この辺りの投稿の補完。
ここでは東欧における「近代化=産業革命導入(およびそれを可能とする国体改造)の遅れ」がナチズムに協力してのホロコースト被害の拡大に直結する景色に焦点を当てましたが、逆をいえば、これらの国々はそうした「酷過ぎた過去」を踏み越えて妥協点を探り現在を築いてきたとも言い換えられる訳です。
今回の投稿の発端はこのTweet
こと反ユダヤ主義に関しては、近年のウクライナは欧州で最も反ユダヤ的でない国であるという世論調査の結果が出ている。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
Antisemitism in Europe: Ukraine turns out to be the most friendly to Jews https://t.co/T8alCppdQw
こうしたデータは現状を確認する上で重要です。
この期におよんでウクライナの「ネオナチ」の脅威を叫ぶ人が散見されるが、ウクライナの極右の脅威は決して見過ごせない問題ではあるものの、過大評価は禁物であり、プーチンがプロパガンダに使っている今それをことさらに強調するのは致命的な誤りだと思う。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
しばしばウクライナの「ネオナチ」の筆頭格として挙げられるアゾフ大隊については、2014年以降にその組織化に最も貢献したのはユダヤ人オリガルヒのコロモイスキーだったことは今では誰もが知っていることだし、アゾフ大隊に入隊してロシア軍と戦っているユダヤ人さえいる。https://t.co/XZpxYjGvsn
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
アゾフ大隊は2014年以降にウクライナ国民軍に吸収されて以降はネオナチ的要素を表に出さなくなったようで、16年には米議会がアゾフ大隊に対する武器供与を禁じる法律を撤廃。SWCやイスラエル極右はこの措置に反発したが、ウクライナのユダヤ人議会はこれをむしろ歓迎した。https://t.co/y7KGFjozRP
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
この問題も重要なので、もう少し掘り下げてみたいところだが、私の知る限り、「ウクライナの極右の脅威」が当初思われたほどでなかったことは、すでに2014年の時点でかなり明らかだったことはあらかじめ伝えておきたい。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
2014年の時点で、ウクライナの極右とされた政党や団体は、自分たちが反ユダヤ主義者ではないことを示すために四苦八苦している様子が見てとれた。こうした努力が単なるパフォーマンスであった可能性も否定できないが、ロシアとの戦いで欧米の支持が得られなくなるのは得策ではないと認識したのだろう。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
あと、もう一点あらかじめ強調しておきたい点として、ユダヤ人であるゼレンスキー大統領がロシアとの戦いで一丁目一番地で非常によくやっていることで、ウクライナ極右も含めたウクライナ国民の対ユダヤ人観に劇的な変化が生まれつつあることは容易に想像できるし、実際そうした変化の兆は散見される。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
あと、もう一点あらかじめ強調しておきたい点として、ユダヤ人であるゼレンスキー大統領がロシアとの戦いで一丁目一番地で非常によくやっていることで、ウクライナ極右も含めたウクライナ国民の対ユダヤ人観に劇的な変化が生まれつつあることは容易に想像できるし、実際そうした変化の兆は散見される。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
ていうか、ロシアとの間で生じた戦争の力学により、ウクライナ極右が抱える問題がアジェンダとしては相対的/総体的に低くなったのではないかということは、少し考えればわかるというものではなかろうか。殊にプーチンがまたぞろ「ネオナチと闘うオレ」ポーズを蒸し返して全面戦争までおっ始めた今や。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
まぁ実際「ロシア人のユダヤ人蔑視」の方が酷いのは誰の目から見ても明らか。
気付いてないのは当事者ばかり?
プーチンが、「あのさぁ日本くん、キミら誰に原爆落とされたんか解ってんのぉ?」的な煽りをしたらしいが、日ソ不可侵条約破って思くそやりまくった側に言われてんもなぁという話でな?https://t.co/hMVsMayDZl
— SOW@新作出すよ (@sow_LIBRA11) 2022年3月26日
満州国成立に関してのあれこれはあるが、それはそれとして条約破りの「卑怯さ」を「戦勝国」で無理矢理正当化したのは事実だし、さらには北方の島々でのあれこれといい、むしろ日本の教科書ではそっち系教えてないくらいなのよな。
— SOW@新作出すよ (@sow_LIBRA11) 2022年3月26日
「ソ連に対して刺激したくない」的なこともあるのか、一種タブーになってて、「え、アメリカと戦争したの?」よりも「え、ロシアとも戦争したの?」の人のほうが多いんじゃないの? まず間違いなく。
— SOW@新作出すよ (@sow_LIBRA11) 2022年3月26日
基本的に、戦争においては日本に批判的な「美味しんぼ」の原作者でさえ、ソ連の対日参戦は、「卑劣」と、満州生まれの富井副部長の言葉で語らせているくらいよ。ちなみに原作者も満州出身ね。
— SOW@新作出すよ (@sow_LIBRA11) 2022年3月26日
休戦の後も攻撃し続けて、避難民への暴行略奪をほぼ公認。男は連れ去られ強制労働、女は犯され、残った子どもは飢えで死にの地獄絵図描いたのは誰でしたかねぇと?
— SOW@新作出すよ (@sow_LIBRA11) 2022年3月26日
こういうこと言うと、「でも日本だって中国で悪いことしたから」という人が居るが、それと民間人への暴虐は別の話・・・って以前にな? 「いだてん」とかでも描かれたが、当然その当時、支配していた中国人からも逆襲されたんよ。
— SOW@新作出すよ (@sow_LIBRA11) 2022年3月26日
そらもう、中国の人らからしたら、「ソ連が解放に来てくれたー」ってもんだからね。でも日本人があらかた逃げた後、今度はソ連兵、中国人にまで略奪暴虐はじめてな? 「赤い帝国主義」とまで言われ憎まれたんだよ。
— SOW@新作出すよ (@sow_LIBRA11) 2022年3月26日
「ソ連とロシアを一緒にするな」と言うが、明確に継承国家であるのは違いなく、毎年当たり前のように夏に「正義の戦争の勝者」としてドヤ顔してるわけで、国際的にもソ連の「座」を継承してんだから、言われてもしゃーないでしょ。
— SOW@新作出すよ (@sow_LIBRA11) 2022年3月26日
「真実を無視」ではなく、「真実を必死で考えないようにしてやって」たんだよずっと。
— SOW@新作出すよ (@sow_LIBRA11) 2022年3月26日
他に手がないから。歯ぎしりして拳にぎりしめて、奪われた国土と同胞の死をこらえて、「仲良くやりましょう」ってがんばってやってたんだと。
それが戦後の日露関係ですよ。
終戦の仲介をソ連に依頼していたにもかかわらず条約を違反して牙をむかれたのですから、忘れるなと言うほうが難しい。それでも「耐えがたきを耐え、忍び難きを忍んで」ロシアと仲良くやっていこうと思っていたのが戦後日本です。もうそんな必要はなくなったみたいです。
— 沖田栄次@公式様になったよ! (@okitaage) 2022年3月26日
スコットランド出身のカナダ人記者フレデリック・アーサー・マッケンジー(Frederick Arthur MacKenzie)はスコットランド系としてイングランドの帝国主義に反発する立場から「韓国の独立運動(Korea's Fight For Freedom, 1920年)」において3.1万歳事件を弾圧した憲兵の残忍さを写真付きで克明に描きましたが(本国では日本人にも向けられたその残忍さ自体は韓国の軍事政権に継承される事で韓国の内部問題に発展していく)「韓国の悲劇(Tragedy of Korea,1908年)」では「(秦郁彦「慰安婦と戦場の性」にも克明に描かれた)慰安は全て各兵士が現地の女性に勝手に求める」帝政ロシア兵の滅茶苦茶さ(同盟相手の筈なのに完全に占領地扱い)と、日露戦争敗戦によって撤退を余儀なくされたロシア人(軍隊だけでなく同行してきて甘い汁を啜ってきたせ商人も含む)を火事場泥棒的に身包み剥ぐ徹底した復讐の伝聞から状況の再構成を試みています(一方、当時の大日本帝国の報道管制は徹底してしたので「日韓併合に向かう過程での蛮行」について言及箇所はあくまで類推の積み重ねに過ぎない。この傾向は「中国における蛮行」を描写したエドガー・スノーの著作にも見られる)。同様に断片的伝聞情報から朝鮮半島に進駐した清国軍も同様に全く統制が取れてない(優越国としての傲慢さ故にその必要すら感じない)略奪も強姦もやり放題の前近代的軍隊だったと推察される訳ですが、大日本帝国以外が行ったそれは全て不問に付し(下手したら大日本帝国が遂行した事にし)「大日本帝国の蛮行」のみを責めるのが朝鮮半島の民主主義の特徴。これには当然副作用もあり中国共産党に連行された間島の独立運動家が容赦無く皆殺しにされているにも関わらず、中国共産党の再接近を浮かれて喜ぶ本土独立運動家に対して(現地におけるテロ組織「義烈団」組織にも関与した)「民族史家」申采浩は「歴史を忘れた民族に未来はない」と言い放った訳です。「ロシア(軍)の残忍さ」と言われてまず思い浮かぶのがこれ。その根幹にあるのは常にある種の前近代性という…
もう一点、2014年から続くプーチンとの戦争の最中、世界中のユダヤ人の間で、「ウクライナの極右の脅威」を一番過小評価してきたのが他ならぬウクライナ在住のウクライナ人だったことが如実に物語っている。事が起きたら一番被害を被る人達が、本当に脅威に感じていたら、そんなことは言うはずがない。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
<「水面下の代理戦争――ユダヤ・ファクターから見たウクライナとロシアの動向」『現代思想』2014年7月号より>未だに「ウクライナの極右の脅威」を煽る言説が散見されるので、私がまだ「現役」の研究者だった2014年の時点でこのテーマに触れた部分だけ掲載することにします。ご参考になれば幸いです。 pic.twitter.com/3tM98Yi6n1
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
【訂正】115頁下段に「ロシアは約一九万四〇〇〇人(一・四パーセント)で世界六位、ウクライナは約六万七〇〇〇人(一・五パーセント)で一二位」とありますが、正しくは、「一・四」→「〇・一四」、「一・五」→「〇・一五」です。 pic.twitter.com/yss1hVlRYy
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
ちなみに、この続編ともいうべき、2014年から現在までのウクライナとロシア(そしてイスラエル)との関係におけるユダヤ・ファクターの変遷に関する論考を執筆中なのですが、何しろ個人事業主をやりながらなので、前に書いたものほどのボリュームのものはとても書けそうにないですが、がんばります…。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
ちなみに、ウクライナ人側のユダヤ人に対する「伝統的な」偏見の一つとして、ユダヤ人はソ連シンパでロシア・シンパだというのがあります。これは、こと文化面については間違ってないものの、政治面ではそうも限らなかった中、プーチンの蛮行によって、反ロシア・ユダヤ人ばっかになったのは確実です。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
これは(ポグロムを遂行した帝政ロシアをロシア革命(1917年)で打倒した)ソ連にニューヨークのユダヤ財閥が肩入れし、ドイツ革命(1918年)に際してプロイセンのユダヤ人革命家らがミュンヘンなどのレーテに呼び込んだソ連共産主義者が現地で遂行した大規模粛清がフライコール(ドイツ義勇軍)による残忍な報復を誘発し、ホロコーストを正当化する口実として使われた歴史まで遡る因縁だったりします。
それをいうなら「スラブ人のドイツ嫌悪」は北方十字軍(12世紀~15世紀)における騎士修道会の活躍まで遡る訳ですが。
そして、ロシア革命から100年近くの間にウクライナ人の間でできあがったこの偏見は、ゼレンスキー大統領の奮闘ぶりも手伝って、プーチンとの8年以上にわたる戦争によって、かなりの程度払拭されるのではないかと思っている。
— 直立演人 (@royterek) 2022年3月25日
https://t.co/5YPl05PSzF
— まるい りん (@maruirin) 2022年3月26日
向こうでも指摘されてますね。そもそもアゾフ自体1000〜2000人しかいない小規模グループで、2014年にはかなり問題行動があったけど、今では当時の過激派はほとんど入れ替わってるとのこと。
ウクライナの前回選挙で過激右派が取れた票数はたったの2.15%しかないとのことです
まぁ私は2010年代後半におけるtumbr殲滅戦の生き残りなので「殺す側の論理」の雑さ加減には判定が厳しいのです。
そんな感じで以下続報…