諸概念の迷宮(Things got frantic)

歴史とは何か。それは「専有(occupation)=自由(liberty)」と「消費(demand)=生産(Supply)」と「実証主義(positivism)=権威主義(Authoritarianism)」「敵友主義=適応主義(Snobbism)」を巡る虚々実々の駆け引きの積み重ねではなかったか。その部分だけ抽出して並べると、一体どんな歴史観が浮かび上がってくるのか。はてさて全体像はどうなるやら。

【放射能イメージの源泉】「宇宙からの色」と「三十棺桶島」の同時代性について。

まさしくH.P.ラブクラフト異次元の色彩(The Colour Out of Space, 1927年)」の世界。

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ちなみにH.P.ラブクラフト異次元の色彩(The Colour Out of Space, 1927年)」の元ネタの一つは、当時実在したラジウム・ガールズRadium Girls)を巡る一連の報道だったとされています。

夜光塗料を時計の文字盤に塗ることで放射線中毒にかかった、女性工場労働者である。このような塗装作業はアメリカ合衆国内の3つの事業所で行われていた。1つめはニュージャージー州オレンジ(1917年頃から)、2つめはイリノイ州オタワの工場(1920年代前半から)、3つめはコネチカット州ウォーターバリーの施設である。ラジウム・ガールズ(Radium Girls)という語は、今ではこれらの施設で働いている女性を指す。

たくさんの労働者を救った「ラジウム・ガールズ」、その忘れられた物語

戦争が始まると、何百人もの労働者階級の女性たちが工場に集まってきた。ラジウム入りの塗料で、腕時計や軍用時計の文字盤を塗る作業のために雇われたのだ。ラジウムは、マリー・キュリーが発見してからまだ20年もたっていない新しい物質だった。

文字盤を塗る作業は、「貧しい労働者階級の女性たちにとって、エリートの仕事」だった。賃金は平均的な工場の仕事の3倍以上で、幸運にもその仕事にありついた女性たちは、全米の女性労働者の上位5パーセントに入るほどの報酬をもらい、女性の権利が発展していく時代の中で、経済的な自由を得た。女工たちの多くは、細かい作業にうってつけの小さな手をしたティーンエイジャーで、友だちや家族を介して新しい仕事の魅力を広めた。工場では、一家の兄弟姉妹が揃って働く姿もよく見られた。

ラジウムの発光も魅力のひとつだった。文字盤を塗る女工たちは、すぐに「ゴースト・ガールズ」として知られるようになった。というのも、勤務時間が終わるころには、彼女たち自身が暗闇で光るようになっていたからだ。彼女たちはこの仕事を最大限利用し、よそ行きの服を着て工場で働いた。そうすれば、その服が夜のダンスホールで光るからだ。歯にラジウムを塗る者までいた。にっこりすれば相手を虜にできた。 

「安全だ」と告げられ、放射性物質により死んでいった女性工場労働者たち

1898年、マリ・キュリーと夫のピエールはラジウム元素を発見し、ノーベル賞を2度受賞した。だがマリは1934年、放射線被曝によって死亡。化学者である彼女の死は、ラジウムがもたらした多くの破壊の1つにすぎない。

20世紀初頭から中旬ラジウムはあらゆる商品に使われた。衣類、歯磨き粉、医薬品、食料、化粧品…その輝きを人々が健康や生命力と同一視したせいである。当時はラジウムを入れた水を飲む人も多かった。

モーリス・ルブラン「三十棺桶島(L'île aux trente cercueils,1919年)」

当時の(だけでなく、今日の)読者にとって圧巻な のは「人を生かしもし、殺しもする神の石」の正体が「強力な放射能をもつラジウムの結晶」と解明される場面だろう。 今でこそ核兵器原子力発電で良くも悪くも身近な存在になっている「放射能」だが、第一次世界大戦当時では一般にはまだまだ知られていない最新の科学的発 見だった。家庭教師のステファーヌ=マルーに習っていた のか、賢いフランソワ少年はヒントを与えられただけで「ラジウムでしょう」と口にしている。

ルパンが科学解説記事をそのまま読んだような()ご丁寧な説明をしてくれるが(これももちろん読者への配慮だ)、放射性物質が放つ「放射線」を初めて発見したのがフランスの物理学者アンリ=ベクレル (Henri Becquerel、1852-1908)だ。1896年に蛍光を研究するうちウラン塩と写真乾板を暗室に一緒にしまっておいた らいつの間にか乾板が感光していたことから偶然ながら放射線の発見者となった。その後ピエール=キュリー(Pierre Curie、1859-1906)とマリー=キュリー(Maria Skłodowska-Curie、1867-1934)の夫妻が1898年に瀝青ウラン鉱(前述のように、これはチェコのヤヒモフで採掘されたもの)か ら強い放射線を放つラジウムポロニウムを発見・抽出し、ベクレルとキュリー夫妻は1903年にそろってノーベル物理学賞を受賞することになる。ベクレ ル、キュリーの名は今日でも放射線の単位として使われている。

『三十棺桶島』の年代である1917年は、こうした放射能の発見から10年以上経っており、ルパンのセリフから早くも「放射線治療」が広く行われていた こと が分かる。

「…ラジウムの放射によって、生物の組織に生理的な刺激を与えることができる のも、たしかなことです。それにより、ある細胞を破壊したり、ほかの細胞を発達させる効果があったり、その発達を規制する効力まであるので、生物の組織を かなり大きく変えることができます。そこでラジウム療法は、関節リューマチ、神経障害、潰瘍、湿疹、腫瘍、傷の癒着などの治療や回復のために、数多く利用 され、効果をあげているのです」(偕成社版、 513p

医療関係の知識はどうしても乏しいので自信はないのだが、ルパンによる放射線治療の説明は一世紀経った今もあまり変わらないのではないか?と感じる。調 べた限りでは現在はラジウムに代わってコバルト60が放射線源として使われているようだ。

ただし、ご存じのように放射線は人体に害も及ぼす。そのことはこの当時でもよく知られており、だからこそ「神の石」は「人を生かしもするが殺しもする」 設定なのだ。放射線の発見者であるベクレルが放射性物質をポケットに入れたままにしていたら腹部に潰瘍ができた、という話をルパンが紹介しているが、これは実話。ベクレルは1908年に56歳で亡くなっているが(偶然にもブルターニュ)、これも放射線障害が原因であったとされる。「キュリーも実験を繰り返し、同じ結果を得た」とルパンが語る ように、キュリー夫妻も放射線障害に侵されていて、夫のピエールは身体に不調をきたすうちに1906年に交通事故死、妻のマリーは1934年までとそこそこ生きたが白血病で亡くなっている。夫妻の研究ノートや実験室からは今も高い放射線が検出されるという場面を以前TVで見た記憶がある。

『三十棺桶島』における「神の石」は病気の治療のみならず植物を異常に成長させたり、一方で直接握った人の手にガンのような火傷を残したりとすさまじいまでの威力を発揮する。これにはさすがに家庭教師のステファーヌが1400トンもの岩石から1グラムのラジウムしか採取できないのに「神の石」のような2トンものラジウムの結晶を精製するには大変な手間と設備が必要なはずで、古代ケルト人にできたわけがない、とツッコミを入れている。実際キュリー夫妻も数 トンの瀝青ウラン鉱石からラジウムデシベルを抽出できた程度で「神の石」ほどのラジウムの巨大な塊はこの当時ではほとんどSFの領域だったと言っていいだろう。これを数世紀、恐らくはもっと長い長い時間をかけて自然が作り上げた奇跡として説明しちゃうのは逃げを打っている気もしなくはないが、それなり に合理的説明であろう。

発症と裁判

1922年、Mollie Maggiaさんという女工重篤な症状に陥った。彼女の体は見る間に腐り落ちていき、しまいには顎全体が落ちた。彼女はその年に死亡した。

ほかの女性達も同様の恐ろしい症状に苦しんだ。ラジウムは彼女達の骨をむしばみ、巨大な腫瘍を作った。彼女達の体は、暗い場所で発光さえした。

ラジウム・コーポレーションは過失を認めず、従業員は会社から金をかすめ取ろうとしているだけだと主張した。会社はMolly Maggiaさんをはじめとする女性達の評判を貶めようとし、彼女達の病状は梅毒によるものだと主張したのだ。

1928年ラジウム・コーポレーションの創設者の一人で、ラジウム入り塗料の発明者でもあるSabin Von Sochocky氏が、自社製品の被ばくによって死亡した。

数人の女性達が会社を訴えたが、安全に関する法律がようやく制定されたのは、Catherine Wolfe Donohueさんが死の床からイリノイ州ラジウムダイアル・カンパニーを訴えた1938年のことだった。

まさに現座進行形の話じゃないですか。逆にこの情報から、ああした描写の数々を生み出したの凄い…

 ボストンの測量士が主人公で物語は、彼の一人称視点で描かれる。アーカムを舞台に宇宙から飛来した奇妙な隕石に端を発する奇怪な事件を目撃者の農夫から聞いて再構成した形のSF短編小説。

  • 1882年6月アーカムの西の丘陵と谷の向こうの平野部に住む農夫ネイハム・ガードナーの家の井戸の近くに隕石が落下した。ミスカトニック大学の3人の教授たちが同地に赴き調査したところ、隕石は様々な不可思議な性質を持っていることが分かる。ビーカーに入れておくとビーカーもろとも消滅してしまい、平野部に落下していた本体は日に日に小さくなっていき、鉛の箱に入れて保管したかけらも1週間で全て消滅した。隕石の内部には、隕石が示すスペクトルと似た色の光沢のある球体があり、ハンマーで叩くと破裂して消滅してしまった。隕石本体もその晩の雷雨で6回も稲妻を引き寄せた挙句、消滅してしまった。
  • 隕石の落下場所の近くに住むネイハムのその年の夏の作物は、生育も良く色艶も素晴らしかったが、隕石が土壌を汚染していたためか、みな不快な味がし、とても食べられる代物ではなかった。そして冬には異常な跳躍力を見せる兎や奇形のマーモットが現れた。ネイハムの家の周囲の雪は溶け方が早く、近くに生えるミズバショウは隕石のスペクトルに似た色をし、奇妙な臭いを放っていた。やがて全ての植物が同じように異常な色を見せて輝き、しかも木々の枝は勝手に動き、昆虫たちも巨大化し異常な動きを示した。ガードナー家の人間は肉体的精神的に弱っていき、妻のナビーは発狂した。それでもネイハムは土地を離れず、妻を精神病院には入院させず、症状が悪化してからは屋根裏部屋に閉じ込めた。
  • 馬は全て狂って厩から走り出し、連れ戻しても使い物にならなかったので全て処分した。近くの草花は全て灰色になって枯れ、昆虫も死に絶え、井戸の水はひどい味に変化した。井戸の底に何かを見た次男のタデウスも発狂し、ナビーと同じように屋根裏部屋に閉じ込められた。家畜や犬猫も灰色に変じて死に、その死体は乾燥し悪臭がした。やがてタデウスは死に、三男のマーウィンと長男のジナスは行方不明となる。
  • ネイハムから助けを求められた隣人のアミ・ピアースは、ナビーが既に死んでいるのを発見し、そこで奇妙な色彩の蒸気のようなものに遭遇する。そして身体が灰色に変じて崩れかけたネイハムは死の寸前、自分の見たもの知ったものをアミに伝える。光る何かが井戸の中におり、それが家族に取り憑いて命を吸っていたというのだ。 

  • ガードナー一家が死に絶えた後、アミは警察を呼び、事情聴取を受けた後、警官3人を案内する事になった。マーウィンとジナスは井戸の底で白骨化して発見された。また、井戸から汲み上げられた水は、隕石の中から発した光と同じ色に輝いていた。彼等は夜に井戸が輝くのを眼にする。隕石の中にあった球体の内部に居た何者かが、井戸の中に居るのだ。悪臭が漂い、木々の枝の先は光り、勝手に動き出していた。アミ達がその場を離れ、振り返ると、ガードナーの家の井戸とその周辺の地は木々や建物や草花までもが光を放っていた。そして、最後に井戸から光が迸ると、それは白鳥座のデネヴの方向へ消えて行った。そして、後には広い灰色の荒地が残され「焼け野」と呼ばれ、そこは44年経った今日でも灰色の荒地のままだった。この地は、後に貯水池として水没する予定となっている。

  • だが、アミはそれでも土地を離れない。彼曰く、光は二筋だった、一方は飛び去ったが、もう一つは力が足りず井戸へ舞い戻っていった、そして今でもそこにいる、と…

  •  そう、アミは土地を離れない。いや、離れられない。まるで、ネイハムと同じように。

1927年3月執筆され、SF雑誌『アメージング・ストーリーズ』の1927年9月号に掲載された。ラヴクラフト自身は手紙で、この作品を自己ベストとして挙げたことがある。それだけに本作の評価に対する落胆が大きかったのか次の『ダンウィッチの怪The Dunwich Horror, 1928年)』を執筆するまで短編小説を書くのを控えるほどだった。

なるほど『ダンウィッチの怪The Dunwich Horror, 1928年)』が「絶対的な力を持つ異形の存在に翻弄され、なす術もなく握り潰される人間」という構図・結末の作品が多いラヴクラフト作品の宇宙的恐怖物Cosmic Horror)にしては珍しく、人間達が「異形の存在」に立ち向かってこれを消滅させ(この事件に関してだけだが)勝利を得るハッピーエンドを失意のせい?

  • ちなみに私、この種の音楽はラジオでこの曲を聴いて衝撃を受けたのが最初。だからこういう路線こそ「正しい継承(Inheritance)」としか思えないという…

ところで思考実験「シュレーディンガーの猫(Schrödinger's cat)」の発案が1935年。そういえば、この時点においてなおラジウムそのものが猫を殺す訳ではないのですね。

思考実験「シュレーディンガーの猫(Schrödinger's cat, 1935年)」

まず、蓋のある箱を用意して、この中に猫を一匹入れる。箱の中には猫の他に、放射性物質ラジウムを一定量と、ガイガーカウンターを1台、青酸ガスの発生装置を1台入れておく。もし、箱の中にあるラジウムがアルファ粒子を出すと、これをガイガーカウンターが感知して、その先についた青酸ガスの発生装置が作動し、青酸ガスを吸った猫は死ぬ。しかし、ラジウムからアルファ粒子が出なければ、青酸ガスの発生装置は作動せず、猫は生き残る。一定時間経過後、果たして猫は生きているか死んでいるか。

むしろ死は最悪の結末ではないという立場?