以下の投稿では1970年代中旬から1980年代中旬のエロ表現を7系統に分類。
- 「時間精神の抽出」を目的としてるので、その概念が何を契機に始まりどれくらい続いたかに注目。
- 「大人向漫画誌(挑戦)」系と「運命の女(全裸)」系は小年向け月刊誌廃刊に伴う収入不安定化と無縁ではなさそう。
具体的には以下。
- 「大人向漫画誌(挑戦)」系…石ノ森章太郎「佐武と市捕物控'(1966年~)」が1968年ビック・コミックに移籍したのが契機。少 石ノ森章太郎「009ノ一(1967年~1974年)」松本零士「セクサロイド(1968年~1970年)」手塚治虫「人間ども集まれ(1967年~1968年)」藤子不二雄のビックコミック掲載作品「 ミノタウロスの皿(1969年)」等。山田風太郎「忍法帖シリーズ(1958年-1974年)」や源氏鶏太「サラリーマン小説(1955年-1970年)」同様、昭和元禄(高度成長期)の産物感がある。劇画が登場し「(時代劇や社会物といった)大人向け漫画」の定義が確定するうちに衰退。
- 「運命の女(全裸)」系…1972年にハヤカワSF文庫が成立。石ノ森章太郎が1972年にニール.R.ジョーンズ「ジェムスン教授シリーズ(1931年-1951年)」の挿絵を担当した様に、松本零士が1971年にC.L.ムーア「ノースウェストスミス・シリーズ(1933年-1941年)」の挿絵(ほとんどが全裸か半裸の女怪の登場と処刑場面)を担当したのを契機とする。松本零士「宇宙海賊キャプテンハーロック(1977年-1979年。植物人間マゾーン)」「さらば宇宙戦艦ヤマト(1978年。反物質女性テレサ)」、吾妻ひでお「やけくそ天使(1975年-1980年、阿素湖素子)」、高橋瑠美子「うる星やつら(1978年-1987年)」「増殖女房(1980年)」「暴食のフォルム(1980年)」等。トレンドがライトな学園ラブコメなどに遷移するにつれ衰退。
- 「スターウォーズ(便乗)」系…文字通り映画「スターウォーズ(1977年)」の国際的ヒットが契機。永井豪「スペオペ宙学(1978年-1979年)」手塚治虫「未来人カオス(1978年~1979年)」「こじき姫ルンペネラ(1980年)」「プライム・ローズ(1982年-1983年)」。ほぼ漫画分野以外に波及しなかったのが特徴で「帝国の逆襲(1980年)」封切り辺りを契機に鎮静化。
- 「機動戦士ガンダム(事故)」系…TVアニメ「機動戦士ガンダム(1979年)」では女性キャラの入浴場面を「戦闘描写」と対比される「日常描写」と位置付けられていたが、劇場版(1981年-1982年)のセイラ入浴シーンはあまりにエロく、これを撮影する観客まで現れて「くりーむレモン・シリーズ(1984年~)」などのエロアニメの出発点に。
- 「伝奇ロマン」系…OVA市場成立による販路拡大を背景とし、消滅した既存ジャンルが満たしていたエロスとバイオレンスへの欲求を吸い上げる形で成立。流れとしては①「暗黒神話(1976年)」以降の諸星大次郎、クライブ・バーカー「血の本」といった新機軸の指針の登場。②平井和正「ウルフガイ・シリーズ(1971年~)」「幻魔大戦シリーズ(1978年~)」夢枕獏「キマイラ・シリーズ(1982年~)」「サイコダイバー・シリーズ(1984年~)」栗本薫「魔界水滸伝(1981年~1991年)」といった伝記ロマン小説の商業的成功。③角川映画「魔界転生(1981年)」「伊賀忍法帳(1982年)」「里見八犬伝(1983年)」「幻魔大戦(1983年)」といった伝記ロマン映画の商業的成功。③アダルトOVA「メガゾーン23シリーズ(1985年~1989年)」「超神伝説うろつき童子(漫画1986年~1989年、劇場版アダルトアニメ公開1989年)」などの成功。
- 「耽美」系…「JUNE(1978年~1995年)」掲載作品。栗本薫の様なBL系だけでなく吾妻ひでおの様な美少女系も一部含んだ。
- 「美少女」系…同人誌「シベール (1979年~1981年)」やエロ劇画誌「劇画アリス(1977年~1980年)」自販機本「少女アリス(1979年~1981年)」美少女漫画誌「レモンピープル(1982年~1998年)」「漫画ブリッコ(1982年~1986年)」辺りへの寄稿者
時間を見計らって追記していきます。
今回の投稿の発端は以下のTweet。
#今の若者には通じないテレビの常識
— ノリ (@o5kjH8uG8NGe2xK) 2023年7月28日
謎の光が入ることもなく
アニメはおろか
ドラマやバラエティー番組でも
B地区を拝むことができた。
時には大物女優のも。 pic.twitter.com/7lQnjLMxMo
この辺り、結構系譜が複雑で①何故かスターウォーズので世界的ヒットに便乗した永井豪や手塚治虫や小池一夫の様な大御所のエロエロスペースオペラ路線。②C.L.ムーアノースウェスト・シリーズ辺りに由来する松本零士、吾妻ひでお、高橋瑠美子ら「運命の女(全裸)」路線… https://t.co/XRiHVGdpLY
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
①は80年代に入るとブーム自然消滅(ただし作品の大半は全集収録)。②の多くは再販される事なく忘却の彼方に。「うる星やつら」のラムちゃんもアイドル路線に転じて以降は乳首を見せなくなっていきます。 pic.twitter.com/5o9SkHccIX
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
③その一方で女性キャラの入浴場面を「戦闘描写」と対比される「日常描写」と位置付けた初代ガンダム。しかし劇場版のセイラ入浴シーンはあまりにエロく、これを撮影する観客まで現れて「くりーむレモン」などのエロアニメの出発点に。 pic.twitter.com/ZbRPScKnFO
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
その一方で、やがて「セイラさんの乳首」も封印される展開に… https://t.co/wAQrmN1a4h
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
さらには1970年代に大人向け雑誌への掲載を狙った石ノ森章太郎「009ノ一」松本零士「セクサロイド」手塚治虫「人間ども集まれ」みたいな毛色の異なる(そして次の系譜に繋がらなかった)第四の流れも。 pic.twitter.com/JGYwWjpqN7
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
「くりーむレモン」など「エロアニメ」と時期を同じくして登場した「エロゲー」の歴史。その黎明期は、今日では信じられないほど低レベルなコンピュータの画像表示能力との戦いだったのです。https://t.co/J5Z9aiLcS2
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
当時はさらに(今から思えば架空戦記読者と被る側面もないでもなかった、ただしむしろエロとバイオレンスの充足に主眼を置く)伝奇ロマン小説に世界…https://t.co/ykVBLwMk8C
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
ジュネ創刊を契機とする「耽美派」の登場と暗躍などもありました。https://t.co/FYsALUYWh0
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
これだけ外堀を固めてやっと浮かび上がってくる「美少女漫画」の世界…https://t.co/7OaUIgPCZ6
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
まさしく #ChatGPT の様な分布意味論に立脚する大規模言語モデルが現在は苦手とする「時代精神の変遷」そのもの。逆をいえばそれは、似非リベラリストや似非フェミニストが何かと口にする「エロティズムにまつわる時間と空間を超越した普遍定理」など存在しない事の証でもあるのです。
— Yasunori Matsuki (@YazMatsuki) 2023年7月28日
そんな感じで以下続報…