立てと公園建設を完遂し、楽しそうにブランコを漕いで歌いながら死んでいく市民課の課長」。
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  • 特撮怪獣映画「ゴジラ第一作(1954年)」「ゴジラの逆襲(1955年)」における「古生物学者としてゴジラ殺処分に反対し、むしろその脅威の生命力を研究対象にすべきだと主張する山根恭平博士」。
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  • 黒澤監督映画「生きものの記録(1955年)」における「家庭裁判所の調停員として原水爆への神経症的恐怖から悲惨な末路を遂げる家父長(三船敏郎)の目撃者となる歯科医」。
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ここで連続性を生み出しているのは「あの独特の目の演技」。それはある意味、興行成績的にはパッとしなかった「白痴(1951年)」におけるムイシッュキン=亀田欽司(森雅之)の怨霊と呼ぶべき存在だったのかもしれません。
ムイシュキンの謎 『謎とき白痴』(江川卓 新潮社 1994)を読んで

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【レッドタートル】【百獣の王】「フランス文化圏」とはどの範囲?

「マリアージュ -神の雫・最終章-」に「ローザンヌ国際バレエコンクール」の話が出てきました。その本拠地はフランスと思わせておいてスイス…

ローザンヌ国際バレエコンクール (仏: Prix de Lausanne)

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スイスのローザンヌで毎年行われる、15歳から18歳までのバレエダンサーを対象としたコンクール。スイスの非営利法人である舞踊振興財団(Fondation en faveur de l'Art chorégraphique)によって1973年から開催されている。ヴァルナやモスクワなどの旧来のバレエコンクールとは異なり、若手ダンサーにキャリア形成につながる道筋を開くことを目的に掲げている。

  • すでにプロとしての活動実績がある者や入団が決まっている者は参加資格がない。

  • 結果のみで審査する旧来のコンクールとは異なり、参加者にクラスを受講させ、それ自体も審査対象としている。このクラス審査による評価は準決戦までの各参加者の評価点の半分を占める。決戦も含め、審査では「プロのバレエダンサーとして成功する能力があるか」に重きが置かれている。

  • 賞を授与するだけのコンクールとならないように、様々な工夫がなされてきた。現在では参加者全員に対して、選択したヴァリエーションごとに著名ダンサーによる個別の指導が行われている。入賞に至らなかった参加者に対しては、提携バレエ学校およびバレエ団と留学の相談ができる機会が設けられている。

  • 世界の著名なバレエ学校33校およびバレエ団32組織と提携しており、主たる賞であるローザンヌ賞でこれらに無償で留学・研修することのできる権利を生活支援金とともに授与している。

こうした内容から歴代の受賞者の多くがプロとして活躍する様になり、若手バレエダンサーの登竜門の一つと考えられる様になった。

  • スイスの実業家フィリップ・ブランシュワイグは、妻エルヴィ・クレミスがバレエダンサーだったことからモーリス・ベジャールやロゼラ・ハイタワーと長年親交があり、ベジャールの20世紀バレエ団の公演をラ・ショー=ド=フォンで実現するなど興行師としての実績があった。

  • 1969年、ローザンヌにおける舞踊公演の促進を目的とする舞踊振興財団が設立されると、設立に関与したG・クライネルトはブランシュワイグにも参加を求めた。

  • 1970年に同財団の理事となったブランシュワイグは、舞踊の世界では個々のダンサーが声楽家など他の領域の芸術家に比べて経済的に不利な立場に立たされている実情を知っていたため、ダンサーを支援する最善の方法を求めて、1972年初頭から知己のベジャールとハイタワーに相談。その結果、若手ダンサーに世界的に知名度のあるバレエ学校で学ぶ権利を賞として授与するコンクールをローザンヌで創設することを決意した。

  • レッスン審査を含む予選と、準決戦・決戦の合計3段階で絞り込む選考方法はブランシュワイグ夫妻がハイタワーと相談して決定した。さらに入賞者の留学の受け入れ先として、当時ブリュッセルにあったベジャールのムードラ・バレエ学校、カンヌのハイタワーの学校、さらにロンドンのロイヤル・バレエ学校の3校に協力を求めて賛同を得た。

  • 第1回のコンクールは1973年1月19-21日にローザンヌ市立劇場で実施された。当時の参加年齢は15-19歳で、参加者はクラシック・ヴァリエーションと、コンクール用に新たに振付けたフリー・ヴァリエーションを1曲ずつ準備して参加するというものだった。

  • 第3回(1975年)からは実施会場がローザンヌのボーリュ劇場となり、提携校も次第に増やされていった。その後コンクールとしての国際的な知名度を高めるため、例外的に1985年にはニューヨーク、1989年は東京、1995年はモスクワで決選が開催された。

日本では1980年から2005年まで、舞踊振興財団の支部にあたる日本事務局が東京に置かれ、山田博子が代表となって参加希望者の問い合わせに応じるなどの支援にあたった。以来日本からは継続的に参加者が出ており、現在までほぼ毎年の受賞者を出している。これまでに吉田都熊川哲也上野水香中村祥子ら70名以上が受賞した。また、日本国籍を保持していながら、多重国籍で他国から出場し優勝、入賞した者として、オニール八菜(ニュージーランド)、ミコ・フォガティ(スイス)などがいる。なお1989年の東京開催では、準決戦と決戦を日本で行うことによる費用として約6,000万円がかかり、富士通や日本児童手当協会、文化庁NHKなどがこの一部を負担。

この話、以前悩んだ「バンド・デシネ(bande dessinée)はどこまでフランス作品?」という問題と絡んできそうです。

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【シン・ゴジラ】【ゴジラ対ヘドラ】現実的な結末はどっち?

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庵野秀明監督映画「シン・ゴジラ(2016年)」には、ある種の「踏み絵効果」があるとされています。

  • ゴジラ(1954年)」の結末…若き天才科学者芹沢大助博士(平田昭彦)の決死の尽力によってゴジラの1匹が確実に倒されるも、山根恭平博士(志村喬)が「あのゴジラが最後の一匹とは思えない。もし水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類がまた世界のどこかへ現れてくるかもしれない…」と呟いて終わる。

  • シン・ゴジラ(2016年)」の結末…(とりあえず当面は原子力との共存を考え続けねばならない人類の現状を反映して)おそらく地上に1匹しか存在しないそれが、東京のど真ん中で一時的に機能停止する(何時活動を再開してもおかしくない)という結末を迎える。

ちなみに「シン・ゴジラ」の展開が「全然現実的でない正義が全く実践されてない」と口汚く罵る層は「ゴジラ対ヘドラ(1971年)」の結末を好むとも。

  • ゴジラ対ヘドラ(1971年)」の結末…「公害から生まれた怪獣へドラ」の襲撃を恐れるあまり、日本政府はあっけなく全発電所を停止。工業文明と自動車文明を全面放棄し「本当に人間らしい生活」へと回帰する。ちなみにへドラ退治後、結局元通りになった日本を再びへドラが襲う続編の企画もあって、それを示唆する場面もある。
    *国防上頼れそうなのはゴジラくらいだけど、そのゴジラがラストシーンで「今度は俺が人間を殺す番だ」と言わんばかりの勢いでこちらを睨み返し牙を剥く。そういえばゴジラも「人類の傲慢が生み出した災厄の一つ」で、必ずしも人間の味方とは限らない。そういう展開。


    *この結末、東宝がライバル視する東映が制作した「ジャイアント・ロボ(1967年〜1968年)」最終回への当て付けという側面があったとも。

これが理想的結末? ちょっと待ってください。「ゴジラ対ヘドラ」には、さらに当時流行した「若者否定文化」の一環という側面もあったのです。、ちゃんとその事、御存知なんですか?

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【アニメーション黎明期】日本であまり知られてない「ディズニーのハロウィン恐怖短編」

映画のトーキー化はハリウッドにおいて、怪奇映画の人気を引き上げました。

そしてトーキー化と怪奇化の波は当時、短編アニメーションの世界にも押し寄せたのです。Sound Cartoonと銘打たれたこれらの作品群は、その多くが今でも面白がられ続け、ハロウィンの折などに頻繁に回覧されれていたりします。

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Mickey Mouse - Haunted House (1929)


Mickey Mouse  The Gorilla Mystery(1930)

Mickey Mouse Cartoons - The Mad Doctor(1933年)

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【心の御柱】【死者の日】21世紀より始まる伝統について。

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21世紀における諏訪大社御柱祭。7年に一度しか開催されないので、間をつなぐべく「おんばしら館よいさ」が建てられ、シミュレーション設備も完備。 正式名称は正式には【木落とし体験装置】。ネット上にはVR化を望む声もちらほら。

(三浦亘 2016年3月16日03時00分)
坂の上にせり出した御柱が、落下するその瞬間、またがっていた御柱が急角度に上昇した――。御柱祭下社山出しの最大の見せ場「木落し」を疑似体験できる装置の引き取り検査が15日、下諏訪町の春宮近くで建設が進む「おんばしら館よいさ」であった。

よいさは、総工費約2億5千万円をかけて昨年7月に着工した。誰でも木落しの臨場感を味わえるようにと、そのよいさに約2600万円をかけて設置されたのが、木落し体験装置だ。

3人乗りで直径40センチ、長さ2・8メートルの丸太に手すりと安全ベルトを付け、電動シリンダーで傾斜角15度まで昇降させる。大画面に映し出される映像は、前回2010年の木落しが使われている。御柱にまたがった氏子らが次々に振り落とされて、左右に飛び散っていく様子から、木落しの迫力を体感できる。

検査で試乗した青木悟町長は「リアルな感覚を多くの観光客に味わってほしい」。

よいさのオープンは4月24日。入館料300円(小中学生200円)で、木落し体験装置は別に200円の予定。

案外こういう展開が馬鹿に出来ないんです。大祭は大勢が集まって騒いでこそなので、最初から商業主義と根深い関係を結んできました。大口寄進者の名前がズラッと掲示されるのなんて、まさしくCMの起源。そしてさらにこんな展開も。

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【君の名は】【都会VS田舎】世界中に偏在する「超えられない壁」

新海誠監督作品「君の名は(2016年)」の海外封切りが順調そうで何よりです。国際SNS上の関心空間における人気も上々。ただし、かえってそれは世界中に潜在するとある問題をかえって浮き彫りにしたという側面も…

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実際に挙がってる実例を拾うともうね…

まぁとにかく結論はこれ。

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作品の主題が「地方と田舎の対峙」だし、海外展開が都心の映画館中心なせいで世界中の「田舎」の人が拗ねてこういう展開に。そしてさらに「田舎」間にも、こういう遊びに参加できる「伝統ある田舎」と、そうでない田舎の絶対格差が… 

【モスク襲撃事件】アメリカでは成立してしまった「リベラル派とマスコミ」=「インテリ・ブルジョワ独裁体制」=「言論統制と弱い者苛めを武器とする、ネオナチを同族嫌悪する奴等」という等式

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カナダのモスク襲撃事件「黒人が犯人」は誤報だった模様。でも話は余計に厄介な方向に展開。「フランス系」という新たなファクターが登場してきてしまったのです。今度はルイジアナ州のケイジャン(Cajun)が新たにネオナチの仲間入り?

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  • そもそもアメリカのリベラル派の間違いの大元は(デモに便乗して近隣の商店街を略奪したり、Facebook拷問Live事件を引き起こしたりする)Nation of Islam残党崩れのBLM(Black Lives Matter)急進派を擁護する代償に、連中が敵視するBlack Establishment層、すなわち(格差是正措置(affirmative action)の自主撤廃を申し出たり、フェミニズム運動に賛同したりする様な)リベラルな黒人層を敵に回してしまった事。なにせBLM急進派といったら、大統領就任式でオルタナ右翼(Alt-Right)祝賀会を主撃したり、高級車を焼いたり、大手チェーン店を襲撃したりしたオルタナ左翼(Alt-Left=チンピラ無政府主義者(Anarcho-punk))連中からすら「あんな連中が味方だなんて冗談じゃねぇ!!」と切り捨てられた狂犬揃い。そもそも「男尊女卑は黒人の伝統文化」とか言い張って黒人女性一般も敵に回してるギャングもどき連中。日本のリベラル層の大半はあっけなく所謂「しばき隊界隈」を明示的に切り捨ててのけたが、要するにそれをしなかったらどれだけ矛盾が噴出して大変な事になったか現在身をもって証明しつつあるのがアメリカのリベラル層といえるかもしれない。
    *今から思えば、BLM急進派は「ハロウィン時期にネットにインディアンのコスプレを投稿した白人の少年少女などをアカウント削除に至るまで苛め抜く運動」などにも積極参加していた。Facebook拷問Live事件でも見て取れる様に、Black Establishment層からの告発によれば「弱い者達が夕暮れ、さらに弱い者達を叩く」のが基本的行動原理なのだという。

    detail of a one-page comic i’m submitting to... - i knew you so briefly you dead soap dog

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  • もう一つの問題点はWhite Peopleなら全員インディアンやインディオを虐殺し、黒人を奴隷化してきた歴史の連帯責任者で、略奪しても強姦しても殺しても罪にならないと考えている発想の粗雑さ。むしろナチス的優越主義の域にあるとさえ指摘される事がある。もっともこれは、マスコミがマフィアやヒスパニック自警団と黒人ギャングの衝突すら「白人と黒人の衝突」と報道して「またもや黒人の権利が脅かされている」と書き立てて思い上がらせてきたマスコミやリベラル派の粗雑さにも責任の一端がある。
    *BLM急進派は、マスコミやリベラル派が敬意を払っているのは「黒人公民権運動の爪痕」に対してだけで、黒人そのものは相変わらず内心では同じ人間と認めていないと考え、彼らすら「白人の例外」と認めてない。その一方で彼らへの「えこひいき」が他のマイノリティの間にマスコミやリベラル派に対する不満を鬱積させてきた。こう考えてみると、リチャード・ホフスタッターが「アメリカの反知性主義(Anti-intellectualism in American Life、1963年)」の中で「傲慢なインテリ=ブルジョワ階層独裁体制は必ずや反動を引き起こす」と警告し、実際それにヒッピー運動と黒人公民権運動が続いた展開の再来は時間の問題だったとも。
    guns & puppies

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  • また今回の「イスラム教国7カ国からのビザ発給/入国禁止反対運動」において、ネット上で比較的目立つのはユダヤ系市民団体の動き。だが彼らはパレスチナ問題も抱えてるし、多くのイスラム諸国ではイスラエルへの反感からユダヤ人に差別的政策を敷いてるし、ヒスパニックの間では「スペインはユダヤ教徒イスラム教徒も追い出した国」なんて投稿が回覧されていたりする(どういう意図が込められているかまでは不明)。
    *かえって「リベラル派の偽善性」を象徴する振る舞いとも。近年ではリベラル派の間にも(反資本主義の立場から)ユダヤ人嫌いが蔓延しており、こうした振る舞いがそもそも「身内」からすら高く評価されていないのがなんとも。

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    *日本でいうと沖縄問題にはあれほど拘泥するリベラル派がチベットウイグル内モンゴルにおける弾圧には無関心で「チベットウイグルもモンゴルも古代から中国の領土であり、余計な口を挟むのは内政干渉」という中国共産党の立場を無条件に支持しており、現地の人間から「日本ではリベラル派こそ帝国主義者」と陰口を叩かれてるのを思わせる。ところでアメリカのユダヤ人はシオニスト派と反シオニスト派に分裂しており、おそらく上掲の運動の主軸となってるのは反シオニスト派。こうした足並みの乱れが見られない分だけ「日本のリベラル派」は「アメリカのリベラル派」より全体主義的傾向が強いといえる。

もちろん今回の「イスラム教国7カ国からのビザ発給/入国禁止反対運動」がネット上で最初から盛り上がってなかったのは(自分たちの権利にしか興味がない)彼らBLM急進派が参加を見合わせたからだけではありません。そもそも、しばしば名前を聞くテロリストの多くはサウジアラビア出身。むしろ親米国こそ反動で過激派供給国となってる事実を一般アメリカ人はちゃんと見抜いており、「ムスリムも人間」と騒ぐだけのマスコミやリベラル層の偽善性だけでなく「(年寄り連中の政策を継承し)効果の薄いありきたりの手しか打たない」トランプ政権の初動にも失望した感があります。
*日本ではあまり知られてないが、在米ムスリムの中には同性婚合法化支持を打ち出して中道派への仲間入りを果たしたリベラルなグループが存在する一方、彼らを「堕落した」と執拗に攻撃し続ける守旧派勢力も存在する。「中道派のサウジアラビアパキスタン嫌い」はこういう次元の対立も含んでいるので実にややこしい。その一方で(昨年の選挙でトランプ候補に投票し、インタビューで「イスラム教国7カ国からのビザ発給/入国禁止を支持するか?」と聞かれてYesと答える)中道右派の若者層は、彼らの大嫌いな伝統的共和党支持層に媚を売り、大統領令乱発という急進的手段で国を変えようとするトランプ大統領への失望感を深めている。こうした声を拾って自らの動力に加えられない辺りにアメリカのマスコミやリベラル層の致命的欠陥が潜んでいるのである。

「ロッキー(Rocky、1976年)」「ドゥ・ザ・ライト・シング(Do the right thing、1989年)」「グラン・トリノ(Gran Torino、2008年)」といった傑作群はこうしたアメリカの現実を直視する立場から生まれてきた訳ですが、まだ「ムスリムとの現実的関係」を主題とした傑作は未登場。案外こういう辺りがネックになるのがアメリカ。
*それをいうならロシア系やヒスパニック系も微妙な立場。一応前者にはナボコフの「ロリータ(Лолита - Lolita、1955年)」が、後者にはガルシア=マルケスの「百年の孤独(Cien Años de Soledad)」があるのだけれど、とにかくアメリカにおいて黒人やユダヤ系移民や南イタリア系移民やアイルランド系移民ほどは「文化的強者」ではない…

「パラノーマン ブライス・ホローの謎(Paranorman、2012年)」

あるいじめられっ子の言葉「強い奴が弱い奴を苛めるのは単なる自然現象で、僕も強い側に生まれついてたら弱い奴らを苛めてた。ただそれだけの話で、いちいち腹を立てるだけ馬鹿らしい」

国際SNS上の関心空間上では黒澤明監督映画「生きる(1952年)」で市民課の課長(志村喬)が口にする「誰かを憎んでる時間も惜しい」という台詞も人気。どうやら反PC(Political Correctness)と漸進主義でまとまった米国中道派の掲げる正義は、こういう方向にまとまりつつある様なのです。

思ったより「(リチャード・スペンサーらを盟主に仰ぐ)オルタナ右翼(Alt-Right)」と「(「絶えず冗談を言い続けることで自分をHighに保っているが、その実何も信じてないニリリストの若者層」を中心とする)中道右派」が重なってないという事は、これからアメリカにおける動きは欧州の様に「世代間対立」の様相を一層深めるという事なのかもしれません。
中道右派中道左派が唯一折り合えないハードプロブレムが「銃規制問題」。流石のトランプも大統領でこの問題に手をつけるほど馬鹿ではなかった。逆に(年寄りの宗教右派に媚を売って)中絶問題に手をつけた事はじわじわボディーブローの様に効いてくるかも。

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