パラダイムシフトが止まりません。
ここでまとめようとした「実数と虚数の関係」って、実はフーリエ変換の歴史そのものだったりする事に気付いてしまったのです。
- フーリエ級数…群の条件を満たす(すなわち単位元と逆元が存在し、結合法則が成立し、演算結果が閉じている)無限関数列(ただし理論上無限とはいえ、実際扱えるのは整数倍の目盛りを振れた範囲に限られる)。しかしそれ故に周期性のある整数倍の周波数しか扱えない(ただし離散的とはいえここでいう「整数倍の目盛り」はどこまでも細かく刻んでいく事が出来る)。この段階で複素数概念が導入される。→上掲の投稿における「整数族」概念に対応。
- フーリエ変換/逆変換…上掲のフーリエ級数より「離散的で有限である」制約を取り除き、無限範囲を連続的に扱える様にした座標系(周波数領域)を想定し、現実の物理的空間(時間領域)との間をフーリエ変換とフーリエ逆変換によって往復する。マイナスの周波数が存在する理由は、周波数領域への変換過程で半分の周波数成分が数学的にマイナス側に移動するせいで、この時対称性の分岐点となる0Hzを直流成分という。→ここでいう直流成分が上掲の投稿における「(実数列を想定する為の)中心の検出」概念に対応する。あくまで想定上の中心なので揺らぐ可能性があり、これが「特定の演算は演算結果集合と観測結果集合と一致している場合のみ成立する」条件に重なる。
- 離散フーリエ変換…実際にサンプリングによって得られる観測結果集合は離散的で有限の範囲に留まるので、そのリアルタイム処理に特化したフーリエ級数概念の独自拡張。時間領域に対応する「時間推移に伴う周波数領域(スペクトル)の変遷」を表示する。
コンピューター処理と相性が良く、現在単にフーリエ変換というと概ねそれ、すなわち高速フーリエ変換(FFT=Fast Fourier Transform)を指す。
- ラプラス変換/逆変換…理論上はフーリエ変換/逆変換に収束の概念を追加したもので、回路設計に必要な(過渡状態と定常状態の往復で説明される)回路方程式を解く際の偏微分成分の処理を大幅に簡略化する事で知られる。これにもラプラス変換と逆変換によって(実時間が推移する)t空間と(周期=演算上意識しなければならない時間推移のみを抽出して扱う複素数空間たる)s空間を往復するという概念が存在する。…上掲の投稿では扱いきれなかった「周期と周回の設定ルール」に対応?
こうしてその数学史全体を振り返ってみると、その発見の歴史は17世紀、すなわちニュートン・メルカトル級数(Newton-Mercator Series,1668年)や(テイラー級数/マクローリン級数発見の原点となった)ライプニッツ級数(Leibniz Series,1674年)/グレゴリー級数(Gregory Series,1671年)における交代級数(Alternating Series)-1^nの発見にまで遡る事になります。
そしてラプラス変換/逆変換が扱う回路方程式の「周期と周回の設定ルール」は、以下の様な設定となっています。
回路方程式は、回路の状態変化があった後の回路構成、例えばスイッチを閉じた後の電流変化の様子、すなわち過渡状態を経て定常状態に落ち着く様子を定係数線形微分方程式で表します。
その一般解は、=0とおいた同次微分方程式の一般解をyt、≠0の非同次微分方程式の特殊解をysとすると、次のようになります。
y=yt+ys
ytは回路に抵抗がある場合には、過渡状態を経て定常状態に落ち着いた時点で必ず0となるのでysは定常状態における値となります。よって、過渡現象においてはytを過渡解、ysを定常解といいます。
この関係を整理すると、次のようになります。
過渡状態=非同次方程式の特殊解(定常解)+同次方程式の一般解(過渡解)
定常状態=非同次方程式の特殊解(定常解)
コンピューターでいうと以下の様な時間区分で推移する訳ですね。
- 【過渡状態】起動シークエンス(電源がOnになってからOSのカーネルメインループがイベント待ち状態に入るまで)。
- 【定常状態】イベント待ち状態(イベント待ち状態で回ってるループは、カーネルメインループだけとは限らない)。
- 【過渡状態】イベント処理が始まり、それが終了するまで。
そして、こうした諸概念を「数学者のつまらない一般教養(しかも迂闊に複素数概念を称賛すれば潰される禁断お知識)」から現代社会に欠かせない必須の技術に変えたのは電気(特に交流電流)概念の登場だったのです。
こうして全体像を俯瞰してみると色々視えてくる事が…そんな感じで以下続報。