レーダーやミサイルの黎明期の話はどれも興味深いです。
現代の自走砲は非常に素早い陣地転換で対砲兵射撃から逃れようとしますが、同じイメージを大戦期の砲兵に当てはめるのはちょっと待ったかも知れません。当時の対砲兵戦はそこまで素早く正確なものではなかったのです#マシュマロを投げ合おうhttps://t.co/luCuru1T8V
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
まず意外に思われるかもですが、逃げたりせず陣地に留まっている砲列でさえ、砲撃で潰すのはそれほど簡単ではなかったりします。こういうちゃんとした退避壕つきの陣地にいる砲を潰すにはほぼ直撃弾(少なくとも着弾クレーターに巻き込める程度)が必要なので、意外にも的が小さいのです pic.twitter.com/wCRek5a9YY
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例えば122mm榴弾の威力半径の場合、きちんとした陣地にいる砲を潰すには6x6m以内に落とさなければいけません。仮に6km先にあるそのサイズの的に直撃弾を得るには、砲の精度を考慮すると70発くらい撃ち込まなければならないとされていました。4門の砲列なら280発! 砲列は意外にしぶといのです
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
敵の砲がきちんと撃破されたか知ることが出来れば話は簡単なのですが、実際にはそれほどうまく観測できず、よくわからないかも知れません。また70発撃てばガチャの上限めいて確実に死んでくれているという訳でもありません。つまりいつ撃ちやめていいのかがハッキリ分かるわけではないのです
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
またこの数字は遠距離になって射撃精度が落ちるほど悪くなり、いっぽうで砲の威力が増すほど小さくなります(より大雑把な資金段でも巻き込めるようになる)。例えば10km先の敵砲列を122mm砲で潰すならなんと750発が必要ですが、これが152mm砲なら450発で済むと。いずれにせよ大変な弾数ですが
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さらにさらに、実際には敵の砲列は隠されていて位置がよくわかりません。その位置を音源標定で探ろうとした場合、大戦期ソ連の経験上は距離誤差1.5%、方向誤差10~15ミルほどが生じたようです。となると例えば距離10kmなら150m四方くらいの精度でしか敵砲列の位置を突き止められないという事になります
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敵の砲列の位置がハッキリ分からないとなると、ぼんやりした範囲を塗り潰すように砲撃するしかありません。敵の砲声のほか、自身の着弾音を観測して二つの位置を合わせるという音響的な弾着観測を行うという方法もあるようですが、いずれにせよ消費弾数は簡単に先の数倍に達してしまい得るわけです
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
そしてこれだけ沢山の砲弾が必要となると、一つの砲撃を行うのにたいへん時間がかかります。例えば152mm榴弾砲で500発が必要と思われる目標があったとして、発射速度の制限(砲員の疲労と砲の過熱限界)を考慮すると、4門の砲列でこれを打ち切るのには2時間もかかってしまいます
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折角敵の砲列の位置を突き止められたとしても、それを潰すための弾数を吐き出すのに何時間もかかってしまうようなら、牽引砲兵であろうと別の陣地に移れてしまいます。つまり当時の対砲兵戦のスピード感においては、現代自走砲めいた急速な陣地転換能力などなくとも逃げ切れる見込みが十分あるのです
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言い換えると、当時の観測手段で効果的な対砲兵戦を行うには、十分な数の砲を揃えて短時間で必要な弾量を吐き出してやる必要があります。ただし砲列が増えすぎるとコントロールが難しくなるので1つの目標に対して砲列3つ(12門)くらいがええんじゃないの、とされていました
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
また先の数字は一つの命中弾で砲を潰せる前提ですが、これが潰すのに2発、あるいは複数必要になる念入りな陣地だったりすると……どういう事になるかお判りでしょうか。実際、数日間に及ぶ砲撃を受けつつ耐え抜いた砲兵陣地といった話は聞かれますが、あながち誇張ではないのです
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
10kmで平均誤差150mとかいう音源標定の非常にぼんやりした精度を思うと、対砲兵レーダーの素敵さが分かろうもんです。大戦中に米軍は対空レーダーが砲弾の観測に使える事に気づいたんですが、その対空レーダー流用改造の最初期の対砲兵レーダーでさえ平均誤差35mとか叩き出してますし
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
VT信管ってえと対空砲のイメージがあるかもですが、これを砲兵が使うと地面の上の一定高度で爆ぜさせられるんで(曳火射撃)、従来の砲撃に対しては強固だった陣地にも上から破片を浴びせて潰しやすくなります。先述の6x6mとかより有効範囲はずっと広くなるし、所要弾数は格段に減るはずで
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
VT信管と対砲兵レーダーの誕生、そして自走砲の(部分的な)普及とあわせて、第二次大戦は砲兵戦が慌ただしくなりだす曲がり角みたいな所があるかも知れません。あるいはソ連的な大量の牽引砲兵がイケてた時代の終わりがそろそろ始まる、とも(言い換えると大戦期にはまだ全然終わっていない)
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
とまあ大戦期の対砲兵戦と途方もない徒労感を思うと、砲兵に十分な規模がないと効果的な対砲兵戦をやるのは難しいんじゃろうなあみたいな。大戦期ドイツ砲兵は機材の射程面での不利がよく言われますが、それは問題の一部でしかなかったんじゃろうなとか
— えすだぶ (@FHSWman) 2020年9月11日
確率論、それもベイズ統計の世界?