日本人が(変身ヒーローや魔法少女を含む)変態好きなのは、仏教公伝以降、真っ先に受容したのが法華経だったからともいわれています。
そういえば時代劇の世界における「紫頭巾」なる存在も、気付くと女性が正体になったりしてました。
日本における覆面ヒーローは、元来性差を超越する記号でもあったのですね。
- 特に昔から好まれてきたのが提婆達多品の「竜女成仏」の下り。女で子供(8歳)で人間ですらないのに即身成仏を遂げる。「女人成仏」が平安王朝文学の主題になったり、日本近代童謡が「大人より子供の方が三昧の境地に近い世界を生きてる」事を主題にしたりしたのも、元を辿ればこれ起源とも。
- 男権主義者の菩薩(自ら菩提を求めつつ衆生を導く立場にもある行者)から「お前は女じゃないか!!」と罵られると、みるみるうちにおち○ちんが生えてきて「男の娘」に変身し「その下らない執着心が貴様の成仏を妨げているのだ!!」と反論。大衆大喝采。
*アニメ好きの4chan民出身のオルタナ右翼にとっては「間違って男の娘の画像を集めてしまう事」が最も精神的打撃になるらしい。法華経を編纂した紀元前後のインド仏教団の英知、今なお有効。
- 能に植物の精霊が「法華経には人間以外も成仏させる力があると聞きました」と言い寄ってくるジャンルが存在するのも、この「竜女成仏」の下りが起源。
- 学校の教科書の平家政権の章では、平家納経の竜女成仏の場面が挿絵に使われる事が多い。それもまた、ここに込められた「生まれつき尊いとされる貴族と、生まれつき卑しいとされる武士の間に人間としてどんな違いがあろうか」なるメッセージこそが武家政権樹立の原動力となっていくから。また「大衆の蜂起を恐れるより扇動する立場」という意味で同格だったからこそ、平然と強訴に弓を向けられたとも。
日本における匿名意識の由来もまた、こうした伝統と決っして無関係ではありません。
- そもそも古代ヤマト王権が中華王朝から律令体制を導入する決断を下したのは、日本人の伝統意識からの「土下座」の廃礼と深く関与していたとされている。なにしろ貴人が現場を訪れる都度全員が土下座して業務を中断してしまう慣習は「経営者や管理職に業務内容を一切知らせない(口を出させない)」土俗的現場主義と表裏一体の関係にある。この殻を破って「現場仕事も熟知した管理職や経営者が業務改善を主導する体制」に移行しない限り、文書行政を導入しても経営者や管理職は「訳のわからない文書に盲印を押すだけの傀儡」に貶められてしまうだけという次第。
- こうした意味での伝統的土下座の駆逐にやっと成功したのは平安時代も半ば。
- その結果「嵯峨天皇の御代(809年〜823年)」以前の記憶は次第に遠ざかり「源氏物語」や「枕草子」といった王朝文学の世界が花開く。だがこの頃までにそれに代わる新しい慣習が広まっていた。貴人側は自分より高位の立場や下々の輩の前では御簾や扇子でその視線を遮るが、庶民側も貴人の前では覆面して個性の主張を止めるのである。神輿や御神体を掲げる強訴集団が覆面するのもそうした伝統と決して無関係ではない。
そういえば手塚治虫「リボンの騎士(1957年〜1967年)」における「リボンの騎士」も一応は「男装」という設定でした。帽子に大きなリボンをつけてるけど!!
むしろ「変装しても女性である事を誇示するスタイル」の方が後付けで、それはアメリカから渡ってきたものとも?