「シュガー・ラッシュ(Wreck-It Ralph、2012年)」の続編「シュガーラッシュ・オンライン(Ralph Breaks the Internet、2018年)」を鑑賞してきました。まず指摘しておきたいのが邦題の失敗…
主人公ラルフは「Fix-It Felix」というゲームのキャラクターなんですね。“Fix”というのは“直す”という意味ですから、訳すとすれば「直せ!フェリックス!」
っていう感じですね。
このゲームはおそらく「ドンキー・コング」が元ネタになっていると思うのですが(要するにラルフがドンキーの立ち位置。そういえばアニメ版ドンキー・コングの声はラルフと同じ山ちゃんでしたね)“フェリックス”というどことなくマリオっぽい主人公が、何でも直してしまう魔法の金のハンマーをもって、ラルフが壊したアパートを直していく、というゲームです。
で、原題の「Wreck-It Ralph」ですが、勘のいい方はもうお気づきかもしれませんが、このゲームのオリジナルの名前をもじったものなんですね。 “Wreck”というのは、英語で“めちゃめちゃに破壊する”という意味で、訳すとすれば「壊せ!ラルフ!」っていう感じです。
さて、邦題の「シュガー・ラッシュ」は、もともとの意味としては、子供が夜中に甘い物を食べて血糖値が上がり、興奮して眠れなくなっちゃう、そういう状態のことを言う言葉なんだそうです。この映画の中ではこの言葉が、お菓子の国のレーシングゲームのまさにそのタイトルになっているんです。で、そのまま邦題も「シュガー・ラッシュ」と。原題の意味はさっぱり消え去り、かなり単純な名前になってしまいましたが、まあ、「カールじいさんの空飛ぶ家(原題:UP)」みたいに「ラルフの不思議なゲームセンター」とかになるよりはマシですね。
*そして「シュガーラッシュ・オンライン」の原題は、それを受けての「ラルフのインターネット征服(Ralph Breaks the Internet)」。この題名が本編と重要な絡み方をしてくるのである。
ところで、詳細に入る前に…実はこの作品でも私の「尻検知Call-Backルーチン」が冒頭から高らかに鳴り響いてしまった事を告白しておきます。
今回、餌食に選ばれたのは カプコンの対戦型格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズ(1987年〜)に登場するロシア系(ソ連系)プロレスラーのザンギエフ(Zangief、露Зангиев)…
ストⅡとしてはザンギエフがフォーカスされてました。
ラルフとヴァネロペが「ザンギエフのムダ毛は処理されているかされていないか」という議論をしはじめ、いやあれはほったらかしだろうというラルフの見解に対し、胸毛はボーボーなのにすね毛はどうしてあんなきっちりちょっとだけはみ出るようになっているのか、それは手入れをしているからだ!というヴァネロペの見解。
*「どうでもいい日常のありふれた描写」の体裁をとりながら、さりげなく国際SNS上の関心空間トレンドFAQを持ち込んでいる。WIFI経由でインターネットに飛び出してすぐ目にするSNSサービスにYouTubeやTwitterといった大御所に混ざって(国際SNS上の関心空間の主要構成要素たる)TumblrやPinterestが散見されるのも興味深い(ただし二次創作の世界との干渉を招くPixivやDevianARTは除去)。*そういえばフレディ・マーキュリーのあの特徴的な衣装もロシアの天才的舞踏家ニジンスキー (露Вацлав Фоми́ч Нижи́нский、波Wacław Niżyński、英Vaslav Fomich Nijinsky, 1890年〜1950年)を意識したものとされている。フィギュアスケート・アニメ「ユーリ!!! on ICE(YURI ON ICE、2016年)」におけるヴィクトル・ニキフォロフ(Victor Nikiforov)選手と合わせ「ロシア人の良く手入れされた尻」は、その筋では「スコットランドのキルト」同様、特異なジャンルを形成している?
実はザンギエフは元キャラからして大学出のインテリという設定で、レフ・トルストイのようなロシア文学を引用するような台詞や、対戦相手に読書を薦める台詞もあるのです。そして「シュガーラッシュ・オンライン」でもドストエフスキーの読書会を開催。「各キャラクターの伝統的ロールを放棄する」なる本作品の破壊的コンセプトが、こういう部分にまで及んでいるという話…まずはこの事が私の分析の出発点となるのです。