カバラー(ユダヤ神秘主義)の歴史は思うより新しく、ムラービト朝(1040年~1147年)やムワッヒド朝(1130年~1269年)がキリスト教徒やユダヤ教徒に加えた迫害を逃れる為にセファルディム系ユダヤ人(聖典にタルムードを加え、さらにギリシャ古典やアラビア哲学の知識も継承していた裕福なインテリ)が逃げ込んだプロヴァンスにおいて、彼らと邂逅した(トーラー(モーゼ五書)のみしか知らない粗野で貧乏な)アシュケナージ系ユダヤ人が、理論武装の為、必死で編み出したのが最初と考えられています。それ自体は密教でいう雑密の様なもので一貫した体型を備えていませんでしたが、逆にスペインのセファルディム系ユダヤ人のインテリ層の注目を集めて編纂され、今の形の原型が形成されたのです。その予備知識があると以下の話は実に興味深い…
【知のグローバル・ヒストリー】稀代の星辰魔術書『ピカトリクス』のアラビア語原典の著者「クルトゥビー」を発見した論文を読んだ流れで、この人物がアンダルシア地方に持ちこんだという純潔同胞団の『書簡集』についての一連の研究を・・・https://t.co/hnMHGcgEiz
— ✨ ヒロ・ヒライ🐾@BH (@microcosmos001) 2021年3月4日
『書簡集』は新プラトン主義的な流出説にもとづく宇宙論や認識論に、コーランの寓意的な解釈を組みあわせる点が特徴で、錬金術や占星術、数秘術などのオカルト諸学からも貪欲にアイデアを取りこんでいます。
— ✨ ヒロ・ヒライ🐾@BH (@microcosmos001) 2021年3月4日
アヴィケブロンの『生命の泉』など、流出説を採用する神秘主義的な書物が中世スペインで幾つも生みだされる不思議な現象は、『書簡集』の影響だという新しい作業仮説が提起されたことになります。
— ✨ ヒロ・ヒライ🐾@BH (@microcosmos001) 2021年3月4日
カバラーの伝統で有名な『ゾーハル』も似たような流出説を採用しつつ、中世スペインで生まれたことから、『書簡集』の影響をまじめに考慮する必要が出てくるでしょう。
— ✨ ヒロ・ヒライ🐾@BH (@microcosmos001) 2021年3月4日
中東のイラクで活動した学者集団が生みだした百科事典が、はるか西方の中世スペインで、イスラム教徒・ユダヤ教徒・キリスト教徒を交えた知のマトリクスに大きな影響を与えていたという「グローバル・ヒストリー」を体現している話だなと感嘆しています。
— ✨ ヒロ・ヒライ🐾@BH (@microcosmos001) 2021年3月4日
怪しい「魔術書」の研究が、お堅い哲学や歴史学の常識をひっくり返していく様子が、個人的にはもっとも感銘をうけるところですw
— ✨ ヒロ・ヒライ🐾@BH (@microcosmos001) 2021年3月4日
たとえば、純潔同胞団の『書簡集』の成立年代が930年より前となると、時代的にキンディーとファーラービーのあいだに置かれる新プラトン主義を色濃く反映した書物となります。哲学史の文脈でも、いろいろな再考作業が必要となるでしょう。
— ✨ ヒロ・ヒライ🐾@BH (@microcosmos001) 2021年3月4日
アラビア世界での新プラトン主義の受容は、キンディのサークルや『アリストテレスの神学』と『原因について』で語られてきましたが、ファーラービー以下の哲学者たちも『書簡集』を読んでいた可能性があります。イスマーイール派の浸透という文脈でも見逃せません。
— ✨ ヒロ・ヒライ🐾@BH (@microcosmos001) 2021年3月4日